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2014年9月 9日 (火)

歌声にゾクゾク

Title:オールタイム・ベスト-オリジナル-
Musician:中森明菜

80年代に松田聖子と並び称され一世を風靡した国民的アイドル中森明菜。現在、活動休止中ですが、レコード会社の枠を超えたベスト盤がリリースし大きな話題を呼んでいます。売上もオリコン上位に食い込んでくるなど大ヒットを記録。いまなお根強い人気を感じさせてくれる結果となりました。

ここでも何度か書いていますが、私が最近のアイドルに興味がなく惹かれない大きな理由のひとつが「声」だと思っています。いかにもアイドルらしい「私ってかわいいよね」みたいな声も苦手なのですが、それ以上にここ最近のアイドルは、誰もかれも声が平坦で無個性。おそらくグループの中で必要以上にひとりが目立たない「配慮」なのでしょうが、何人もいるグループのはずなのに、誰が歌っても一緒のような特色のない「声」ばかりが目立ちます。

最近のアイドルを評価する方が、なぜこの「声」の要素を見事なまでにスルーしているのか少々不思議なのですが、今、アイドルグループがたくさん出てきているのに「かわいい路線」「無個性で平坦なユニゾンボーカル」なグループばかり。そういう意味では個人的にはAKB48もももクロも大差がないと思っています。逆にこの「無個性」を逆手にとったPerfumeはおもしろいなぁ、と思っているのですが。

中森明菜のこのベスト盤を聴いてまず感じたのは、彼女はアイドルという以前にボーカリストとして実に魅力的だ、という点でした。デビュー曲の「スローモーション」こそまだ初々しさを感じられるのですが、その後はどんどんドスの効いたボーカルで凄みが出てきます。特にこのボーカルが一番生きていると感じたのは「十戒」から「飾りじゃないのよ涙は」「ミ・アモーレ」「DESIRE-情熱-」あたりではないでしょうか。ちょっとラテン風な曲調も彼女のボーカルに見事にマッチしていますし、迫力があって、それでいて色っぽいボーカルには思わずゾクゾクっとくるようなカッコよさがあります。

ただちょっと気になったのは今回のアルバムのDisc1に収録されている80年代の楽曲については、時代的なものは間違いなくあったと思うのですが、音がすごいチープだ、ということを感じました。打ち込みがメインのいかにも80年代的なサウンドで、今聴くと少々キツイな、と思う部分も。それだけに彼女の声がより魅力的に感じるのかもしれませんが、ちょっともったいない印象も受けました。

しかし、これらの曲をiPodに入れて街中で聴くと、意外とこのチープさが気にならなくなるから不思議。ひょっとしたらなんですが、80年代といえばテレビの歌番組の全盛期。これらの曲のアレンジって、テレビみたいに音響がかなり厳しい媒体を通じて聴くとちょうど良いように調整されている・・・ってことは考えすぎかなぁ。昔、モータウンの楽曲はあえてチープなラジカセで聴くとちょうどよいようなバランスで録音されていたように・・・。

Disc2に関しては90年代から2000年代に関してのシングルが収録。この時期の楽曲に関しては決して売上も芳しくなく、一般に知られているような曲もあまりありません。アレンジに関してはさすがにこの時期の曲にチープさは感じられないのですが、確かに楽曲的にも80年代の曲に比べるといまひとつ。全盛期よもう一度、的な中森明菜をひとつの型にはめてパターン化したように感じられる曲も多く、アイドル受難の時代と言われた時期なのですが、それを差し引いてもこれじゃあ売れないよな、と感じてしまいます。

ただそんな中、小室哲哉作曲による「愛撫」「MOONLIGHT SHADOW-月に吠えろ」の出来がずば抜けているように感じます。どちらも典型的な小室ソングなのですが、これが中森明菜の声にピッタリ。なにげに両者の相性の良さをうかがわせます。もし今後、中森明菜復活ということがあったら、小室哲哉作曲で、ということはいかがでしょうか。

そんな訳で、中森明菜のボーカリストとしての実力を感じさせ、ゾクゾクするような曲もある反面、ちょっと物足りなさを感じる部分もチラホラあったのもちょっと残念な感じ。ただそれを差し引いても、全盛期の彼女をリアルタイムで知らなくても間違いなく聴く価値あり!な作品です。でも、今の時代、アイドルグループばかり雨後の竹の子のようにあらわれてるのに、彼女みたいな「ボーカリスト」としての魅力的なアイドルってのは産まれないんでしょうかね。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

NEW YANKEE/ANARCHY

まさかのメジャーデビュー作となるANARCHYのニューアルバム。正直言えば、悪い意味でメジャー化しちゃったなぁ、といった印象。前半は明るいパーティーチューン主体で「ワルイ俺らの日常」を描き、自分たちの世界のプラスの局面を描きながら、中盤「MOON CHILD」では下流社会の現実を描いて、自分たちの世界のマイナスの局面を描く構成は見事・・・ながらもネタとしてはちょっと出尽くしちゃっている感じ。後半「CRY」ではラップ+サビは女性ボーカルによるポップという、こちらも今更感のある着うたヒット狙い?な曲が入っていたりして・・・。聴きやすいといえば聴きやすいけど、メジャーリリースによる「売り」狙いが露骨に見えているのがキツイ。前作でフリーダウンロードによる「DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)」が素晴らしい出来だっただけにかなり残念な印象。これで、もっとへヴィーな内容の作品をいきなりフリーダウンロードでリリースしてきたらおもしろいんだけど・・・。

評価:★★★

Anarchy 過去の作品
Dream and Drama
Diggin' Anarchy
DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)

witness/FACT

FACTの新作は、相変わらずハードコア路線が主体ながらも、メタルからパンク、オルタナ系ギターロックまで幅広い音楽性を取り入れながらも、基本的にはへヴィーなバンドサウンドでガツンと来るようなサウンドを聴かせてくれています。勢いがなくちょっと散漫に感じられた前作から、同じ幅広い音楽性ながらも勢いが戻ってきた感じが。ただまだ感じられる散漫さはインパクトを弱めている印象も。

評価:★★★★

FACT 過去の作品
FACT
In the blink of an eye
burundanga

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コメント

ゆういちさん、こんばんは。

ゆういちさんのアイドル論すごく興味深かったです。うーん、やっぱり今は、アイドルの最大の顧客がいわゆる“オタク”だからなんじゃないんでしょうかね?

つくかどうかもわからないたくさんのファンを獲得しようとするより、コアなオタクに何枚も買わせる方が確実に儲けられますしね。

僕は正直言ってアイドル大好きですが、今のこの状態はやっぱり不健全だと思います。せめてもっとまともな売り方をするアイドルが増えてほしいと思います。
(長文失礼しました)

投稿: 通りすがりの読者 | 2014年9月10日 (水) 21時13分

>通りすがりの読者さん
アイドルに限らず、ヒット曲全体にいかにコアなファンを獲得するかが最近の風潮になっている感じがしますね。その結果、いままでヒットとは無縁だったようなミュージシャンがブレイクできるというプラスの側面もありますが、一方でシーン全体が閉鎖的になった感じがします。
また、やはりいかにひとりのファンに複数枚買わせるかというやり方は私もとても不健全に感じます。本来、もっと批判が出てもいいと思うのですが、レコード会社とベッタリの音楽メディアはこの状況に完全にダンマリを決め込んでいるし・・・ますます一般のユーザー層が音楽から離れていってしまいそうな・・・。

投稿: ゆういち | 2014年9月11日 (木) 23時38分

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