様々な文化が混じり合う
Title:Lovely Difficult(邦題 緑の風、愛の言葉)
Musician:MAYRA ANDRADE
先日のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドに出演し初来日を果たしたカーボ・ヴェルデの歌姫、マイラ・アンドラーデ。本作は、その来日直前にリリースされた4枚目となるアルバムです。スキヤキ参戦の前に彼女のアルバムも聴いてみました。
先日のスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドでその彼女のインタビューも行われました。先日のライブレポでもアップしたように話の内容は主に彼女の故郷カーボ・ヴェルデの話でした。カーボ・ヴェルデはアフリカ大陸の西約375kmに位置する島国。もともとは無人島でポルトガル人が発見し移り住み、その後、その奴隷としてアフリカ黒人が連れてこられたそうです。
そういう歴史的経緯があるためこの国は世界ではじめてのクレオール(混血)国家と言われているそうで、アフリカに位置しながらもヨーロッパ的な要素の強い国だそうです。また、ヨーロッパ文化とアフリカ文化が入り込んだこの国では、島ごとに違うタイプの音楽が発展するなど、音楽的文化も豊かな国。また、大西洋を挟んだ向かい側のブラジルとの交流も盛んということだそうです。
そういった話を聴いたうえで彼女のアルバムを聴くと、彼女の音楽は実にカーボ・ヴェルデのお国柄が反映されているな、ということを強く感じます。カーボ・ヴェルデはアフリカにカテゴライズされる国であるため彼女の音楽はよく「アフリカ音楽」として紹介されます。しかしこのアルバムを「アフリカ音楽」というイメージで聴くとかなり驚かされるのではないでしょうか。アコースティックテイストのサウンドに爽やかなメロディーは一般的にイメージされるアフリカ音楽というよりも、むしろヨーロッパ的なものを感じさせます。
また、様々な音楽的な要素が混ざり合っているという点にもカーボ・ヴェルデというお国柄に重なる部分を感じます。「96 days」あたりはフォーキーな雰囲気でしんみり聴かせてくれますし、「Le jour se leve」にはジャズの要素も感じられる大人のポップスに仕上げています。
一方ではラテン風な「Ilha de Santiage」やボッサなテイストも感じる「A-mi n kre-u txeu」などブラジル音楽的な要素も感じましたが、これもカーボ・ヴェルデがブラジルとの交流が強いからでしょうか。直接は関係ないとは思うのですが、「Les mots d'amour」は哀愁あふれるラテン風のメロディーがむしろ歌謡曲的なテイストさえ感じられました。
そんな訳でアフリカ音楽というよりもジャジーなポップ、あるいはメロウなブラジル音楽的な感覚で楽しめるアルバムだと思います。まさに「大人のポップ」といった表現もピッタリな作品になっています。しかし、ではこのアルバムに「アフリカ」な要素がないか、と言われるとそうでもありません。例えば「Build it up」で感じられるちょっとへヴィーなリズムにはどこか「アフリカ」的な要素を感じました。スキヤキでのインタビューでは「自分の中のアフリカ的な要素も大切にしたい」と語っていましたが、このアルバムでは間違いなくアフリカ的な要素も流れていました。
様々な文化が混ざりあう、まさにカーボ・ヴェルデ出身の彼女だからこそ生み出すことのできたアルバムだと感じました。先日のステージも素晴らしいライブでした。このアルバムも、是非とも多くの方に聴いてほしい、そう感じる傑作でした。
評価:★★★★★
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