サッカーで結びついた2人
Title:AMIGO
Musician:ウカスカジー
ご存じMr.Childrenの桜井和寿、そしてEAST ENDのMCとして、日本のHIP HOP黎明期から活動を続けるGAKU-MC。直接接点のなさそうな二人が、サッカー好きという共通点からむすびつき結成されたユニットがウカスカジー。もともと8年前、ワールドカップのドイツ大会を機に、GAKU-MC/桜井和寿 (Mr.Children)名義でシングル「手を出すな!」をリリースし大ヒットを記録しましたが、それから8年。ウカスカジーというユニット名もついて、アルバムのリリースとなりました。
残念な結果に終わってしまった先日のワールドカップ。その日本代表の公式応援歌として、このアルバムにも収録されている「勝利の笑みを 君と」が採用されました。ただこの曲、ちょっと気になった部分があります。それは、歌詞の最後に「奪いに行くんだゴールを日本!!」とわざわざ日本に限定してしまっている内容になっている点でした。
日本代表の公式応援歌なんだから「日本」と入るのは当然という考えはもっともですが、ただ、この部分以外には非常に普遍性ある内容の歌詞にも拘わらず、あえて「日本」と対象を限定するという歌詞の構成には、特に日本をふくめてナショナリズムが排外主義とむすびつきやすい昨今の状況から考えると少々違和感を覚えました。
ただひょっとしたら彼らもこのサッカーとナショナリズムのむすびつき、さらにその先に横たわっている危険のある排外主義とのむすびつきを気にしている部分はあるのかもしれません。そう感じたのはこのアルバムに収録されている「サンシャインエブリデイ」にこんな歌詞があるからです。
「ヤツは誰 出身はどこ 肌の色 気にしないでいい
歌は好き 趣味は何 夢はある そうそれくらいがいい」
(「サンシャインエブリデイ」より 作詞 ウカスカジー)
明確にサッカーを通じた友好をテーマとしたこの曲をあえて入れてくるあたり、彼らがそういうサッカーを媒介としたナショナリズムの危険性について自覚しているからかもしれません。
さて、ちょっと難しい話はこのくらいにして、実はこの気になる1点を除いて今回のアルバム、実によく出来ている傑作に感じました。
楽曲は基本的にサッカーをテーマとした構成。メインとなるのはミスチルのようなポップソングに、所々GAKUのラップが重なるスタイルとなっています。ただ、このおそらく桜井が書いているポップソング、ちょっと昔のミスチルを彷彿とさせるようなシンプルな曲調に仕上がっており、彼のメロディーメイカーとしての実力がいかんなく発揮された楽曲になっていました。
特にここ最近のミスチルは、あれだけビックになってしまったからか、やたらめったらスケール感ある曲が多くなってしまっています。でもこのアルバムに収録された曲は、そんな最近のミスチルで聴けなくなってしまったような素朴なポップソングがメイン。ミスチル同様、少々アレンジ過剰な部分は気になりますが、「最近よりも昔のミスチルが好きだった」という方には無条件で納得できそうなポップソングがつまっています。
一方で、おそらくGAKUがメインとなったラップ中心の曲もユニーク。リズミカルで楽しいポップソングになっており、ラップがメインとしてもきちんとメロディーが流れているため、HIP HOPが苦手・・・という方でも苦なく聴ける楽曲になっていたと思います。桜井の書くポップなメロと、GAKUのリズミカルなラップが重なることにより楽曲のバリエーションが増していました。
正直若干、桜井の歌うメロディーとGAKUのラップが少々うまく重なっておらず、ラップに唐突感ある部分も否めないのですが、まあそれはそれでアルバムの「味」として楽しめそうなレベルにはおさまっています。サッカーを媒介にむすびついた2人ですが、そこで登場したアルバムはサッカーに興味がなくても十分楽しめる、予想以上に楽しい作品になっていました。
このユニットは今後もコンスタントに続くのかなぁ。まあ、次はミスチルの新作、とは思うのですが、ミスチルの合間にでもたまにアルバムをリリースしてくれるとおもしろいかも。というか、次はまた4年後か?
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2014年」カテゴリの記事
- まだまだ「実」だけど(2014.12.29)
- ロック入門...的な(2014.12.28)
- 踊れるロック(2014.12.27)
- レトロなガレージサウンドが心地よい(2014.12.26)
- 社会派三部作完結編(2014.12.23)
コメント