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2014年7月18日 (金)

向井秀徳の歩み

先日、NUMBER GIRLのメジャーデビューアルバム「School Girl Distortional Addict」のリマスターアルバムを紹介しましたが、続いて、2ndアルバム「SAPPUKEI」と3rdアルバム「NUM HEAVYMETALLIC」のリマスターアルバムがリリースされました。

Title:SAPPUKEI 15th Anniversary Edition
Musician:NUMBER GIRL

Title:NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition
Mucisian:NUMBER GIRL

いまから聴いても、NUM-HEAVYMETALLICがやばすぎる!

2002年の私個人の年間ベスト1位に選んだほど、その当時もはまりまくった1枚だったのですが、12年(もうそんなになるのか・・・)が経過した今聴いても全く色あせていない事実に、驚きすら感じてしまいます。

間違いなくこの時期の向井秀徳は、自分のやりたいことのアイディアにあふれまくっていたのではないでしょうか。同封のライナーツノートによると、このアルバム完成後も「京都大学西部講堂でレコーディングを行い、ギター・ロック盤/ダブ盤で20曲・2枚組のアルバムをつくる」というアイディアがあったそうですから、その創作意欲のほどがうかがえます。

このアルバムでも、デビュー以来のギターロックサウンドを主軸としながらも、和のテイストやダブ、HIP HOP、向井秀徳らしい言語感覚の歌詞、独特なギターサウンド・・・etcなど、向井秀徳のアイディアにあふれています。ただ、そのアイディアもあくまでもNUMBER GIRLという所与としたもの。その枠組みが取っ払われ、事実上、向井秀徳のワンマンバンドとなったZAZEN BOYSと比べると、そのアイディアにも制約条件が付されています。

しかし、その制約条件が逆に彼のアイディアをよりおもしろいものとしているように感じました。いわば他のバンドメンバーとの摩擦により、向井秀徳本人にもおそらく思いもよらないような次元に消化している、このアルバムを聴くとそう感じます。だからこそ、このリマスター盤についていたライブ音源では、このNUM-HEAVYMETALLICの世界が、さらなる進化を遂げていました。

例えば「NUM-HEAVYMETALLIC」では、一部ボーカルを田渕ひさ子が担当したことにより、より狂気な雰囲気が増し、また向井秀徳とのラップとの対比が際立っていましたし、「Inuzini」でもバンドサウンドがより迫力を増していました。一番顕著だったのが「delayed brain」。正直、オリジナルアルバムではちょっと地味に感じるこのアルバムも、ライブにするとダビーな雰囲気が増し、けだるい雰囲気がライブの中でもひとつのインパクトとなっているように感じました。

まさにNUMBER GIRLの完成系ともいえる「NUM-HEAVYMETALLIC」。ただそこには向井秀徳の個性と他のバンドメンバーとの摩擦が生じており、その後解散という流れになったのは、今から考えると自然だったのかなぁ、とすら思います。

一方、2ndアルバム「SAPPUKEI」は、メジャーデビューアルバムにして初期衝動の塊だったデビューアルバム「School Girl Distortional Addict」、そしてナンバガの完成系「NUM-HEAVYMETALLIC」と比べると、今から聴くと正直ちょっと地味な印象は否めません。

今から聴くと、というのはそれを聴いた当時にしては、間違いなく「School Girl~」に比べると大きな進歩、新たな一歩を踏み出した印象のあったアルバムなのですが、その後の「NUM-HEAVYMETALLIC」がリリースされた後となっては、やはり「SAPPUKEI」は成長の途上だったんだな、という印象を抱いてしまいます。

とはいえこのアルバムの聴きどころは、やはりいかに向井秀徳がその個性を獲得していったか、という過程。デビューアルバムではもやもやとした感じであらわれていた向井秀徳らしさ、独特のギターサウンドや個性的な歌詞の言語表現などが、このアルバムで徐々に確立されているのが感じます。

もちろん、そういう流れを抜きにしてもひとつのギターロックアルバムとしては文句なしの傑作なのは間違いありません。ともすれば向井秀徳としての個性が強すぎる「NUM-HEAVYMETALLIC」や、それ以降のZAZEN BOYSとしての作品と比べて、まだ向井秀徳があくまでもバンドの一員という立場を保っているこのアルバムは、ひょっとして一番気に入る、という方も少なくないかもしれません。

さて、今回のリマスターなのですが、正直言うと、デビューアルバムに比べると、その差は大きくないように感じました。

もともとこの2枚のアルバム、今回リマスターを担当したデイヴ・フリッドマンがプロデュースを行っており、そういう意味で、リマスターを行っても、素人の耳でもはっきりするだけの大きな変化はなかったのかもしれません。もっとも、オリジナルと同時並行で聴けば、はっきりわかるだけの差異もあったのかもしれませんが・・・。

そんな訳で、どちらのアルバムも間違いなく日本のロック史に残すべきアルバム。特にライブ盤はオリジナルアルバム以上の出来だっただけに、オリジナルを持っているファンも、これは買わざるを得ないでしょう。あらためてナンバガの魅力を再確認できた作品でした。

評価:
どちらも ★★★★★

NUMBER GIRL 過去の作品
School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition

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