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2014年6月15日 (日)

期待に応えたラスト作

Title:To From
Musician:SOUL'd OUT

このアルバムのリリース発表と同時に解散を発表したSOUL'd OUT。結成から15年、メジャーデビューから11年、数々のヒットシングルを飛ばしつつ、残念ながら最近は少々低迷気味だったのですが、その活動に幕を下ろしました。思えば2009年に活動を休止。その後、活動再開したものの結局解散というパターンは、よくありがちなケースではあるのですが。

そのラストアルバムとなった本作。2枚組の作品となっており(初回盤はDVD付の3枚組)、1枚目は最後のオリジナルアルバム、2枚目はファン投票により選曲されたベストアルバムになっています。まさに最後を飾るにふさわしいアルバム、と言えるでしょう。

特にオリジナルアルバムに関しては、彼ら自身、これが最後ということを明確に意識した作品になっていました。具体的にいえば、前半から中盤にかけては、まさにこれがSOUL'd OUTだ、と思わせる、実に彼ららしい楽曲が並んでいます。例えば「SUCK MY ART」では空耳を感じさせるようなサビがテンポよく、かつどこかユニークですし、「Sweet Grrl パイセン」で抜けるようなファルセットを入れてくるあたりも彼ららしいといった感じでしょう。

中盤も「Hoochie Coo Baby」ではジャズ、「one man cast alone」ではロックの要素など入れつつ、彼ららしいスタイルに取り込んでいるのが彼ららしいところ。良くも悪くも様々なジャンルのおいしい部分を拝借するスタイルも、J-POPらしさを感じます。

また、これらの楽曲も含めて、彼らの大きな特徴がベタベタであるという点なのですが、そのベタさ、ある種の「ダサカッコよさ」もこのアルバムによくあらわれていたように感じます。例えばラップは必要以上の巻き舌で、あくまでも英語っぽく聞こえることに主眼を置いたラップ。そのため、ユーモラスになっている空耳なラップはこのアルバムでも大きなインパクトになっていました。

そしてそれ以上に彼らがこれが最後ということを意識していたのがこのアルバムの終盤。11分にも及ぶ「scribbles」では、前半はインストのナンバーなのですが、中盤以降で語られる英語のモノローグは、彼らの今の思い、そしてファンへのメッセージ。そしてラストを飾る「Dear My Cru」はファンへのメッセージがこちらは日本語で歌詞に織り込まれ、SOUL'd OUTの最後を飾るにはふさわしい楽曲になっていました。

もう1枚収録のベスト盤も、ファン投票による選曲ということもあって、SOUL'd OUTの代表曲が並んだ、彼らの魅力がよくわかる作品。特にテンポのよいダンサナブルな楽曲の連続に、聴いていて思わず身体が動いてしまいそう。

HIP HOPに歌謡曲的な要素を加え、それをベタに表現するという、ダサカッコいいスタイルは、間違いなく彼らの大きな個性であり、また、ほかに類を見ないスタイル。それだけに彼らの解散は非常に残念に感じます。ただ一方で、このスタイルは出しつくした感も否定はできないので、ちょうどよいタイミングだったのかもしれませんが。解散を意識したこのアルバムは、いままで彼らのアルバムを少しでも聴いたことある方なら、ぜひとも最後に聴いておきたいアルバムだと思います。ベスト盤も付いていますし、昔、SOUL'd OUTを聴いていた、という方は是非!

評価:★★★★★

SOUL'd OUT 過去の作品
ATITUDE
Flip Side Collection
so_mania
Decade


ほかに聴いたアルバム

フリーソウル・キリンジ/キリンジ

今回のキリンジのアルバムは、「Free Soul」シリーズの一環としてのコンピレーションアルバム。「Free Soul」は90年代初頭に渋谷で発足したムーブメントで、簡単に言ってしまえば、レア・グルーヴにスポットをあてた活動で、その流れからリリースされたコンピレーションも大きな話題となりました。

今回のキリンジのアルバムは、まさにそんな「レア・グルーヴ」的な観点から、知る人ぞ知る的な選曲がされている一方、おなじみの代表曲も多く収録。そういう意味ではキリンジファンにとっても、キリンジを知るための1枚としても最適な選曲になっていました。あらためて、キリンジが優れたグループであったことを実感させられるアルバム。ファンならずともそのメロウなグルーヴに酔いしれることの出来る作品です。

評価:★★★★★

キリンジ 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten

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