何度目の「世界進出」??
Title:THE WORLD~X JAPAN 初の全世界ベスト~
Musician:X JAPAN
2007年の再結成以来、活動をしているのかしていないのかわからない状況が続いているX JAPAN。アルバムも出す出すといいながら、時々行うライブ以外は音沙汰のない状態。そしてようやくリリースされたのが、そろそろTM NETWORKや槇原敬之と並んで「何枚目のベスト盤?」状態になりつつあるベストアルバムでした。
一応、タイトルでわざわざ「初の全世界ベスト」と記載されていることからもわかるように、世界進出に先駆けての「あいさつ」代わりのベスト盤だそうです、が・・・・・・いったい何度めの「世界進出」??
ただこのベスト盤を聴いて感じたのは正直、X JAPANは世界進出は難しいんじゃないのかなぁ、と思いました。その主な理由はふたつあって、一つ目は、X JAPANの楽曲がちょっと今の時代にマッチしていないんじゃないのか、と感じる点でした。
出てきた当初こそ、メタリックでへヴィーなサウンドや早いBPMのリズムが強いインパクトを与えたのですが、今となっては彼らのサウンドはそれだけで惹きつけられるほどのへヴィネスさは薄くなってしまっていますし、BPMも今となっては決して「とても速い」というレベルではありません。アレンジにしろメロにしろどこか90年代のJ-POP的。今の時代の流行りからはちょっとはずれているように感じます。
もうひとつは本気で世界進出を狙うのなら、アメリカなりイギリスなりに骨をうずめる覚悟でやらなきゃダメだろ、という話。そもそもアジア圏はともかく欧米ではX JAPANの知名度はゼロに近い状態。そんな中で「ロラパルーザ」出演やら、「マディソン・スクエア・ガーデン」公演やら、わかりやすい形ばかりを追い求めようとするスタイルは、アメリカで真面目に活動しているバンドに対して失礼にすら感じます。もっとも、「世界進出」というのも、あくまでも「日本においてのプロモーションのため」というのが本音かもしれませんが・・・。
そもそも個人的に、X JAPANの、というよりもYOSHIKIに対する評価というのが少々過大評価ではないのか、ということを常々思っています。まあ、YOSHIKIの芸能界的な活動だったり、「Forever Love」が自民党のCMに採用されたり、いかにも「政府御用達のロックバンド」になってしまってきている点もみっともないな、と感じる部分もあるのですが、音楽的な話をすると彼の書くメロディーって、ちょっと優等生すぎる部分を感じます。
ご存じのようにクラシックの素養のある彼。そんなメロディーとメタリックなサウンドのアンバランスさがX JAPANのおもしろさなんですが、それに慣れてくると、正直、ちょっとワンパターンさも感じてしまいます。特にバラードナンバー。ピアノが入って静かにはじまってサビはToshiのハイトーンボイスで盛り上がる・・・うーん、似たようなタイプの曲が多いし、もうひとつのパターンはマイナーコード主体のハイテンポの曲。決して楽曲の幅が広いとは感じられません。
なぁんていろいろ腐してきたのですが、正直言えばこのアルバム、聴いていて結構はまってしまいました(笑)。もちろん思い出補正もあるのでしょうが、上でいろいろ言っていますが、なんだかんだいっても名曲が多いのも間違いありません。個人的には特に「Weekend」のサビや「Endless Rain」のサビ前の、半音で展開していくメロディーが壺。こういうメロが書けるのって、やはりYOSHIKIがギターのようなコード楽器出身ではなく、ピアノのようなメロディー楽器がベースになって作曲をしているからなのでしょうか。
そしてなによりHIDEの曲、いいよね。「SCARS」なんてむしろここ最近のへヴィーロックに通じる部分を感じて、これが20年近く前の作品ということに驚かされます。どちらかというとX JAPANの中で、「天才」と言えるのはHIDEの方で、YOSHIKIはむしろ「秀才」タイプだと思うんですが。
あと、2枚組とはいえ、2枚目は30分近くに及ぶ「ART OF LIFE」1曲のみで、事実上、アルバム1枚に収めたというのも良いと思います。そのため、X JAPANについての本当の代表曲だけに絞り、初心者にとっても手早くX JAPANというバンドを知ることが出来るアルバムになっていました。「全世界へのあいさつ」がどの程度本気かはわかりませんが、いろいろなベスト盤がリリースされている中、最初の1枚としては間違いなくほどよいバランスが取れているベスト盤のように感じます。
そんな訳で、ファンにとっては怒られそうなコメントを書いておきながら、全体的な評価としては下の通り(笑)。なんだかんだいいながらもX JAPANってやはり魅力的なバンドなのは間違いないよな、ということも実感できたベスト盤でした。ただ、それだけに中途半端な世界進出はやめて、腰を落ち着けて、ニューアルバムのリリースを期待したいところなのですが。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ID/WEAVER
メジャーデビュー5年目の3人組ピアノロックバンドの、初となるベストアルバム。個人的にはピアノ+ギターロックという組み合わせはかなり壺に近く、そういう意味でも彼らのアルバムは基本的に毎作聴いているのですが・・・・・・うーん、やはり正直あまりおもしろくない・・・爽やかなピアノサウンドは正直何のひねりもないですし、メロディーも至って平凡でインパクトも不足気味。一時期、アルバムがチャート4位を記録しながら、その後さっぱりなのもなんとなくわかるような・・・。厳しいことを言っているかもしれないけども、もう一頑張り、一皮むけてほしいバンドなんだよなぁ。
評価:★★★
WEAVER 過去の作品
Tapestry
新世界創造記・前編
新世界創造記・後編
ジュビレーション
Handmade
SINGLE BEST/DOUBLE
1998年のデビューから16年。現在まで発売されているシングルすべてを網羅したDOUBLE初のシングルベスト。DOUBLEというミュージシャン、ご存じの方も多いと思いますが、今はTAKAKOのソロプロジェクトとなっていますが、デビュー当初は彼女と姉のSACHIKOとの姉妹デゥオとしてデビュー。しかし1999年に姉のSACHIKOが急逝し、その後、TAKAKO一人でDOUBLEと名乗り、活動を続けています。
そのためデビューから今まで一貫してソロプロジェクトにも拘わらずハーモニーを聴かせるような楽曲もあったりと、デビュー当初同様、姉妹ユニットを意識したような曲が目立ちます。ただ、そんな一貫したスタイルの一方、曲調は同じR&Bでも時代にあわせてその姿を少しづつ変えているのが特徴的。その時代時代にマッチした「大人のR&B」を聴かせてくれます。
ここ最近、ちょっとDOUBLEとしての活動がご無沙汰気味で気になるところなのですが・・・このベストを機に、また久しぶりに新作を聴きたいなぁ。
評価:★★★★★
DOUBLE 過去の作品
10 Years Best WE R&B
THE BEST COLLABORATION
Ballad Collection Mellow
WOMAN
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