ブルースに真摯に向き合う
Title:Step Back
Musician:Johnny Winter
今年7月、70歳でこの世を去ったギタリスト、ジョニー・ウィンター。CBSからデビューした際の契約金が多額であったことから「100万ドルのギタリスト」の異名を持ち、その名前にたがわぬ実力から数多くのミュージシャンたちを魅了してきました。しかし長らく日本に来日しておらず、「来日していない最後の大物」と呼ばれてきましたが2011年、ついに初来日公演。その後、よっぽど日本を気に入ったのか2012年にも来日し、さらに2014年にも来日公演を行っています。それだけに7月の急逝のニュースは多くのファンを驚かせました。
そんな彼が生涯にわたりプレイしてきたのは黒人のブルース。このアルバムはそんな彼のルーツであるブルースの曲を数多くカバーしたカバーアルバム。2011年にそのものズバリ「Roots」という名前で同じくカバーアルバムをリリースしていますが、本作はそれに続く第2弾ということになります。
選曲は、そんなブルースの名曲がズラリ。Howlin' Wolfの「Killing Floor」やLightin' Hopkinsの「Mojo Hand」などなどの有名曲が並んでおり、ブルースに対する深い憧憬を感じさせる一方、1曲目を飾るのがRay Charlesの「Unchain My Heart」だったりLittle Richardの「Long Tall Sally」をカバーしていたりとロックという枠組みにとらわれない、ルーツミュージックに対する愛情を感じさせてくれます。
私自身、4月の来日公演にかけつけ、はじめて彼のライブを見ました。正直な感想としては、やはり声の衰えはいなめず、ギタープレイにしてもやはり、おそらく往年に比べると・・・といった感じで、ちょっと控えめな演奏に物足りなさも感じました。一方ではアンコールでは本編から一変し、ギュンギュンとパワフルなギタープレイを聴かせてくれ、「100万ドルのギタリスト」の片りんを感じさせるプレイも聴かせてくれました。
今回のアルバムに関していえば、確かにライブで見た時と同じく、ギタープレイにしても声にしても、どこか衰えという部分は隠せません。ただ、やはりスタジオ録音ということもあるのでしょうが、ライブで見た時よりもパワフルな演奏を聴かせてくれています。なによりルーツミュージックを1曲1曲丁寧にカバーしていくスタイルには、自身のルーツに対する愛情を強く感じます。
なによりもブルースという音楽は、必ずしも歳をとるということが音楽に対するマイナスに作用しない音楽。このアルバムの中でも特にSon Houseの「Death Letter」はアコギ一本で絞り出すような声で聴かせるプレイが心をうちます。この曲に関しては70歳の彼だからこそ演奏できた曲のように感じました。
結果として遺作となってしまった本作。ファンにとっては、それだけに思い入れなしには聴けないアルバムだと思います。また、その最後のアルバムが、彼のルーツをカバーしたアルバムだったというのも、彼らしい、と言えるのかもしれません。最後の最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれた彼。あらためてご冥福をお祈りします。
評価:★★★★
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