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2014年4月 6日 (日)

ソウル・フラワー・ユニオンの歴史

Title:SOUL FLOWER BOX 1993-1999
Musician:ソウル・フラワー・ユニオン

Soulflower

リリースはもう2年半も前でいまさらながら感もあるのですが・・・ベスト盤のリリースや、評伝の発売で個人的にソウル・フラワー熱が高まり一気に買ってしまいました(笑)。ソウル・フラワー・ユニオンのCDボックスセット。キューン・ソニー時代にリリースされたソウル・フラワー・ユニオンのアルバム4枚にソウルシャリスト・エスケイプ名義のアルバムを紙ジャケ化して収録。さらにはレア音源を集めた「レアリティーズ 1995~2005」を加えた6枚組のボックスセットです。

ソウル・フラワーのアルバムは、初期の作品でまだ聴いていないものや、CDを持っていないアルバムもあったので、ちょうどいい機会ということもあり購入。ズシリと重いボックスに、解説や写真を収めたブックレットもついてきています。

アルバムのリリース順にあらためてソウル・フラワー・ユニオンのアルバムを聴いて、あらためてソウル・フラワー・ユニオンというバンドが、時代に応じて、どんどん「日本のロック」という独自の音楽性を確保していった過程がよくわかります。

どちらかというとメスカリン・ドライブの色合いが強いデビューアルバム「カムイ・イピリマ」に続く「ワタツミ・ヤマツミ」は初期の傑作。トラッド風味はこのころから健在で、いわゆる「エンヤトット」的な要素も見え隠れしつつも、まだまだ後のアルバムのような、和風なリズムを取り入れた要素は薄い感じ。ただ、名曲「レプン・カムイ」や、勢いのあるロックナンバー「リベラリストに踏絵を」は初期ならではの名曲。この段階でひとつの完成形に到達してしまったような印象すらあります。

それがさらに新たな一歩進み始めたのが、1995年の阪神淡路大震災と、そこでのモノノケ・サミットとしての活動を経た「エレクトロ・アジール・バップ」で、ここで彼らの音楽性に明らかな変化が。日本の昔からの民衆歌を取り込んだ、「エンヤトット」的な要素が一気に強くなります。

そしておそらくそんな日本の大衆音楽を自分たちのものとしたのが続く「ウィンズ・フェアグラウンド」。まさにソウル・フラワー・ユニオンの新たな到達点であり、彼らのキャリアにとってもっとも勢いのある時期のように思います。

このボックスセットには収録されていませんが、さらに推し進めて、日本の大衆音楽を取り込んだうえで、欧米のロックとは全くことなる「日本のロック」を完成させたのが続く「スクリューボール・コメディー」で、私が彼らのアルバムにはじめて触れたのもこのアルバム。その当時、すっかりはまったのですが、初期アルバムから聴きなおしても、おそらく彼らの最高傑作は、「ウィンズ・フェアグラウンド」か「スクリューボール・コメディー」と言えるのではないでしょうか。それだけこの時期の彼らの勢いはすさまじいものがあります。

そして、このボックスセットの目玉が「レアリティーズ」。様々なミュージシャンとのコラボ曲や、オムニバスアルバムに参加した曲などが収録されています。それだけに楽曲の種類もバラバラ。沖縄民謡から歌謡曲、フォークやトラッドなど多種多様。それにも拘わらず、様々なミュージシャンとのコラボの中でも、一本筋の通った、ソウル・フラワー・ユニオンらしさを感じます。アルバム全体としてチグハグさすら感じる曲調なのに、一方ではまとまりすら感じさせる、ちょっと不思議な雰囲気のアルバムでした。

Web通販限定で、15,000円というちょっとファン以外には手が出にくい商品ですが、ファンなら買い、といいたいけど、アルバム全部持っている方は、さすがに「レアリティーズ」のみ目当てでこのお値段はキツイかなぁ。未発表音源の「ラリラリ東京(Part 2)」も短いインスト曲で、過度な期待はできない作品ですし・・・。評価はそういう意味も込めて。ただ、内容自体はもちろん名曲揃い。7枚のアルバム、一気に聴きとおせます。まだまだ個人的なソウル・フラワー熱は続きそうです。

評価:★★★★

ソウル・フラワー・ユニオン 過去の作品
満月の夕~90's シングルズ
カンテ・ディアスポラ
アーリー・ソウル・フラワー・シングルズ(ニューエスト・モデル&メスカリン・ドライブ)
エグザイル・オン・メイン・ビーチ
キャンプ・バンゲア
キセキの渚
踊れ!踊らされる前に
ザ・ベスト・オブ・ソウル・フラワー・ユニオン 1993-2013


ほかに聴いたアルバム

濡れない音符/湯川潮音

約3年ぶりとなる湯川潮音のニューアルバム。アコギとピアノとストリングスをメインとしたアコースティックなサウンドで、ポップだけれどもちょっとファンタジックな雰囲気が魅力的。「笛吹きの少年」ではworld's end girlfriendがアレンジにも参加しています。もっとも基本的にはシンプルでメロディアス、彼女の澄んだ歌声を生かしたポップがメイン。ちょっとここ最新のアルバム、インパクトが薄いのが気になるのですが。

評価:★★★★

湯川潮音 過去の作品
灰色とわたし
Sweet Children O'Mine
クレシェンド

願いがかわるまでに/川本真琴

川本真琴名義としては3年ぶりとなるニューアルバムは5曲入りのミニアルバム。今風なリズムの「fish」「gradation」、80年代っぽい「That star in the vicinity of the moon」など、わずか5曲入りでもバリエーションが多く、最後の「FUNCTION」のようなソウルテイストが若干強いかな?一方、タイトルナンバー「願いがかわるまでに」はノスタルジックな雰囲気が漂うメロディアスな曲で、メロディーメイカーとしての実力も感じます。

ちょっと地味な雰囲気が強かった前作「音楽の世界へようこそ」と比べるとポピュラリティーは増した感がある一方、バラバラな作風で彼女の方向性もちょっとぼやけたような印象も。川本真琴の魅力は十分に感じられるのですが。

評価:★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001

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