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2014年4月 8日 (火)

話題のラップクルーの新作

Title:Page 2:Mind Over Matter
Musician:SIMI LAB

前作「Page1:ANATOMY OF INSANE」が大きな話題となり、一気に注目をあつめた神奈川は相模原を中心に活動するHIP HOPクルー、SIMI LABの約2年半ぶりとなるニューアルバム。前作の評判は聴いていたもののいままで聴けず、これがSIMI LABではじめて聴くアルバムになるのですが、これがまたメチャクチャカッコいい!!まず聴いてゾクゾクっとくるようなアルバムで、期待以上の作品でした。

まず強く印象に残ったのが、まずそのトラック。音数を絞ったシンプルなトラックがメインで、ビートを強調したトラックが、ある種のスタイリッシュさを感じます。リズムという点では、複雑なリズムラインの「Karma」「Kommunicator」あたりが印象的。ほかにも楽曲枚に様々な要素を入れつつ、バラエティー富んだ作風からは耳が離せません。

菊地成孔をサックスで迎えた「Dawn」は、そのサックスのフリーキーなサウンドが狂気的なサウンドを奏でていますし、「Come To The Throne」でもフリージャズ風なサウンドを構築しています。また、「Worth Life」ではスペーシーに、「Player」ではどこかユーモラスに、エレクトロサウンドもうまく用いています。ロック的な要素はトラックからは薄いのですが、「Oasis」からはちょっとブルージーな雰囲気も感じられます。

そんなトラックだけでも非常に耳を惹きつけられるのですが、もちろん、メインとなるラップもカッコいい!個人的に好みな、日本語を一言一言丁寧に綴る、というタイプのラップではないものの、しっかりとリズミカルに言葉を刻んでおり、なによりもメンバー全員のマイクリレーが決まっていました。マイクリレーで一番印象的だったのは「Mind Over Matter」かな。なによりも特徴的だったのが、メンバーの一人に女性ラッパーMARIAが参加している点。ちょっと泥臭い男性ラッパーの中にひとり女性ラッパーが混じることにより、楽曲にインパクトが加わります。「Dawn」のようなメロウなボーカルを聴かせてくれるナンバーもあったりして、彼女の存在がこのクルーの中でも大きいように感じました。

またリリックもアルバムで強い印象を与えてくれます。このSIMI LABの特徴として、メンバーの多くが外国人とのハーフということ。日本の中でいわゆるマイノリティーな彼らが、その出自を歌った「Roots」は特に印象的。前半は

「もう搾取される運命ってのがこの国の仕掛け」
(「Dawn」より 作詞 MARIA,DyyPRIDE,OMSB,USOWA)

「荒野と化した極東の都市東京」
(「Oasis」より 作詞 OMSB,DyyPRIDE,MARIA,JUMA)

のように、現実をどこか醒めた目で厳しく切り取っているような描写が多いのですが、後半になると日常を描いた「Worth Life」や、「Roots」のように個人的な描写、身の回りの描写が増え、最後「Come To The Throne」「We Just」ではSIMI LABとして前向きな方向性を感じる曲でアルバムは締めくくられます。

地方都市でマイノリティーで、というと、ちょっと前なら単純にアンダーグラウンド、ギャングスターの方向に向かいそうな印象もあるのですが、彼らのリリックからは、その手の「やばさ」はあまり感じません。そういう意味でも新しい時代のユニットと言えるのかもしれません。

最初から最後まで聴きどころたくさんのアルバムで、まさに鳥肌モノという表現がピッタリくるような作品だったと思います。間違いなく、今年のベスト盤候補の1枚。話題のユニットなだけに、ラップ好きはもちろん、そうでなくても要チェックな重要盤です。

評価:★★★★★

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