アフロビートが理屈抜きで楽しい
Title:HOTEL UNIVERS
Musician:JUPITER&OKWESS INTERNATIONAL
ここのサイトでも取り上げたことのあるコンゴ出身のバンド、スタッフ・ベンダ・ビリリ。日本にも来日して大きな話題となりましたが、そんな彼らが話題となったきっかけはドキュメンタリー映画「ベンダ・ビリリ」でした。この「ベンダ・ビリリ」を制作したルノー・バレ&フローラン・ドラテュライ監督が、「ベンダ・ビリリ」の前に撮影していたドキュメンタリー映画が「JUPITER'S DANCE」。この映画で取り上げられているミュージシャンこそ、このアルバムをリリースしたジュピターでした。
彼はもともとコンゴの首都キンシャサで20年以上活動を続けているミュージシャン。今年で49歳になる彼は、ブラーのデーモン・アルバーンが発起人となったアフリカ音楽のプロジェクトアルバム「キンシャサ・ワン・ツー」にも参加しているとか。本作は、そんな地道に活動を続けてきた彼にとって世界デビューとなるアルバム。昨年の12月に国内盤がリリースされましたが、今年8月、富山で行われるワールドミュージックのフェス「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」への出演のための来日も決定。そのため、ちょっと遅ればせながらですが、このアルバムを聴いてみました。
まず楽曲としてはかなりストレートなアフロビートといったイメージ。添付のライナーツノートによると1曲目「BAPASI」は「コンゴ西部のバンドゥンドゥ州の伝統音楽のリフを盛り込んだ」ということですし、「BAKWAPANU」は「カサイ州の伝統音楽=ムトゥアシを基調としたもの」だったり、「YAKA」は「出身地である赤道州のフォルクロールをポリリズミックなハチロクのリズムを強調しながら取り上げたもの」だそうで、各地の伝統音楽を積極的に取り込んでいるようです。もっともそう言われても、どこかどう伝統音楽に沿っているのかは聴いていていまひとつピンと来ないのですが(^^;;
それ以上にそういった伝統音楽を取り上げながらもファンキーなリズムだったり、意外とメロディアスで哀愁を感じるメロなどを取り入れることによって、私たちにとっていい意味で聴きやすい音楽に仕上げているという点が印象に残ります。なんでも74年に外交官補佐である父親の仕事の関係で、旧東ドイツのベルリンに滞在したことがあり、そこでロックやファンクに傾倒した経験があるのだとか。そういう音楽的な素地がこのアルバムに深みを与えているのでしょう。単純に伝統的な音楽を引き継ぐだけではなく、西洋音楽の要素を混ぜることによる文化的な融合により、私たちでも難しいこと抜きに楽しめるこの作品が出来上がったのでしょう。
前半はハイテンポなスピード感が魅力的な楽曲が続き、その勢いはアルバム全体続いていくのですが、その中でも後半はミディアムテンポで聴かせるナンバーがチラホラ。ミディアムテンポのナンバーに関しては、上でも書いた、意外と哀愁の強いメロディアスなメロが楽しめる曲が並んでおり、こちらもまた魅力的でした。
歌詞は「BAPSI」ではキンシャサでの苦しい日常を描いていたり、「THE WORLD IS MY LAND」では差別について歌っていたり、社会派な主張の強い作品が並んでいるよう。残念ながら和訳の歌詞カードがなく、こちらもライナーツノートで概略を把握するのみなのですが、その主張は強烈なアフロのビートで私たちにも伝わってくるようでした。
ただ、タイトルにも書いた通り、難しいこと抜きにして、とにかくそのビートが心地よく、難しいこと抜きに踊りまくれそうな音楽。まさに難しい理屈抜きに楽しめる作品だったと思います。来日ライブも盛り上がりそうだなぁ。
評価:★★★★★
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