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2014年9月20日 (土)

鍵盤楽器を大胆に導入

Title:Wall,Window
Musician:People In The Box

アルバム毎にその姿を変えつつも、毎回、その奥深い音楽性が魅力的なPeople In The Boxの新作。前作「Weather Report」では、楽曲毎にCDのトラックをかえず、全71分1トラックというアルバムをリリースし、配信により1曲毎ばら売りになっている今の音楽シーンにある種の「挑戦」を挑んだ彼ら。本作もまた、いままでの彼らと異なる新たな挑戦を感じるアルバムになっています。

今回のアルバムの大きな特徴は鍵盤楽器を導入してきたという点。アルバムの冒頭を飾る「翻訳機」では、ピアノの美しい旋律とPeople In The Boxらしいノイジーなギターが融合した、実に美しい作品に仕上がっています。

他にも「おいでよ」「月」などピアノの音色を効果的に用いた曲が目立った今回の作品。全体的に爽やかな雰囲気の作品が多く、アルバム全体的には明るい雰囲気が目立ちます。このピアノの音色と彼らが書くメロディー、そしてボーカル波多野裕文のボーカルがピッタリとマッチ。あまりにも鍵盤楽器の音色が彼らの音に自然に溶け込んでいるのが、とても意外に感じました。

ただ、そんなアルバム全体を貫くトーンの中、アルバムの中1曲1曲、様々なタイプの曲が並んでいて、聴く者を飽きさせません。骨太なバンドサウンドを聴かせてくれる「影」や、軽快でファンタジックな雰囲気が魅力な「手紙」「花」、文語体の歌詞とソフトロック風なサウンドがちょっとキリンジっぽく感じられた「馬」などなど、楽曲の幅広さはいつも通り。そんな中でも歌詞やサウンドから感じられるファンタジックな雰囲気はいつものPeople In The Box。そういう意味では新たな作風に挑戦しつつも、バンドとしての芯の部分には変わらないものを感じました。

また今回のアルバム、サウンド的には明るい雰囲気を感じつつも、「もう大丈夫」では、「大丈夫」という歌に対して、不気味なギターノイズが重なっていたりする、どこか影を感じる作品もあったりするのがユニーク。あるインタビューでメンバー本人が「人によっていろいろな意見がありすぎる」と語っていましたが、どの曲をどの角度から解釈するかでいろいろな顔が見えてくるアルバムのようにも感じました。そういう意味ではこれからさらに何度か聴くうちに、さらに感じ方が変わってきそうな予感もします。

アルバム毎に様々な顔を見せ、リスナーを楽しませてくれる彼らの、新たに生み出された傑作。本作もまた、聴けば聴くほど新たな発見があってはまっていきそうなアルバム。とりあえず数回聴いただけなのですが、まだまだこのアルバム、長く楽しめそうです。

評価:★★★★★

People In The Box 過去の作品
Ghost Apple
Family Record
Citizen Soul
Ave Materia
Weather Report

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