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2014年7月21日 (月)

バンドとしての自信を確固たるものに

Title:マリアンヌの呪縛
Musician:キノコホテル

途中、ミニアルバムを1枚はさみ、フルアルバムとしては約1年半ぶりとなるニューアルバム。ある意味、衝撃的ですらあったデビュー時に比べると少々話題にのぼることも少なくなってしまった印象もあります。リーダーのマリアンヌ東雲以外のメンバーが流動的で、マスメディアが好みそうな「バンド幻想」が産まれにくい雰囲気だから、ということもあるのでしょうか。

ただ、前作「マリアンヌの誘惑」は、キノコホテルとして一皮むけたような傑作に仕上がっており、バンドとしての成長を感じさせる作品になっていました。それだけに次のオリジナルアルバムも楽しみだったのですが、今回のアルバムはそんな期待に応えるかのように、さらなるキノコホテルの進歩を感じさせる作品だったと思います。

タイトル通り、「ボレロ」のリズムを彷彿させるような(「水戸黄門の出だし」ともいう)「ボレロ昇天」から、ちょっと不気味なサイケデリックなサウンドに期待が高まる作品。続く「冷たい街」は彼女たちらしい、歌謡風のガレージロックでファンの耳をグッとつかむのですが、今回のアルバムのひとつのポイントになっていたのが続く「Fの巡回」だったように思います。

7分におよぶ長尺な作品は、ミニマルなリズムトラックにノイジーなギターサウンド、そしてエレピがかさなるキノコホテル流のダンスチューン。ミニマルなトラックとサイケなサウンドにCDで聴いていても軽くトリップできそうな作品。キノコホテルとしてのさらなる可能性を感じます。

続く「ばら・ばら」も彼女たちらしいガレージロックナンバーなのですが、ロックンロールの色合いがさらに強くなり、バンドとしての迫力を感じますし、続く「ゴー・ゴー・キノコホテル」はへヴィーでロックでサイケなインストナンバー。バンドとしての底力を感じる作品になっています。

オリジナルとしての前作「マリアンヌの誘惑」はバンドとしての自信を感じる作品になっていましたが、ベーシストを変えることにより、その自信をさらなる確固たるものとしたアルバムだったように感じます。

そんなバンドとしての側面を強調した前半と比べ、後半は比較的いつものキノコホテル。「セクサロイドM」みたいなエロチックなナンバーを挟みつつ、キノコホテルらしい昭和歌謡風のガレージロックナンバーが続きます。ここらへん、抑えるべきところはきちんと抑えている、といった感じでしょうか。

そんな訳で、さらなる進歩を感じるキノコホテルのニューアルバム。うーん、彼女たちからはまだまだ目が離せなさそう。個人的にはもっともっと注目されてもいいバンドだと思うんだけどなぁ。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

キノコホテル 過去の作品
マリアンヌの憂鬱
マリアンヌの休日
クラダ・シ・キノコ
マリアンヌの恍惚
マリアンヌの誘惑
キノコホテルの逆襲


ほかに聴いたアルバム

Cans Of Freak Hits/黒猫チェルシー

黒猫チェルシー、初となるベストアルバム。いままでのアルバムは、ガレージサウンドがカッコいいと思いつつ、いまひとつピンと来なかったのですが、さすがベスト盤として代表曲を並べるとはまってしまいます。タイプ的にはかなりストレートなガレージロックで、ひねりのないストレートなサウンドが心地よい感じ。後半はイエモンの「パール」や奥田民生の「息子」をカバーしているのですが、しっかり自分たちのものとしています。代表曲をセレクトすればこれだけカッコいいものがつくれるんだから、オリジナルアルバムももっと期待したいのですが・・・。

評価:★★★★★

黒猫チェルシー 過去の作品
All de Fashion
猫Pack
NUDE+
猫Pack2
HARENTIC ZOO

So Nice/MAMALAID RAG

田中拡邦のソロプロジェクト、MAMALAID RAGのニューアルバム。前作ではブルース方向にシフトした彼ですが、最新アルバムではAORの王道を行くような曲が並んでおり、ソフトロックなサウンドが実に心地よいポップスになっています。ただ、メロディーラインの良さは文句なしなのですが、全体的にやはりどこかキリンジだったり大滝詠一だったりを思い出してしまうような曲が並んでいるのが否定できません。MAMALAID RAGだけの個性がもうちょっとほしい感じがするのですが・・・。メロディーの良さは抜群だと思うんだけどなぁ。

評価:★★★★

MAMALAID RAG 過去の作品
the essential MAMALAID RAG
SPRING MIST

LIVING
Day And Night Blues

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