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2014年9月26日 (金)

3人組になって

Title:THE PIER
Musician:くるり

2011年にいままでの2人組バンドからいきなり5人組に大増員したかと思いきや、1人減り2人減り、あっという間に3人組バンドとなったくるり。まあ、こうなることはあらかた予想はしていたし、いつも通りのくるりなのですが(笑)。そんな彼らのちょうど2年ぶりとなるニューアルバムが発売されました。

今回のニューアルバム、雑誌などでよくみかける評判としては、岸田繁が様々な音楽性に挑戦した実験的なアルバムという評価でした。特に事前に発表された新曲「Liberty&Gravity」ではギターロックながらもラップが顔を見せたり、和風な合いの手が入ったりする「変な曲」として話題となりましたが、他にも様々なアイディアのつまった実に実験的、というよりも挑戦的なアルバムになっていました。

例えば「日本海」では強いリズムビートがなりつつも、その一方ではストリングスの音色が奏でられるサウンドながらもメロや歌詞は純和風な歌謡曲風というつくりですし、「Brose&Butter」もシンプルでアコースティック風な作品・・・かと思いきや、バックでは様々な音が鳴り響く、不思議でどこかユーモラスな世界が展開しています。

他にもタイトルに反してシティーポップ風の「ロックンロール・ハネムーン」やハードロックな「しゃぼんがぽんぽん」などおそらく岸田繁のやりたいことがアルバム全体に炸裂した内容になっています。そしてそんな岸田繁の方針につれてか、佐藤征史が唯一曲を書いた「Amamoyo」はファンキーでグルーヴィーな楽曲を書いてきていますし(これがなにげにかなりの名曲!)、ファンファンもユーモラスな小品「メェメェ」なんて曲を書いたりしています。

ただ個人的には今回のアルバム、実験的なアルバムという印象より先に岸田繁の宅録みたいなアルバムだ、という印象を受けました。バンドという色合いを強く感じた前作「坩堝の電圧」と比べて非常に対照的なアルバムと言えるかもしれません。メンバーが抜けて3人組となってしまったため、こういうアルバムになったのか、それともこのアルバムのような音楽性を志向したため、3人組になってしまったのか・・・その経緯は不明ですが、良くも悪くも2人組だった時代のくるりからの流れを感じる、岸田繁ワンマン色の強い作風に感じました。

もちろん本作、こんなユーモラスなアイディアを詰め込んだ作品なだけに傑作には間違いありません。ただちょっとひっかかったのはあまりにアイディアが多すぎて、ちょっと詰め込みすぎな感じがした点、そして、アルバム全体としていまひとつ統一感がない点。くるりの作品としては個人的にはバンドとしての今後のさらなる可能性も感じられた前作の方が好きだったかなぁ、とも思います。

ただ、そんなともすればバラバラになりそうなアルバムが、ひとつにまとめられた楔のような役割をしたと思うのが岸田繁の書くメロディーラインの素晴らしさ。これこそまさに「良くも悪くも2人組だった時代のくるりからの流れ」のうち良い部分。特に先行シングルでもある「最後のメリークリスマス」みたいなシンプルな曲こそ、この部分が光りますし、挑戦的とされる楽曲がちゃんとポップにまとまっているのも、このメロディーラインの良さがあるからこそだと思います。正直「挑戦的」「実験的」な部分に焦点があたりすぎている感のあるこのアルバムですが、その試みがちゃんと成功しているのは、このメロディーの良さであることを忘れてはいけないのではないでしょうか。

そんな訳で一言で言ってしまうとやはり「すごいぞ、くるり」(古い)なわけですが。いろいろな意味でくるり岸田繁の才能を感じられるアルバムでした。で、次回作はやはり佐藤君との2人組に戻っていたりして・・・(^^;;

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転

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