衰退の2000年代
Title:情熱の2000'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
エピックレコード35周年を記念して配信限定でリリースされたコンピレーションアルバムの第3弾。タイトル通り、2000年代にエピックレコードからリリースされた楽曲を収録されています。
3作を比べると、この2000年代のコンピレーションには少々厳しいものを感じます。エピックの曲たちが時代の先端を行き、あらたな潮流を感じられた80年代、それがヒットシーンの王道となり、時代の中心を行く勢いを感じられた90年代と比べると2000年代の楽曲は、過去の栄光を引きずり、ひとつの場所に停滞してしまっている、そんな姿を感じられます。
もちろん、このコンピに収録している楽曲にも新たな一歩を踏み出そうとする曲は少なくありません。例えばRIZE「Why I'm me」のようなミクスチャーロックや韻シスト「Hereee we go」のようなHIP HOPなどの新たなジャンル、あるいは元ちとせ「ワダツミの木」のような奄美民謡のような洋楽志向だった80年代90年代とは異なる作品も見られます。
ただ一方でそれ以上に気になったのは、90年代の縮小再生産のような作品群。Aqua TimezやSCANDALなどの楽曲からは新しさを感じませんし、いきものがかりも確かにいい曲は書いているものの、真新しいか、といわれれば結局90年代のJ-POPを引きずっているにすぎません。
でもこの傾向って、決してエピックレコードに限った話ではなく、J-POPというジャンル全体を通じての話のように感じます。いまだに日本のポップスは90年代の縮小再生産のようなポップソングが次々と生み出され、2000年代に入ってからシーンをガラッと変えるような新たな楽曲は生まれていません。ヒットシーンはアイドルやアニソン、あるいは初音ミクのような楽曲に勢いはありますが、それはいわば歌い手のカテゴリーやあるいはタイアップのカテゴリーの話であって、アイドルソングやアニソンも結局は90年代以前の延長に過ぎない曲がほとんどです。
なんか、日本のポピュラーミュージック全体の衰退が、このコンピを通じて伝わってきてしまうようなそんな作品になっていました。
もっとも、とはいうもののコンピ全体に関して、決してお勧めできない曲がメインという訳ではありません。むしろ1曲1曲を考えると、名曲も少なくありません。歌詞のユーモラスさとパンキッシュなサウンドが耳に残るセンチメンタル・バスの「マニアック問題」や、切ないボーカルが印象的なCrystal Kay「Boyfriend-partⅡ-」など文句なしの名曲も数多く、そういう意味では、純粋にコンピ盤としてはお勧めできる作品だと思います。2000年代に懐かしさを感じる方も楽しめそうなコンピ盤です。
評価:★★★★
黄金の80'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
青春の90'sベストヒッツ35曲!~Epic35~
ほかに聴いたアルバム
Billboard Live 2013/柴田淳
昨年11月、ビルボードでのライブを行った柴田淳の、ライブの模様を収録したライブアルバム。ピアノを中心にアコースティックでよりシンプルになった楽曲に、柴田淳のボーカルがピッタリとマッチ。なにより哀愁たっぷりのメロディーがいい意味で歌謡曲的で心にしみます。ジャジーな要素に洋風を感じる一方、メロディーは実に日本的でこのバランスがまた魅力的に仕上がっていました。
評価:★★★★★
柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
クリープハイプ名作選/クリープハイプ
ミュージシャンに無断でリリースされたとして、ミュージシャン本人たちが公式サイトで異議を唱え、話題となったベスト盤。まあこの手のベストは昔からB'zやドリカム、スピッツ、宇多田ヒカルレベルの大物ミュージシャンですら、同じケースがあるだけに特段珍しいことではありません。ただ、このシングルジャケットを並べただけというどうしようもなくカッコ悪いジャケットはもうちょっとなんとかならなかったのでしょうか?
ただ、そういう思惑付のベスト盤ですが、内容の方は名曲揃い。ボーカル尾崎世界観のハイトーンなボイスが中性的な雰囲気を出しており、ちょっとエロチックな男女模様や女性の心境描写などは、くすんだ雰囲気もあり、どこか日本文学的な雰囲気すら感じられます。メロディーはいたって普通のギターロックなのですが、歌詞の描写はどこか歌謡曲的。この独特な個性が彼らの大きな魅力だと、あらためて感じることが出来たアルバムでした。
評価:★★★★★
クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
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