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2014年9月22日 (月)

往年のヒット曲が並ぶ

Title:ゴールデン☆アイドル アナログタロウ・セレクション

今年、レコード会社の枠を超えて、往年のアイドルソングをアイドル毎にベスト盤としてセレクトした「ゴールデン☆アイドル」というシリーズが発売されました。本作は、そのガイド盤的な役割を果たすオムニバスアルバム。70年代から80年代にかけてのアイドルソングのヒット曲がズラリと並んでおり、手早くその時代のアイドルソングを聴けるということもあり興味を持ち聴いてみました。

「アナログタロウ・セレクション」ということですが、この「アナログタロウ」という方、個人的に全く存じ上げませんでした(^^;;80年代の歌謡曲を用いてネタを披露する芸人さんだそうで、歌謡曲の知識も豊富ということなんでしょう。ただ、今回の選曲はとてもバランスがよく、考えられているな、ということを感じました。

おなじみのヒット曲がほどよく並んでいる選曲になっていて、選曲者の主張ばかりが激しいようなセレクトになっていません。「スマイル・フォー・ミー」「夏色のナンシー」のような、爽やかで元気印のいかにもなアイドルソングが配置されている一方で、「リ・ボ・ン」のようなGSっぽい雰囲気の楽曲が入っていたり、「タッチ」のようにアイドルソングというよりもアニメソングとして知られている楽曲が入っていたり、基本的にはアイドルソングらしいアイドルソングを主軸としながらも、ほどよいバランス感覚を感じます。

曲順も基本的には発売順に並んでいるため70年代から80年代のアイドルソングへの変遷を知ることが出来ますし、それ以上におもしろかったのが1曲目の「水色の恋」は、70年代以前の昭和歌謡曲の色合いの強い曲を持ってきている一方、最後を飾る「Oneway Generation」は90年代以降のJ-POPの色合いが強く、70年代80年代アイドルソングとその前後の時代のつながりを強く意識したような選曲になっています。

ちょっと残念なのは70年代より80年代に比重を置かれていて、70年代のアイドルソングが少なめになっている点。こちらはアナログタロウ本人の好みの問題でしょうか?また、やはり大物の松田聖子や中森明菜の曲がない点も・・・こちらはおそらく「大人の事情」なんでしょうね。ただ、そこらへんのマイナスポイントを差し引いても、この時代の空気をすばやくつかむためには最適なオムニバスアルバムだと思います。

さてその上で感じた個人的な感想なんですが、まずこれは先日の中森明菜のベスト盤でも感じたのですが、80年代の曲のアレンジについて音がしょぼい・・・(苦笑)。ここらへんはもう「時代性」なんでしょうね。ただ、今のサウンドで聴けたら、ということをちょっと感じてしまいます。

またこの時代の曲は素直に口ずさめるシンプルでポップな楽曲が多い、ということをあらためて感じます。最近のアイドルソングはコア層サブカル層を狙ったような複雑で内容を詰め込んだような「一部のリスナー受け」するような内向きの曲がもてはやされていて、個人的に疑問を感じています。その点、70年代80年代のアイドルソングはあくまでも外向きのつくりをしており、好感が持てました。

そして個人的にここ最近のアイドルソングに興味を抱けない理由のひとつがその均質的で無個性なボーカルにある点、以前ここでも書いたと思います。この点についてはこの時代はやはりアイドル本人の個性にあったボーカルと、それにあった曲が多いように感じました。例えば「夏のお嬢さん」なんて榊原郁恵のあの声があってからだと思いますし(というか、榊原郁恵の声を聴くと、今現在のおばちゃんになった彼女を思い出してしまって違和感があるのですが(笑))、「卒業」なんかは斉藤由貴のあの優しく切ないボーカルがあったからこそ、この曲が生きているように感じます。

ただ残念ながら最近になるにつれ、特に80年代以降の楽曲については、今につながるような均質で無個性なボーカルの曲が徐々に増えてきているように感じます。このアルバムに関しても中盤以降はそういう曲がチラホラ見受けられ、そこらへんの曲については正直あまり楽しめませんでした。80年代以降のアイドルソングが無個性になってくる理由は私には知識がなくわかりません。あくまでも推測になるのですが、レコード市場が大きくなるにつれ、より大きなリスナー層を想定した結果、無難に癖のないボーカルがもてはやされるようになってきた、という流れがあるのかなぁ。この傾向が現在に至るまでさらに加速してしまっているのが非常に残念です。

そんな気になる部分はあるのですが、それは選曲者のせいではなく、アイドルシーン全体の問題であるため、このオムニバスにとってはマイナスポイントではないでしょう。リアルタイムで聴いていて懐かしさを感じつつ聴くもよし、過去のヒット曲を興味から聴くもよし、どちらにしても最適なオムニバス盤だと思います。

評価:★★★★

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