「天才」シンガーソングライター初のベスト
Title:tamuLAPIN
Musician:たむらぱん
デビュー以来、その独特な展開を見せながらもポップでキュートにまとめあげる音楽性が高い評価を受け、一部では「天才」の呼び声もある女性シンガーソングライターたむらぱん。メジャーデビュー作「ブタベスト」から早6年。既にメジャーからアルバム6枚をリリースしている彼女ですが、ここに来て、初のベスト盤リリースとなりました。
まあ、「天才」という呼び声をあげているのは当サイトもなのですが(笑)。「ブタベスト」も個人的に気に入った傑作だったのですが、なによりも彼女にはまったのはメジャー2枚目の「ノウニウノウン」から。特にこのアルバムにも収録されており、このベスト盤にも収録されている「ちゃりんこ」には、その独特の楽曲展開、ちょっと切ないメロと歌詞にすっかり魅了されてしまいました。
今回のベスト盤は2枚組。その2枚のCDのうちDISC1にはアップテンポで賑やか、ハイテンションな曲が収録されており、一方DISC2はメロディー主体。メロディアスに聴かせるようなナンバーがメインになっています。
さて今回のベスト盤であらためてたむらぱんの楽曲を聴きなおすと、新たに気づく彼女の魅力と一方ではちょっと気になる点が浮かび上がってきました。
ちょっと気になる点を感じたのはDISC1。アップテンポなナンバーに顕著だったのですが、少々楽曲にいろいろと詰め込みすぎな感じが気になりました。彼女の楽曲、ただでさえその楽曲の展開がサビの連続のように派手な部分があるだけに、それに加えてアレンジまで派手にしてしまうとちょっと聴いていて疲れてきてしまう部分がありました。おそらくアルバム単位では、アルバムの中にバラけて収録されているのでさほど気にならなかったのでしょうが、こうやってベスト盤としてまとめて聴くと、正直、ちょっと聴くのに体力がいるな、と感じてしまいました。
一方で新たに気づいた彼女の魅力というのはいわばこれと対照的。いままでアルバムでは凝った構成の楽曲にばかり目が行ってしまっていましたが、実は彼女、シンプルなポップもとても魅力的な曲を書いているんだ、ということを再認識しました。その点を特に感じられるのがDISC2。もちろん私がはまった「ちゃりんこ」のような凝った展開でポップという彼女らしい作品もあるのですが、一方では複雑ではない楽曲に関してもちゃんと魅力的なメロディーラインを書いており、決して彼女が奇抜な楽曲で話題になった訳ではなく、シンガーソングライターとして根っこの部分もしっかりしたシンガーなんだ、ということを再確認できました。
そんなこってり風味のベスト盤2枚組というボリュームなのですが、それでもやはり魅力的な楽曲が多いだけに飽きることなく最後まで楽しめることが出来るアルバムだったと思います。もちろん、彼女のことを知らない人が最初の1枚として楽しむにも十分な作品だったと思います。
彼女の活動も前作「love and pain」がシンプルなポップ路線にシフトしたのですが、ある意味、このベスト盤でいままでの活動に一区切りといった感じなのでしょうか。ともかく、まだまだ彼女の活躍からは目が離せなさそうです。
評価:★★★★★
たむらぱん 過去の作品
ブタベスト
ノウニウノウン
ナクナイ
mitaina
wordwide
love and pain
ほかに聴いたアルバム
Zeitraum/竹村延和
長らく活動を休止していたエレクトロニカミュージシャンの約12年ぶりとなる新作。ピアノやホーン、ストリングスなどが静かな空間に不規則に鳴り響き、その中に時々ノイズが鳴り響く作品。どこか幻想的で、かつチャイルディッシュな雰囲気を感じます。ただ、正直サウンドに目新しさはありませんし、特にこれといっておもしろさもありません。長い活動休止の後に出たアルバムがこれでは・・・。ある意味手慣らし運転的な作品で、次が本気といった感じなのでしょうか。ちょっと残念に感じるアルバムでした。
評価:★★★
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