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2014年8月 4日 (月)

思ったよりも「骨太」

Title:鬱くしい国
Musician:アーバンギャルド

正直言って、このバンドがこれだけ骨太なバンドだとは思いませんでした、アーバンギャルドのニューアルバム。いままでも現代日本をどこかシニカルに描いていた歌詞が特徴的なバンドでしたが、今回のテーマはそのままズバリ「日本」。それも今回のアルバムでは、特に日本のポップミュージシャンが避けて通りがちな政治の話もきちんと描いています。

特に強烈なのが終盤。「戦争を知りたい子供たち」ではあの大槻ケンジをフューチャーしているのですが、その歌詞がちょっとシニカルな視点が入っているもののかなりストレート。

「戦争はじまるよ 海の向こうで
カーブだ 右側に気をつけろ
戦争おしえてよ 痛みを知らない
弱い僕らに強い物語を」

「鬱くしい国など貴様の頭のなかにあるだけだ。」

「戦争知らないまま僕は死ぬのか
歴史教科書 書き換えてくれよ」

(「戦争を知りたい子供たち」より 作詞 松永天馬)

と、かなり強烈に戦争を賛美しかねいない最近の風潮を皮肉っていますし、さらに、これ、タイトルだけで右翼団体から抗議がこないか?レベルの「僕の世」でも

「あなたがいなければ
命を捨てるほどの
祖国はあるのか」

(「僕の世」より 作詞 松永天馬)

なんという歌詞も登場します。

その松永天馬本人もミュージックマガジンのインタビューで「今の時代の空気を、政治的なことを抜きとして語れる人がいたら、そいつらはなにを見ているんだろう、なにを聞いているんだろうって思いますよ」と答えています。ともすれば少々政治的なことを言っただけでネット上、炎上しかねない現在の風潮の中、そこから逃げることなく、ちゃんと自分たちの音楽の中で向き合っている彼らに非常に感銘を覚えました。また、アーバンギャルドの曲はシニカルな歌詞が特徴的だったのですが、このシニカルさが政治的な歌詞にもちょうどオブラートのように効いており、これだけ皮肉めいた歌詞でもちゃんと「ポップ」としてとどまっていたと思います。

ただ・・・今回のアルバムの彼らの姿勢については賞賛を惜しまないのですが、アルバム全体の出来としては悪くはないけど・・・というレベルだったように思います。一言でいえば、良くも悪くもいつものアーバンギャルド。チープでポップなエレクトロ路線は耳を惹くものの、聴きやすいチープさが売りなだけに、比較的早く飽きが来やすいタイプのサウンドで、そのため、マンネリさを感じてしまった点も否めません。

歌詞的にも、他にも日本のポップカルチャーを皮肉った「さくらメメント」や、ネット社会を皮肉った「自撮入門」などシニカルに現代社会を描いたスタイルのターゲットは本作でも政治にとどまりません。こちらもユニークなのは間違いないのですが、以前からの彼らの曲に感じていた、ちょっと理屈っぽいかなぁ、という点は残念ながら本作でも感じてしまいます。

そんな訳で、特にここ最近の音楽業界が逃げ回っている「日本の政治」をテーマとした曲をちゃんと向き合ってつくりあげたという点では非常に素晴らしいアルバムだと思いますし、その1点のみでも聴くべきアルバムだと思います。ただ、アルバム全体としてはやはりもうちょっとかな、と感じてしまう内容で・・・。彼らみたいな骨太なバンドにはもっともっとがんばってほしいのですが。

評価:★★★★

アーバンギャルド 過去の作品
少女の証明
メンタルヘルズ
ガイガーカウンターカルチャー
恋と革命とアーバンギャルド


ほかに聴いたアルバム

SUPER HIGH TENSION!!!/the telephones

約1年2ヵ月ぶりとなるニューアルバム。前作はギターロック的な要素が強くなった作品でしたが、今回はまた彼ららしいエレクトロなダンスナンバーが主体となった作品に。そのため、良くも悪くもthe telephonesらしい作品になっていました。ライブで聴いたら気持ちいいんだろうなぁ~。

評価:★★★★

the telephones 過去の作品
DANCE FLOOR MONSTER
A.B.C.D.e.p.
Oh My Telephones!!! e.p.

We Love Telephones!!!
100% DISCO HITS! SUMMER PACK
Rock Kingdom
D.E.N.W.A.e.p.
Laugh,Cry,Sing...And Dance!!!

Yes,We Love butchers~Tribute to bloodthirsty butchers~The Last Match

bloodthirsty butchersへのトリビュートアルバム第4弾。一組のミュージシャンへのトリビュートアルバムが4枚にも及ぶというのは前代未聞で、それだけブッチャーズというバンドが多くのミュージシャンへ影響を与えていたのがわかります。第4弾となる本作ではアジカンやTHE BACK HORNらが参加。+/-といった海外のバンドも参加しています。

今回もどのバンドも魅力的なカバーを聴かせてくれているのですが、全体的にはちょっとおとなしめで、予想通りの内容といった感じかな?ASA-CHANG&巡礼のような実験的なカバーもユニークだったのですが。とはいえ、それぞれミュージシャンの個性を出しつつブッチャーズの魅力も表現しているカバーなだけに、参加ミュージシャンのファンは要チェックでしょう。

評価:★★★★

Yes,We Love butchers~Tribute to bloodthirsty butchers~ 他の作品
Mumps
Abandoned Puppy

Night Walking

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