歴史的意義のあるライブツアー
Title:A Matter of Trust: TheBridge to Russia
Musician:Billy Joel
このアルバムは今のロシアが「ソヴィエト連邦」と呼ばれていた時代、1987年の7月から8月にかけてモスクワとレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)で計6回おこなったライブの模様を収録したライブアルバム。もともと直後に「コンツェルト-ライヴ・イン・U.S.S.R.-」としてライブアルバムでリリースされたり、ビデオ作品としてリリースされたりもしたそうですが、今回はそれに新規の音源や映像も加え、当時放送されたドキュメンタリー番組も収録し、CD2枚組+DVD(もしくはBlu-ray)としてリリースされた作品です。
共産主義国家であったその当時のソヴィエトは資本主義国家のアメリカと冷戦状態にあり、ロックミュージックは資本主義国家の典型的な象徴として規制の対象となっていました。しかし1985年に共産党書記長に就任したミハイル・ゴルバチョフの主導の元に行われた政治体制の改革運動、ペレストロイカの中で同年の11月、米ソ首脳会談において文化交流に関する協定がかわされてビリー・ジョエルのソ連での公演が可能となったそうです。
そんなある種の歴史的な意義もあったこのライブツアー。そんなツアーにかける意気込みはDVDに収録されたドキュメンタリーでビリー本人も語っていましたし、また、ソヴィエトという国がいかに未知の国であるかということも語っています。当時のソヴィエトに対する印象はおそらく今の北朝鮮くらいの印象だったのでしょう。それだけ当時にとってこのライブツアーは「すごいこと」だったということがわかります。
ただ、そんなライブツアーなのですが、おそらくそんな予備知識なしで見ると、おそらくそんな特殊なツアーだ、ということに気が付かず、ビリー・ジョエルのライブアルバムとして純粋に楽しめるアルバムになっているのではないでしょうか。ライブ映像も含めて、今見ても共産圏の国といった違和感はありません。観客は普通に盛り上がっていますし(確かにアメリカとかのライブと比べると若干おとなしめなのかもしれませんが)、ビリーの演奏もソヴィエトのライブだから、といって大きく変化している部分は感じられません。未知のヴェールにつつまれた国も、その内実は西側諸国の人々と何ら変わらない人たちが暮らしていた国だった、という感じでしょうか。
選曲はビリー・ジョエルの代表曲がつまっており、ベスト的な内容。そういう意味でも歴史的な意義抜きとしてビリー・ジョエルのライブアルバムとして楽しめるアルバムになっていました。ただそんな中、ビートルズの「BACK IN THE U.S.S.R.」が選曲されているのはユニークですし、ベトナム戦争の兵士のことを歌った「GOODNIGHT SAIGON」が問題なく選曲され歌われているというのはちょっとビックリしました。
ちなみにまた例のごとく日本盤は8,600円という非常にお高い内容になっています。輸入盤だと4,000円ちょいで入手できたので今回はそちらで購入。もちろん日本語字幕はなく、ドキュメンタリーも英語字幕で楽しみました・・・・・・が、さすがに私のつたない英語力では英語字幕でも半分くらいしか意味が理解できなかった・・・(^^;;ただ正直、ライブ音源とライブ映像の部分は無理に日本盤でなくてもいいので、9,000円近く出すか4,000円程度でおさめるかは迷いどころですね。よっぽどのファンで、お金に余裕がある方でなければ輸入盤で十分かと・・・。
評価:★★★★★
BILLY JOEL 過去の作品
LIVE AT SHEA STADIUM
She's Always a Woman to Me:Lovesongs
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