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2014年7月14日 (月)

和風ハンバーグステーキ

Title:ボカロ三昧
Musician:和楽器バンド

個人的にボカロ近辺がおもしろいなぁ、と感じているのは、すぐれたミュージシャンが多く名曲が多い・・・からではなくて、「動画サイト」を通じて、どんな素人でも自由に曲を発表でき、かつ「初音ミク」というソフトの存在により、他の楽器と異なりいままで人間に頼るしかなかったボーカルすら、機械を使用することが出来るようになったため、結果として様々な人たちが作品を発表する場が提供された、ということにおもしろさを感じています。

やはりどんな人たちでも垣根なく自由にその才能を発表できるという状況があたらしいムーブメントを生み出すと思うし、結果、「プロ」には思いつかないような新しい音楽も生まれる可能性も大きいと思っています。そんな中出てきたのが、ボーカロイドをつかって発表された楽曲を和楽器をつかってアレンジして演奏するバンド。こういうアイディアをすぐに発表でき、かつCDリリースまで至ってアルバムがベスト10ヒットするまでの人気を得るという、この流れはとてもおもしろいと思いました。

ただ、彼女たちのアイディア自体は非常におもしろいと思う反面、楽曲やアレンジに関しては、ある程度は予想していたものの、ちょっと残念な印象もありました。まず和楽器を用いているものの、基本的にはロックのアレンジに、楽器を和楽器に持ち替えているだけのスタイルという点。個人的にはこれで「和風だ」「日本のロックだ」と言ってしまうにはかなり抵抗があります。例えるならば彼らの音楽は「和風ハンバーグステーキ」。しょうゆだれという点で和風な雰囲気を出しているものの、基本的には洋食。ある意味、わかりやすい「和風」であるため受けはいいかもしれませんが、逆にこれを「日本的だ」ととらえられた場合、少々本質をはずして受け止められる危険性も感じられました。

また、おそらく和楽器の雰囲気にあう曲を選んだからでしょうか、曲が全体的にマイナーコードの哀愁感あるメロディーの曲ばかりになっている点。結果、アルバム全体としては少々単調に感じられる部分もありました。それに和楽器を組み込んでくるため、アレンジも似たような雰囲気となってしまい、聴いていて後半はだれたかな?ここらへん、無理にメロディーラインとかに「和」のテイストを持ってくる必要性はなかったんじゃないかなぁ、とも感じました。

そんな訳で、純粋に楽曲のみを考えた場合、ちょっと残念に感じる部分がある一方、演奏自体はメンバーそれぞれその道のプロらしく、間違いなく安定感ある演奏を聴かせてくれますし、普段、機械音で歌われるボカロ曲を人間のボーカルで聴けるというのは、機械音が苦手で、という方にも楽しめるアルバムになっていたと思います。

楽曲自体はちょっと物足りなさを感じたため、3。和楽器の演奏とボカロ曲を組み合わせるというアイディアのおもしろさに1つ追加で。ただ、ここからのアイディアの広がりをちょっと感じにくいのが難しいところなのですが・・・次回作はどんなスタイルで聴かせてくれるのか、期待半分、不安半分で待っていたいと思います。

評価:★★★★

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