やはりオザケンは最高!
Title:我ら、時
Musician:小沢健二
先日ネット上で、「アラフォーが歌って若い世代が引いてしまうミュージシャン」があり、その1位に小沢健二が選ばれており、ショックを受けました。でも、確かに冷静に考えればその理由もわからないでもありません。オザケンは紅白に出場するなどお茶の間レベルでの人気を獲得しながら、一方「音楽ファン」の評価も非常に高いミュージシャン。しかしその反面、90年代後半以降その活動は散発的となり、おそらく熱心なファン以外にとってはほとんど名前を聞かなくなってしまいました。
多分、カラオケでオザケンを歌って、若い人に「知らない」と言われた場合の反応はこうなんでしょうね。「え?あの有名なオザケンを知らないの?」「AKBなんか聴くより、オザケンみたいなすぐれた音楽を聴いてみなよ」・・・・こういう反応が若い世代にうざがられるのでしょう。
ただ事実として今なお一部で熱狂的な支持を得ているのは間違いなく、先日も最終回寸前の「笑っていいとも」に出演して話題となったり、逆の側面としては倖田來未が「ラブリー」をカバーしてネット上で炎上したり、大ヒットしたアルバム「LIFE」から今年で20年(!)たつにも拘わらず、多くの信者が彼の本格的な復活を待ちわびています。
今回のアルバムもそんなファンを熱狂させた2010年に久々に行われた全国ライブツアーの模様を収録したライブアルバム。もともとは2012年に行われたライブ会場限定でリリースされた後、ブックレット付15,000円(!)というお値段でリリースされた作品集の、CD部分のみをリリースしたもの。比較的ファン向け要素の強いライブアルバムながらもチャート20位を記録し、熱心なファンがいまだに多く存在していることを再認識させられました。
そんなライブアルバムですが、最初聴いた段階ではまず戸惑いを感じてしまいます。まずなによりも王子様のイメージのオザケンの声が野太くなっていてあきらかにおじさんになっていた点に(笑)。そして、楽曲がいきなり中断してはじまるモノローグに。特にモノローグは、MCの一種だかポエトリーリーディングだかそれとも彼の「演説」なのか最初わからずにかなり戸惑ってしまいました。
しかし、アルバムを聴き進めるにしたがってすっかり小沢健二というミュージシャンのすばらしさにはまってしまいました。このライブ盤、オザケンのヒット曲代表曲が惜しげもなく収録されています。
まず魅力的なのは、これでもかというほどフックを聴かせたポップな曲の数々。「ラブリー」や「痛快ウキウキ通り」あたりがその代表例でしょう。一度聴いたら忘れられないようなインパクトのあるサビに、楽曲全体を流れる幸福感。聴いているだけで楽しくワクワクしてきて、ポップスの醍醐味を感じられます。
もうひとつ大きな魅力となっているのが決して派手さはないものの美しいポップなメロディーラインをしっかりと聴かせる楽曲たち。個人的には生涯の名曲ベスト10に入ってきそうな「ぼくらが旅に出る理由」などがそうでしょう。決してワクワクするようなサビがあるわけではないのですが、楽曲全体を通じて流れるように展開するメロディー構成の妙に、彼のメロディーメイカーとしての実力を感じることが出来ます。
今回のライブ盤では「シッカショ節」「いちごが染まる」「時間軸を曲げて」という3曲の新曲も収録されています。この中でも「シッカショ節」では和の民謡風なメロに挑戦しており、いままでのオザケンのイメージと大きく異なる部分がおもしろい感じ。他の2曲も派手さはないものの、メロディーセンスの良さはいまなお健在に感じられます。
途中に挟まれるモノクロームは、どちらかというとブログとかにアップされそうなちょっとした「評論」みたいな感じで、彼なりの視点がおもしろさを感じます。安全に必要以上に気を遣う日本人が、自転車に乗ると途端にアジア人の血が騒ぐのか、安全を無視したような無茶な運転をするという指摘はおもしろいなぁと感じつつ、無茶な自転車の運転に寛容な日本との対比として「歩道を走る行為や自転車の飲酒運転などはアメリカではすべて違法だ」と言っていますが、ごめん、それらの行為は日本でも列記とした道交法違反だよ、オザケン!
そんな訳で、久しぶりに小沢健二の曲を聴いたのですが、やはり彼の魅力を再認識してしまいました。20代や10代の若い方に引かれても構いません。オザケン最高!!彼のことを知らない方は、是非ともチェックしてみてください!!・・・もっとも、このアルバムは途中のモノローグといい、やはりちょっとファンズアイテム的な側面は否めないので、最初の1枚としてはお勧めしがたいのですが。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
ラブストーリー/back number
このアルバムではチャート2位を記録。着実に人気を伸ばしている3ピースロックバンドの新作。マイナーコード主体のメロディアスで切ないメロディーラインと、それにマッチしたような青春の甘酸っぱい雰囲気の歌詞が大きな魅力。ただ一方で、メロディーを聴かせるバンドなのですが、美メロというにはメロディーの構成が特におもしろいものではなく「雰囲気」で聴かせているような部分も。とはいうものの、アルバム毎に確実に成長している感じですし、シングルに関しては「名曲」とも言えるような曲もチラホラ。そういう意味で、今後が楽しみといった感じのバンドです。
評価:★★★★
FUTURE IS NOW/m-flo
m-floの新作は、今回もEDMを大幅に取り入れたナンバーなのですが・・・・・・ごめん、正直つまんないや(苦笑)。正直なところ、「いまさらEDM?」といったイメージも。m-floといえば、ヒットチャートの半歩先を進む音楽をポップにまとめあげるところが魅力だったりしたのですが、EDMといえばすでにヒットチャートの主流。いまさら彼らが取り上げてもあまりおもしろさも感じませんし、EDMならEDMでも、m-floらしい新鮮さは感じられませんでした。
[Champagne]あらため[Alexandros]のボーカル川上洋平や、驚きの浜崎あゆみなどボーカルは相変わらず豪華で、特にdaokoのウィスパーボイスはなかなか良く、m-floらしいポップなナンバーもちらほらあり、良曲も少なくはなかったのですが、お約束のインターリュードの寸劇もなく、コンセプトもいまひとつ。前作に引き続いての凡作なのが気にかかります。うーん、この程度のミュージシャンじゃなかったはずなのですが・・・。
評価:★★★
m-flo 過去の作品
electriCOLOR -COMPLETE REMIX-
Award SuperNova-Loves Best-
m-flo inside-WORKS BEST III-
MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-
m-flo inside-WORKS BEST IV-
SQUARE ONE
m-flo DJ MIX"BON ENKAI"
NEVEN
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コメント
m-floはゆういちさんにとって微妙だった前作「ネイブン」までは良かったんですけど今回はもういいやって感じです
僕もm-floの新作についてレビューするかもしれませんが今作は曲調がワンパターンすぎて駄目
どんだけ4つ打ち特有の展開が出てきたことか・・・
CAPUSELが同じEDMでも全く飽きさせないように工夫しているのに対してこっちは・・・
もう原点回帰でLISAを復帰させてほしいです
投稿: softman | 2014年5月18日 (日) 00時16分
>softmanさん
そうなんですよね。今回の作品、かなりワンパターンで全然おもしろみがないんですよね。m-floって、もっとユニークな作品をつくっているユニットだったと思うんですけど・・・確かに、僕もLISA復帰、希望です。
投稿: ゆういち | 2014年5月29日 (木) 01時03分