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2014年8月18日 (月)

タイトルに偽りあり??

以前、書店に並んでいたのを見て、ちょっと気になっていたのですが、Kindleで電子版で発売されているのを見つけて購入した作品、「ニッポン・ポップス・クロニクル1969-1989」。作者である牧村憲一氏はシュガー・ベイブやセンチメンタル・シティ・ロマンスを世に送り出し、さらには山下達郎、大貫妙子、竹内まりやらのアルバムをプロデュース。さらにフリッパーズ・ギターを世に送り出したプロデューサーです。

本作はそんなキャリアを持つ彼によるタイトル通り、日本のポップス史の編年記。内容は大きく前半と後半にわかれており、前半では1969年から1989年までの20年間を1年毎に区切り、それぞれの年のキーパーソンとなる人物を迎えインタビューと、彼自身の体験談からそれぞれに年のおこった事象を綴っています。一方後半ではジャズ評論家の相倉久人氏を迎え、日本のポップス史や現状について、特に相倉氏の専門分野である日本におけるジャズの歴史を加えて対談しています。

ただこの本、本人曰く「ある意味で『日本のポップスの入門書』としての役割を果たすものにしたつもりだ」ということですが、正直、これを日本ポップス史の入門として読むとかなり辛いものがあります。基本的にこの本でつづられているのは牧村氏の個人史。そのため、はっぴいえんど系列から加藤和彦、YMOやナイアガラ、シュガーベイブがらみでつづられていて、登場人物にはかなりの偏りがあります。もちろんこのことは本人も重々承知の上で前書きにも書いてあるのですが、この本では日本のポップス史のあくまでもひとつの側面のみ切り取っていることを考慮にいれておかないと、入門書としてはかなり誤解を招きそうな内容のように感じます。

また綴ってあるエピソードにしても、牧村氏本人が体験したエピソードや、インタビューの中で登場するエピソードなど興味深いお話が数多く登場する反面、ファンならだれもが知っていると思われるエピソードを省略している箇所もあり、そういう意味でも入門書としてはちょっと辛いんじゃないかなぁ、という感じはしました。

ただもっとも、各年に登場するキーパーソンは主に裏方の人間が多く、その現場を知るリアリティーある証言やお話も数多く、そういう意味では非常に貴重な内容であるこをは間違いありません。おそらくこの本を100%満足して理解し楽しめるのは、ある程度日本のポップス史を把握した上で、かつYMOやはっぴいえんど近辺に詳しい方、という括りがあり(そのため私もそういう意味では100%満足して理解し楽しめた訳ではないのですが・・・)そういう意味ではむしろ「上級者向け」ですらあるように感じたのですが、それを理解した上で読めば、貴重なエピソードも多い、日本ポップス史のひとつの側面を描くのに非常に貴重な1冊であることは間違いないと思います。

ただ一方、最後の相倉氏との対談については興味深い指摘も多い反面、少々疑問に感じる点もありました。特に疑問に感じたのは今のCDが売れなくなってきた現状の理由に対する指摘の点。相倉氏曰く「一番の大きな原因はね、僕はリミックスだっていう考え方」と述べ「リミックスが流行りだしてからは、作るほうにとっても完成品じゃなくなっちゃった」として、そんな未完成なものに「誰がそんなものに3000円も出すか」という点がCDが売れなくなった理由と述べています。

いや、そりゃどう考えても違うでしょ(^^;;

確かに「リミックス」というのが一時期に比べ格段に増えたのは間違いありません。ただ正直CDを一番買うようなリスナー層にとってはリミックスなんてほとんど興味はなく、あくまでもアルバムやシングルでリリースされたバージョンが完成品。いろいろな曲のミックス違いを気にするのは一部の音楽マニアだけでしょ?ちょっとここらへん、一般のリスナー層と音楽マニア層の認識の大きなズレを感じてしまいます。

そういう気になる部分はいろいろあって、正直、「業界人」と「一般リスナー」のズレみたいなものも感じてしまった点がチラホラ。ここらへんのズレがCDが売れなくなった最大の理由では??なんてことも思ってしまったりもするのですが・・・。

そういう意味で全体的に読み手を選ぶ本だと思います。逆に、この本全体として、あくまでも牧村氏の個人史、個人的な見解として読めれば、非常に貴重な証言も多い一冊であることは間違いないと思います。その点、ご理解した上で興味ある方は是非。

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