ソロアルバムらしいソロアルバム
Title:EVERYDAY ROBOTS
Musician:DAMON ALBARN
ご存じblurのボーカリストでGorillazとしても活動しているデーモン・アルバーン。blurは先日の日本公演を最後に活動を休止させましたし、Gorillazの活動も止まったままですが、そんな状況の中、オリジナルアルバムでは初となる本人名義のアルバムがリリースされました。
そのアルバムなのですが、まず聴いてみて、非常にソロアルバムらしいソロアルバムといった印象を受けました。彼ひとりが佇んだジャケット写真からして、そのものズバリ「ソロアルバム」なのですが、アルバムの内容も、まず全編的に内省的な歌詞がソロアルバムらしさを感じます。
それ以上にソロアルバムらしいのは、楽曲それ自体。基本的にピアノやアコギなどアコースティックなサウンドを主軸とした楽曲になっている点もまさにソロならでは、といった感じなのですが、それ以上に、いかにリスナーに聴かせるか、というよりも、まずは自分の演りたい曲を演る、というアルバム全体を貫かれているスタイルにソロアルバムらしさを感じました。
アルバム全体を流れるのはメランコリックな美しいメロディーライン。前半は、静かなサウンドの中にちょっと不条理的な機械音みたいな音が流れています。まるで「EVERYDAY ROBOTS」というアルバムタイトルを象徴しているようでした。
しかし中盤から後半にかけては静かなピアノとメロディーラインが幻想的な雰囲気を醸し出す曲がメインとなっています。個人的にはちょっとAntony & the Johnsonsを思い出すような感じ。bon iverといい最近、このタイプのフォーキーでメランコリックな美メロを奏でるシンガーが少なくないため、デーモンもこの路線を狙ったのでしょうか?
これらの楽曲、正直地味でインパクトも薄め。そういう意味でも「ソロアルバムらしい」と言えるかもしれません。デーモン・アルバーンらしい個性が出せているか、という意味でも少々疑問。まさに演りたいことを演るだけ、そんな印象を受けました。それでも、ちゃんとメロディーラインはそれなりに聴かせてくるあたり、彼のメロディーメイカーとしての実力はしっかり感じられるのですが。
そんな訳で、まさにソロアルバムらしいソロアルバムで、blurやGollirazのアルバムをコンスタントにリリースされる中で発売されるのならば、「なるほど、こういうスタイルもおもしろいね」と感じるアルバムかもしれません。でも、blurやGollirazの活動がストップしている中、メインとなる活動がこれだと・・・それなりにいいアルバムなのですが、ちょっと寂しさも感じてしまいます。
今回のアルバムのタイトルナンバー「EVERYDAY ROBOTS」の中にこんなフレーズがあります。
「They didin't know where they was going
but they knew where they was wasn't it...」
(訳 どこへ行こうとしているかはわからない
けれど今いる場所はそこではない・・・)
(「Everyday Robots」より Written by Damon Albarn 訳詞 染谷和美)
ひょっとしたら今の彼の立ち位置はこの歌詞の通りなのかもしれません。今いる場所はここではなく、どこかへ行こうとしている、けれどもどこへ行こうとしているのかはわからない・・・。ちょっとこれからのデーモン・アルバーンがどのような活動を続けていくのか、気になってしまったソロアルバムでした。
評価:★★★★
DAMON ALBARN 過去の作品
DR.DEE
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