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2014年3月28日 (金)

10年前と変わらない魅力

Title:THE NOISE,THE DANCE
Musician:Hermann H.&The Pacemakers

2000年代前半に活躍し、一部で熱烈な支持を得ていたものの、2005年に活動を休止したHermann H.&The Pacemakers。それが、2012年に活動を再開。昨年はベスト盤がリリースされましたが、このたびついに、10年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

久しぶりのニューアルバムということでそのインターバルの影響が気にかかりましたが、正直、10年の空白が嘘のように、ヘルマン節が今回のアルバムではきちんと展開されていました。活動再開後のアルバムとしては、ビックリするような傑作アルバムだったと思います。

Hermann H.&The Pacemakersのサウンドは、ベスト盤の時にも書いたのですが、懐かしさや哀愁の感じられるメロディーに微妙にひねくれたメロディーラインが大きな特徴。さらに彼らの大きな魅力といえば、オルタナ系ギターロックを主軸にしながら、様々な楽曲の要素を取り入れているその雑食性でしょう。

今回のアルバムでもそんな彼らの雑食性がきちんと発揮されています。「San Joce」あたりが、いわば王道ともいえるオルタナギターロック路線だとすると、「Dance,don't run!」はスカ風のリズムを、「THE COMPOUNDER」では80年代風のディスコミュージックの要素を取り入れています。

その特徴が一番顕著だったのが「The Big Upset」で、最初はちょっと佐野元春あたりも彷彿とさせる爽やかなギターロックからスタートしたかと思えば、中盤にメタル風な展開になり、かと思えばジャジーな雰囲気に変わる、と1曲の中に複雑に展開していました。

この曲に限らず、雑食的な彼らの傾向を反映させるかのような、様々な曲調が展開していく曲も大きな魅力。もっとも、彼らの場合は、無理に複雑に展開させてインパクトをつける、というよりも、様々な音楽を自由に演奏している、といった感じ。それだけに、ちゃんとポップにまとまっているのが見事。かつ、聴き終わった後、妙に耳に残る楽曲になっています。

また、今回のアルバムで大きな魅力に感じたのはアルバム全体の構成でした。この作品、アルバム全体でひとつのライブが展開するような流れになっています。ダンサナブルな「Welcome Home Heroes」からはじまり、「San Joce」もライブで盛り上がりそう。前半は、最高潮になっていくライブ会場の雰囲気が伝わってきそう。中盤には様々なタイプの曲で聴かせ、最後を締めくくる「Wake up&go」はカントリー調で盛り上がり、会場全体が一体になれるような曲。まさにヘルマンのライブを体験しているかのようなアルバムになっていました。

彼らみたいなタイプの中堅どころのバンドは、どうしても一般的に注目度が低くなってしまうのですが、もっともっと聴いてほしい傑作だと思います。これがはじめてのヘルマンでも十分楽しめる作品だと思います。

評価:★★★★★

Hermann.H&The Pacemakers 過去の作品
The Best Of Hermann H.&The Pacemakers

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