愛情あふれるカバーアルバム
Title:GOING BACK HOME
Musician:THE BAWDIES
最近、よく洋楽が聴かれなくなった、という話を聴きます。確かに最近、以前ほどは洋楽の大ヒットアルバムというのが少なくなりましたし、ミュージックシーンにおいても洋楽からの影響をあまり感じないようなミュージシャンも増えてきました。もちろんそれは邦楽のクオリティーがあがり、洋楽との差が少なくなってきたというポジティブな理由もあるのでしょうが、一方では全体的に音楽シーンが内向きになっている、ネガティブな風潮も感じます。
ただ、そんな状況の中でおもしろいのが、海外のロックンロールやブルース、ソウルなどの影響をダイレクトに受けているTHE BAWDIESが人気を博している点。彼らは歌詞も英語であって、いわば歌詞の側面から日本のリスナーに親近感、という感じでもありません。THE BAWDIESがこれだけ売れているという事実からすると、洋楽が売れない、というのは売ろうとしないレコード会社側の怠慢では??
まあそれはともかく。今回リリースされたのは彼らの結成10周年を迎えて制作された初となるカバーアルバム。彼らに強い影響を与えた主にソウルやR&B、ブルースの楽曲をカバーしています。
彼ら曰く、入門編として選曲されたアルバムということで、確かにRay Charles「What'd I Say」やSam&Dave「Soul Man」(彼らのライブの始まりの音楽ですね!)など、スタンダードナンバーがメインの選曲になっています。正直、超有名って感じかなぁ、というくらいのちょっと渋い選曲もあるのですが、確かにこの曲をきっかけにさかのぼって、ソウルやR&Bの世界に入り込める、そんなアルバムだったと思います。
基本的に彼らがリスペクトするミュージシャンたちの曲のカバーだけあって、原曲を大きく変化させたような曲はありません。例えばHowlin' Wolfの「Spoonful」では、あのしゃがれ声の迫力あるボーカルに、必死に追いつこうとしているROYのボーカルがとても好感が持てるカバーになっています。
ただ、その一方で原曲に従いつつも、それなりにTHE BAWDIESなりの解釈を加えつつ、ちゃんとTHE BAWDIESというバンドが、2014年という今の時代に奏でるサウンドにつくりあげています。音圧が増えたという点もあるのですが、ガレージバンドとしてのフィルターを通しているような印象を受けました。そういう意味では、単なる一方的な敬愛だけではなく、THE BAWDIESとしての主張と、今のバンドの自信も感じられるカバーだと思います。
THE BAWDIESのファンなら、これを機に原曲もあさってほしいなぁ、という感じもします。特に、邦楽しか聴かないTHE BAWDIESのファンにとっては、洋楽への最適なガイドブックにもなるのではないでしょうか?まあ、時代性もあるので、いきなり原曲を聴いてもピンと来ないかもしれませんが・・・そういう方は、今話題のTHE STRYPESとかいかが?
そんな訳で、ソウルやR&B、ブルースに深い愛情を抱く彼らが、バンドとしての自信を得た結成10年たった今だからこそリリースできたようなカバーアルバムだったと思います。THE BAWDIESの先人に対する愛情と、そしてバンドとしての実力を実感できたアルバムでした。
評価:★★★★★
THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
ほかに聴いたアルバム
どこまでいくの実況録音145分/ハナレグミ,So many tears
スカパラ茂木欣一、加藤隆志と、FISHMANSやPolarisで活躍する柏原譲からなるロックバンド、So many tearsとハナレグミとのコラボライブの模様を収録したライブ盤。ゲストとしてスカパラの沖祐市も加えた豪華なラインナップで、本人たちの曲のみならず、スカパラやSUPER BUTTER DOG、FISHMANSのカバーに、さらにはマイケル・ジャクソンや杏里のカバーまで収録。みっちり2枚組145分のボリューミーな内容になっています。
実力的には折り紙付きなメンバーで、会場の盛り上がりはライブ盤を通じても伝わってきます・・・・・・が、これだけのメンバーのライブとしては、正直、聴いていてちょっと物足りなさを感じました。おそらく、特にSUPER BUTTER DOGの楽曲が、ロック寄り、それもハードロックっぽくアレンジされすぎていて、ファンキーさが薄くなった印象があるのが大きいのかなぁ。そのため、全体的にちょっとアレンジがのべっとした雰囲気になったように思います。生で見ればもっと楽しかったのかもしれませんが・・・。もちろん、各曲は名曲揃いで、決して悪いアルバムではないと思いますし、ファンなら要チェックの1枚なのは間違いないのですが。
評価:★★★
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