OKAMOTO'Sの挑戦
Title:Let It V
Musician:OKAMOTO'S
このアルバムの前にリリースされたシングルでOKAMOTO'Sはひとつ新しい挑戦を行っています。それが四つ打ち。このアルバムにも収録されている「JOY JOY JOY」、さらにその次のシングル「SEXY BODY」では、ライブで踊れる四つ打ちのリズムを取り入れたダンスナンバーになっています。
しかしファンからの反応は、公式サイトのインタビューによると、思ったより「変わった」という意見は少なく、むしろ「OKAMOTO'Sらしい」という声が多かったとか。結局、自分自身が振り切れないことに気がついた彼らは、四つ打ちで振り切れるわけではなく、「曲がよくてメロディーがよい」といういままでのスタンスでこのアルバムを作成したそうです。
ただ、この四つ打ちのシングルを聴いても「OKAMOTO'Sらしい」という感想が寄せられたというのは、とてもよくわかる感じがします。というのも基本的にいままでのOKAMOTO'Sも、ルーツ志向ながらもそれに振り切れることなく、様々なジャンルの音楽で楽しむことがひとつのスタンスだったから。そんな中に四つ打ちの楽曲があっても何ら不思議ではありません。
このアルバムでも、くるりの岸田繁プロデュースが話題となった「HAPPY BIRTHDAY」のようなロックンロール色が強い曲や、モータウンビートが軽快な「告白」のような、どちらかというとロックンロールのルーツ的な要素の曲もあるかと思えば、「Kill Dreams」はprimal screamあたりを彷彿とさせるようなロックナンバーですし、「Let's Go!Hurry Up!」では軽快なスカなリズムが楽しいパンキッシュなナンバー。さらに最後を飾る「虹」は、まさに本人曰く「大滝詠一とフィル・スペクターへのオマージュ」というまんまの曲。ひとつのジャンルにこだわるわけではなく、様々なジャンルの音楽に挑戦しています。
また、セルフタイトルの前作同様、ある種の「洋楽」っぽさへのこだわりすらいい意味であまり強く感じられず、J-POP的ともいえるほどポップな曲の連続。そういう意味では幅広い層にアピールできるアルバムだと思います。実際、話題性に反してなかなか伸び悩んでいたアルバムセールスも上向きになっており、本作では初のベスト20入りも果たしています。
そしてなによりメンバー本人が楽しそうに演奏していることが伝わってくるのも大きな特徴。そのため、聴いているこちらもなんだか楽しくなってくるようなアルバムになっていました。
前作でひとつ壁を乗り越えた感のあった彼らでしたが、前作が決して奇跡の1枚ではなく、ちゃんと彼らの実力に基づいたものであることを証明した傑作だったと思います。彼らの大ブレイクはそう遠い将来の出来事ではなさそうです。
評価:★★★★★
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コメント
ゆういち様
こんばんは
自分はズットズレテルズのファンク路線が好きだったので、イマイチOKAMOTO'Sにはハマれなかったのです。
しかし、ダンスへも色気を出しているのだとしたら期待が持てそうです。早速YOUTUBEで聴いてみます。
投稿: GAOHEWGII | 2014年4月 2日 (水) 23時21分
>GAOHEWGIIさん
OKAMOTO'Sはアルバムによって良し悪しがあったり曲によって良し悪しがあったりして、なかなか安定しない部分がありますが、最新アルバムは良かったですよ。徐々に成長もしている感じもします。機会があれば聴いてみてください~。
投稿: ゆういち | 2014年4月14日 (月) 00時34分