次のアルバムへの「つなぎ」?
Title:パ・ド・プレ
Musician:Cocco
2006年の活動再開後、マイペースな活動が続くCocco。このアルバムもベスト盤を挟んでオリジナルとしては3年7か月ぶり、かつ、それだけ間が空いたにも関わらず、ミニアルバムでのリリースとなりました。
ただ、これだけリリース間隔があいたのですが、そこにはスランプ、産みの苦しみ、というものは感じません。もともと、Coccoというミュージシャンは、どうしても音楽を演りたい、というよりも、自分自身を表現するのに音楽しかない、というスタンスを感じるミュージシャンでした。それが一種自分の身を削るような音楽表現にもつながっていました。
しかしここ最近、彼女は映画や舞台といった場でも活躍をはじめました。それは彼女自身、音楽以外でも自分を表現する場所をみつけた、ということでしょう。その結果、音楽は、自らを表現する唯一の場所、よりも、純粋に楽しむものに変わったような印象を受けます。だからこそ、マイペースに4年近いインターバルを経てのアルバムでも、スランプや産みの苦しみ、という表現は適切ではないように思いました。
また、音楽活動再開後の彼女の曲は以前の曲に比べて優しい視点からの曲が増えていますが、このアルバムもまさにそんな彼女の優しいまなざしが感じられます。例えば「ありとあらゆる力の限り」では
「見届ける 最後まで
遠くまで 遥かまで
どうか 生きて」
(「ありとあらゆる力の限り」より 作詞 Cocco)
と歌っていますし、「キラ星」では
「逃げ道も道だって
さあ 生きてみろ
ここまでおいで」
(「キラ星」より 作詞 Cocco)
と優しい視点の歌詞が続きます。今回の曲は失恋、あるいはなにか大切なものを失ったようなイメージの曲が多いのですが、そのうえで彼女の歌声はリスナーの心を優しく包み込むように響きます。最後を締めるのが子守唄「ゆりかごのうた」のカバーというのも、そんな彼女の心のうちからくる選曲なのでしょう。
また、それに伴いメロディーやサウンドもとても優しい音に仕上がっていました。今回の作品は基本的にシンプルでアコースティックなアレンジがメイン。「キラ星」は分厚いバンドサウンドのアレンジになっていましたが、それでもシンプルなメロディーラインを優しく聴かせる楽曲になっています。
活動再開後の作品は、以前に比べて「ガツン」と来るような曲がなかったり、ちょっとマンネリを感じるようなイメージがありました。確かに今回のアルバムでも、そういう「ガツン」と来るようなタイプの曲はありませんし、基本、いつも通りのCoccoです。
ただ、シンプルなメロディーとサウンド、そして優しい歌詞と歌声が見事にマッチしており、このアルバムからはマンネリさや、「ガツン」と来ないことによる物足りなさはありませんでした。個人的に、活動再開後の最高傑作かも。いい意味で肩の力も抜けたようにも思います。
今回のアルバムタイトルは、バレエ用語で「繋ぎ」とか「間」とかいう意味だそうです。そうだとしたら、このアルバムをつなぎとして、近いうちに新たな作品がリリースされるのか?来るべき新作が楽しみになってくるようなアルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Line The Wall/BO NINGEN
かなりユニークな名前のこのバンドは、ロンドン在住日本人4人組のバンドで、日本人オンリーながらも活動の拠点はイギリス。逆輸入という形で日本でも話題になっているバンドです。ただ、イギリスを活動拠点していながらも、楽曲は日本語詞。メロディーにもどこか日本的な哀愁を感じさせ、ひょっとしたらそこが逆にイギリスでも受けているのかもしれません。
楽曲は、ノイジーなギターが展開するサイケロック。時には比較的シンプルだったり、ハードロック風だったり、シューゲイザーっぽかったりと楽曲によって様々なスタイルに展開するのがおもしろかったりします。メロやサウンド含め、ちょっと不気味な雰囲気を醸し出しているのもユニーク。イギリスが活動拠点ということで、場合によってはイギリスでブレイクしちゃうのか?
評価:★★★★
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