偉大なるバンドへのトリビュート
昨年5月、bloodthirsty butchersの吉村秀樹が急逝という衝撃的なニュースが飛び込んできました。bloodthirsty buthcersといえば、数多くのロックバンドがリスペクトの対象としてあげるバンド。そのギタリスト兼ボーカリストの突然の訃報は、多くのミュージシャン、音楽ファンにとってあまりにもショッキングなニュースでした。
そんなbutchersがいかに多くのミュージシャンにリスペクトされていたかがわかるトリビュートアルバムがリリースされました。
Title:Yes,We Love butchers~Tribute to bloodthirsty butchers~Mumps
Title:Yes,We Love butchers~Tribute to bloodthirsty butchers~Abandoned Puppy
奈良美智のジャケットもインパクトある2枚のトリビュートアルバム。驚くことに、さらにあと2枚のトリビュートアルバムリリースが予定されているあたり、彼らがいかに多くのミュージシャンのリスペクトされていたかがわかるかと思います。
butchersというと、実に個性的、独特なバンドサウンドで奏でる分厚いサウンドが耳を惹きますが、その一方、根本に流れているのは意外とメロディアスなメロディーライン(まあ、これはbutchersのアルバムを聴けばわかることなのですが)。今回のトリビュートでは、各自自分たちのバンドのスタイルでbutchersの曲をカバーした結果、彼らのポピュラリティーな側面がより表に出た仕上がりになっているように感じました。
そういうポップでしっかりしたメロディーが根本にあるため、基本的にはどのバンドも無難にはカバーしているような印象を受けました。その上で各自、いかに個性を加えていくのか、そこでバンドによって良し悪しの差が出たように感じました。
「Mumps」に関しては、怒髪天の「I'm on fire」では彼ららしいファンクやスカの要素を加えたアレンジがおもしろく、THE NOVEMBERSの「11月」も、幻想的な雰囲気のインストになっており、butchersとはまた異なった世界を繰り広げているのがおもしろく感じました。また向井秀徳の「プールサイド」もギター1本でキッチリ聴かせているのはさすがでしょう。ただ、思ったより向井秀徳としての個性を前面に出していないのは、butchersへの配慮でしょうか?
一方で、「Mumps」に関してはより良し悪しがバンドによってクッキリ出ていたような。MONOBRIGHT「サラバ世界君主」あたりは普通のギターロックになってしまっていてちょっと残念だったように感じます。
この2枚では、どちらかというと「Abandoned Puppy」の方がおもしろかったように感じます。特にこちらはバンドサウンドで迫力を感じさせる曲が多く、いわばbutchersと真っ向勝負することによって、リスペクトをあらわしているように感じました。
ACIDMANの「襟がゆれてる」やBRAHMAN「散文とブルース」などはまさにbutchersと真っ向勝負に挑んだような迫力あるサウンドで、どうだ!と言わんばかりのバンドサウンドを聴かせてくれるカッコいいナンバー。ちょっと個性的なカバーといえば八田ケンヂの「9月」はアコギでフォーキーにアレンジしており、こちらはbutchersのポップな側面を押し出したカバーになっていました。
まさにどのバンドからもbutchersへの愛情がヒシヒシ伝わってくるカバー。bloodthirsty butchersというバンドが、いかに多くのミュージシャンから愛された偉大なバンドだということが実感できます。どちらも、butchersファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンにもお勧めの作品です。
評価:
「Mumps」★★★★
「Abandoned Puppy」★★★★★
ほかに聴いたアルバム
BEST(2003-2013)/オレスカバンド
タイトル通り、昨年、結成10周年を迎えた女の子6人組スカバンドの初となるベスト盤。結成10年のベテランバンドとはいえ、結成当初、全員中学生だったそうで、それゆえ、まだメンバー全員20代という若いバンド。軽快で若々しいポップ色の強い楽曲からロックンロール色の強い曲、スカのリズムを強調した曲やレゲエっぽいサマーチューンなど、楽曲にはバラエティーを持たせつつ、とても楽しませてくれるポップチューンがメイン。なによりホーンセッションの明るい爽やかなサウンドが、女の子らしい爽快感とマッチしています。とはいえ、バラエティー豊かだった前半に対して、後半、ちょっと似たようなタイプの曲が並んでいたのはちょっとマイナス。とはいえ、とても楽しい1枚でした。
評価:★★★★
オレスカバンド 過去の作品
What a Wonderful World! vol.1
What a Wonderful World! vol.2
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