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2014年9月13日 (土)

純和製のグルーヴ

Title:ぞめき伍 個性派 徳島 高円寺 阿波おどり個性派

今回紹介する「ぞめき」シリーズは、徳島の阿波踊り、そしてそこから伝播した高円寺の阿波踊りを録音した作品。もともと、ミュージシャンで音楽プロデューサーの久保田麻琴が高円寺の阿波踊りにふれ、そのリズムと歌に感銘し、録音におさめた「ぞめき」がリリースされたのが2010年。その内容は多くの音楽ファン、特にワールドミュージックのリスナーを魅了し大きな話題となりました。ちなみに「ぞめき」とは「騒ぐこと、にぎわうこと」。阿波おどりでは街に繰り出し音楽にのることを言うそうです。

その後高円寺のみならず本場徳島の阿波踊りの模様を録音し、リミックス盤もふくめて4枚のアルバムをリリース。どれも話題になりましたが、本作はその5作目。今作ではタイトル通り、個性的な「連」(踊り手の集団)の録音を収録。また、5作目にしてはじめて、徳島と高円寺の共演となっています。

その「ぞめき」シリーズ、今回5作目にしてはじめて聴いてみました。そこで流れてきたのは太鼓と鉦のリズムに笛の旋律がなるサウンド。阿波踊りを実際に見たことのあるなしに関わらず、おそらく日本人にとっては多かれ少なかれなじみのある「音」。そのため、チラッと聴いただけだと「ああ、よくありがちなお祭りの音ね」なんて聞流してしまいそうになります。

が、徐々に聴きすすめていくと、私たちにとって耳なじみあるはずのサウンドが実は非常にどす太いグルーヴに支えられていることに気が付きます。重低音の太鼓の音は実に迫力があり、その重低音のリズムと高音の鉦の鳴り響くリズムの組み合わせはリスナーを軽くトリップさせられるほどの威力があります。特に笛のメロディーとあわせてミニマル的に繰り返すリズムとメロディーによって、そのトリップ感は威力を増し、リスナーをグイグイと惹きこんでいきます。

そんな中でもおもしろいのは、聴き進めるうちに「連」ごとに微妙にリズムが異なるということに気が付きました。「花菱連」はちょっと裏が入ったようなファンキーなリズムがむしろどす黒さすら感じられますし、「武秀連」はハイテンポな太鼓のビートが心地よく、途中からリズムの軽快さが増すのも惹きこまれます。「華純連」は細かく刻んだビートが独特で、これもトライバルな響を感じさせます。

まさに「純和製のグルーヴ」と言えるこれらのサウンドは、日本とは遠い存在のように感じられるアフリカのグルーヴを彷彿とさせるような部分もあるのでは?時として「リズム感がない」と言われる日本人ですが、そんな日本でこんなビートが産みだされているという事実が、「リズム感がない」という認識をあらためる必要があるかもしれません。

ただひとつだけ、個人的に気になっている部分があります。それは私がいままで「ぞめき」シリーズを話題になっているのを知りながらも5作目までなんとなく聴いていなかった理由なのですが、阿波踊りのような土着文化にからんだ伝統芸能を、徳島以外で演るってのはどうなんだろう?という疑問。久保田麻琴はこれをレゲエに例えて「徳島がジャマイカなら、高円寺はイギリス」と言っているそうなのですが、ポピュラーミュージックのレゲエと伝統芸能の阿波踊りではちょっと違うような・・・いや、高円寺の阿波踊りを否定するわけではなく、このアルバムでも素晴らしいグルーヴを聴かせてくれているのは間違いないのですが・・・この疑問は残念ながら、このアルバムを聴いても消えませんでした。

もっともそんな疑問を差し引いても、このアルバムから鳴り響くグルーヴにすっかりはまってしまいました。つーか、純粋に阿波踊りを見てみたくもありましたし(笑)。CDの帯に、「平板な8ビート・ロックや4つ打ち・ビートに少しでも疑問を持つなら聞くべし。」と書かれています。個人的に8ビート・ロックや4つ打ち・ビートも好きなんですが(笑)確かにこのグルーヴ感は圧巻。疑問を持っていなくても聞くべし。

評価:★★★★★


今、そこにある明滅と群生/高橋優

シンガーソングライター高橋優の最新作。現代風俗を、ありのままの姿で鋭く描写した内容の歌詞がインパクトのあるシンガー。本作でも「ニコ生」やら「LINE」やら「今」な言葉をこれでもかというほど詰め込んだ歌詞がインパクト大。基本的には「いろいろある世の中だけど、そんな中で自分を失わず前に進もうよ」というスタンス。ただ、アルバム全体として本作ではその主張が激しすぎ、かつ、内容を詰め込みすぎな印象を受けました。この傾向は正直いままでの作品にもあって、気になる部分ではあったのですが、本作についてはそれがより強くなってしまった感じが。もうちょっと「引いた」部分や余裕を持ったようなお遊びに部分があればより良いと思うんだけど。

評価:★★★★

高橋優 過去の作品
リアルタイム・シンガーソングライター
この声
僕らの平成ロックンロール(2)
BREAK MY SILENCE

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