伝説のライブ!
Title:Blues Live!(邦題 イン・ジャパン '74&'76~伝説のブルース・ライヴ!)
Musician:SLEEPY JOHN ESTES&HAMMIE NIXON
今回紹介するのはスリーピー・ジョン・エスティスというブルースミュージシャンの日本でのライブの模様を収録したライブ盤。エスティスは1899年(異説あり)アメリカ・テネシー出身。戦前に活躍し、何回かのレコーディングセッションを行い人気を獲得したものの、その後徐々に下火となり、音楽業界から身を引きました。
その後、カントリーブルースがブームになると、彼の曲も再評価されるようになったのですが、その段階ではすでに死亡していると思われていました。しかし、1962年に研究者によって「再発見」。その時の彼は極貧の状態で、以前はかろうじて見ていた左目も失明し、全盲の状況だったそうです。
そんな状況で「再発見」された彼は、ブルースブームの中、62年に久々となるアルバムをレコーディング。このアルバム、日本でのブルースブームの中、オリコンのチャートにもランクインするなどちょっとしたブームになりました。
まさにそんな「物語性」に富んだブルースミュージシャンである彼が、ハーモニカ奏者のハミー・ニクソンと来日。その模様を収録したライブアルバムが今回紹介するアルバムです。もともと、来日直後の76年にリリースされていたそうですが、長らくCD化されず、このたび、待望のCD化となったそうです。
前半は1974年の東京郵便貯金会館でのライブの模様を収録した内容で、後半は76年の日本青年館及び京都・サーカス・サーカスでのライブの模様を収録しています。
この時、エスティスは御年75歳と77歳。惜しくも世を去るのが、この翌年の77年なのでまさしく最晩年のステージです。たしかに決して艶のある歌声、といった感じではありません。ただ、彼の奏でるアコギと、ハミーの奏でるハーモニカとカズーのみのサウンドの、彼の絞り出すように歌うボーカルがとても印象的。シンプルなだけにとても味わいを感じます。
ただ彼らが歌う楽曲は決して「渋い」という感じではありません。むしろ「BROKE AND HUNGRY」や「STO THAT THING」のように半数近くが軽快なナンバー。「YOU SHOULD'T SAY THAT」では合いの手が妙にユーモラスですし、ご存じ「WHEN THE SAINTS GO MARCHING IN」では観客の手拍子で盛り上がっています。
ただ、この時のステージは観客もあの伝説を目撃する、といった気持ちだったのでしょうか、手拍子もとてもおとなしい感じで、その音を少しも聞き逃すものか、という雰囲気を感じられました。
その点、後半の方が観客も、そしてエスティスとハミー本人たちも2度目の来日だからでしょうか、ステージの雰囲気ももうちょっとなごんだ感じて、盛り上がりを感じます。特に「BROWNSVILLE BLUES」「JESUS IS ON THE MAINLINE」では手拍子で盛り上がり、エスティスとハミーも盛り上がってきたように感じます。
後半の特徴としては、17曲以降、日本を代表するブルースミュージシャン憂歌団の演奏によるステージになるという点。そのため、アコギとハーモニカのみというシンプルなステージにバンドサウンドが加わります。この憂歌団の演奏に関しては、2人のみの演奏と比べるとちょっと端正な感じがして、さらに若々しさも感じられ、ちょっとした違和感もあるのですが、ただ、ちゃんと2人の演奏をきちんと盛り上げる脇役に徹していました。
アルバム全体としては本人たちの年齢を感じさせない、というよりは年齢なりの味のあるステージで、実に魅力的なステージがリアリティーをもって伝わってきます。リアルタイムで彼らの来日を目撃できた方は今となってはとてもうらやましいのですが、このアルバムを通じて、そのライブの魅力が少なからず伝わってくるようなアルバムだったと思います。
渋いというエスティスのパブリックイメージだけではなく、アップテンポで軽快な楽しいステージという、彼のちょっと意外な(?)一面も知ることが出来るライブ盤。ブルースが好きなら必聴です。
評価:★★★★★
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