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2014年7月24日 (木)

ブラックコミュニティーを描く

Title:...and then you shoot your cousin
Musician:THE ROOTS

前作「undun」がグラミー賞にノミネートされるなど、高い評価を得たアメリカのHIP HOPグループの最新作。THE ROOTSといえば、HIP HOPとしては珍しくバンド形態で活動し、楽曲も生音がメインという特徴があります。今回のアルバムも、全編的にストリングスやピアノの生音を取り入れたアレンジが大きな特徴的。ジャズ、ソウル、あるいはアンビエント的な要素を取り入れたトラックが実に魅力的なアルバムになっていました。

今回のアルバムの特徴は、本人たち曰く「ヒップホップに限らず、俺たちのコミュニティの中にいつまでもある固定観念のいくつかを分析した、風刺的な作品」参考サイト)だそうで、実際にストリートの中の貧困を描いた「Never」や、女性に翻弄される男性を描いた「When The People Cheer」のようなリリックが非常に印象に残りました。

アルバム全体の流れとしては、前作同様コンセプチュアルな内容になっています。正直、コミュニティーに立脚した歌詞や宗教にからんだ歌詞は、日本人である私たちには若干わかりずらい部分はあるのは否定できません。ただわからないなりにも、アルバム全編を流れる優しくメロウなメロディーラインには心打つものがありますし、最後を飾るアメリカのシンガーソングライター、ラヒーム・デヴォーンをフューチャーした「Tomorrow」は、その美しいメロディーラインがとても心に響きます。歌詞の内容も

「そして誰もが今すぐ未来を手に入れようとする
でも誰にでも天使が必要だから
誰にでも笑顔が必要だから」

(「Tomorrow」より Written by Raheem DeVaughn,Ray Angry 訳詞 Kana Muramatsu)

と、厳しいコミュニティーの現実を描いたラストとして、とても優しい視点を感じました。

トラックの方は前述の通り、音もかなり絞りつつ、ジャジーだったりアンビエント風だったりメロウに聴かせるトラックが展開されますが、そんな中でちょっとインパクトになっていたのが中盤。「Black Rock」ではちょっとくすんだピアノとベースの音がファンキーなリズムを刻み、続く「Understand」でもファンキーなオルガンの音が印象的なトラックに。アルバムの中でグッと黒さの増したトラックが強い印象に残りました。

HIP HOPシーンの中で、相変わらず独特の個性を保ち続ける彼ら。今回のアルバムも全編わずか33分という昨今のHIP HOPのアルバムとしては驚きの短さ。その短い中に、ギュッと彼らの主張が濃縮された、非常に濃い内容のアルバムになっていたと思います。

HIP HOP以上にブラックミュージックの要素の強い彼らだからこそ、今回のアルバムもまた、HIP HOPリスナー以上にブラックミュージック好き全般にお勧めしたいアルバム。歌詞も魅力的なので、国内盤がお勧めです。

評価:★★★★★

THE ROOTS 過去の作品
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
undun
Betty Wright:The Movie(Betty Wright&The Roots)

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