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2014年4月17日 (木)

父の意志を受け継ぎつつも

Title:A Long Way To The Beginning
(邦題 ロング・ウェイ・トゥ・ザ・ビギニング~始まりへの長い道のり)
Musician:SEUN KUTI&EGYPT80

アフロビートの創始者としてその名を知られるFela Kuti。その末子にして、FelaのバンドEGYPT80を引き継いでいるSEUN KUTIの3枚目となるアルバムがリリースされました。前作「RISE」ではブライナン・イーノをプロデューサーとして迎えましたが、今回のアルバムでは新進気鋭のジャズピアノ/キーボード奏者として話題のロバート・グラスパーをプロデューサーとして迎えています。

基本的にファンキーなアフロビートと、ミニマルなサウンドとコール&レスポンスを繰り返し、昂揚感を煽るサウンドは前作と同様であり、かつ、Fela Kutiのアフロビートの根本の部分は、彼がきちんと引き継いでいるように感じます。以前、フジロックで素晴らしいステージを見せてくれましたが、今回のアルバムもライブでトリップできそうな、そんな風景が思い浮かぶ作品だと思います。

ただ、本作の特徴として、ロバート・グラスパーのプロデュースワークの影響でしょうか、以前の作品に比べて垢抜けた印象があります。というよりも、アフロ・ビートのサウンドに、様々な音楽の要素を加えてきました。

例えば「IMF」「African Smoke」ではラップを加えてきていますし、「Higher Consciousness」では、最初の入りがかなりジャジーな雰囲気で驚いた方もいるのではないでしょうか。「Ohun Aiye」では終始ラテンなリズムとサウンドが鳴り響いていて、アフロ・ビートとはちょっと異なる楽しいナンバーになっていますし、「Black Woman」では今風のR&Bを彷彿とさせるようなメロウな歌が流れたりしています。

ちょっとうがった見方をすると、こういうサウンドアプローチは、アフリカ音楽の西洋化という見方もあるようです。確かに気持ちはわからないことはないのですが、ただ、Fela Kutiから受け継がれたアフロ・ビートをただ奏でるわけでなく、西洋音楽、特にアメリカのポップミュージックとの出会いによって、あらたなサウンドを作り出そうという、Seun Kutiの意思もここからは感じられました。

もちろん、この方向性は一歩間違えると彼のアフロ・ビートが単なるイージー・リスニングとなる危険性もあります。しかし、SeunとEgypt80が奏でるビートは迫力と緊張感があふれ、そんな心配は杞憂のかなたへと捨て去っています。

また、彼の書く歌詞も強烈。特に本作では国内盤には対訳がついてきており、その歌詞の内容が私たちにも理解できるのですが、そんな中、「IMF」では、「IMF」=国際通貨基金を、「International Mother Fucker」と読み替えて、西洋圏の資本主義に対して強烈なメッセージを投げかけています。この歌詞は英語が理解できない私たちにとってもさすがにストレートに伝わってくる内容になってきました。

前作よりもいい意味で聴きやすく、メッセージ性もストレートで、個人的には前作よりも気に入った内容になっていました。フジロックのステージが非常に印象に残っている彼らだからこそ、また来日してこのアルバムをステージで見せてほしいなぁ。父の意思を受け継ぎつつ、新たな一歩を感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

SEUN KUTI&EGYPT80 過去の作品
FROM AFRICA WITH FURY:RISE

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