あらたなチャレンジはしつつも・・・。
Title:新世界
Musician:ゆず
前作「LAND」からわずか9か月、ゆずのニューアルバムが早くもリリースされました。今回のアルバムのテーマは「懐か新しい」だそうで、そのコンセプトの通り、彼らの新たな挑戦と、懐かしさを感じるナンバーが同居したアルバムになっています。
「新しい挑戦」として一番特徴的だったのは、新進気鋭のミュージシャンたちが参加しているところ。前作「LAND」でも参加した前山田健一やでんぱ組Incへの楽曲提供でも話題となった玉屋2060%などが編曲や作曲に参加しています。
彼らが参加してバリエーションが増えたのが中盤。「ユートピア」のような、お祭り囃子も入った昭和レトロな雰囲気の楽曲や、比較的へヴィーなギターロックを聴かせてくれる「レトロフューチャー」などといった様々なタイプの曲が展開しています。そんな中でも「幸せの定義」はエレクトロサウンドをちょっと入れたものの、基本フォーキーなゆずらしい楽曲で、まさにこのアルバムのコンセプトにピッタリの楽曲と言えるかもしれません。
一方で「懐かし」さを感じさせるのが「所沢」や「四間道路」。特に「所沢」は路上ライブ時代にすでに歌われていた曲だそうで、ゆずらしいシンプルでフォーキーなメロディー、温かみのあり物語性ある歌詞などの内容がとても印象的なナンバーになっています。
このバラエティー豊かな新たな挑戦という側面と、懐かしいフォーキーな側面が同じアルバムに同居する構成はとてもおもしろかったと思います。個人的に、前山田健一編曲はゴチャゴチャしすぎているように感じてあまり好きではこともあって、やはりシンプルでフォーキーな作風の曲の方がゆずには合っていると思うのですが、それでもそこにとどまらない彼らの挑戦を感じることが出来ますし、そこから彼らの新たな可能性も感じます。
ただ、その一方でこのアルバム、ひとつかなり懸念する点がありました。それはシングル曲。「ヒカレ」「雨のち晴レルヤ」あたりが顕著なのですが、ストリングスをつかって、必要以上にスケール感を出そうとしているシングルがここ最近目立っています。おそらく「栄光の架橋」のヒット以降の傾向なのかもしれません。確かに、以前はアコースティックなサウンドと地続きなこれらの曲もおもしろかったのですが、これだけ次々とリリースされると、正直かなり飽きてしまいました。
アルバム全体としては「懐か新しい」というコンセプトはおもしろかったですし、それに沿った試みもそれなりにうまくいっているようにも感じます。ただ一方、ストリングスをつかってスケール感を表現する安直な作品がちょっと続きすぎており、その点、ちょっと聴いていてダレてしまった部分もありました。そういう意味で、とても惜しいアルバムであり、ゆずのこれからが楽しみになると同時に、不安も感じさせる作品のように思います。個人的にはシンプルなアコースティックな作風の方が、彼らの持ち味は生きると思うのですが・・・。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2014年」カテゴリの記事
- まだまだ「実」だけど(2014.12.29)
- ロック入門...的な(2014.12.28)
- 踊れるロック(2014.12.27)
- レトロなガレージサウンドが心地よい(2014.12.26)
- 社会派三部作完結編(2014.12.23)
コメント