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2014年3月30日 (日)

ほんわかな中に毒も一滴

Title:SAKEROCKの季節 BEST2000‐2013
Musician:SAKEROCK

ここ最近は、SAKEROCKよりも個々での活動の方が有名になってしまった感のある彼ら。特に星野源に至ってはミュージシャンに俳優に、すっかりメジャーな存在となっていまい、SAKEROCKの星野源というよりも、あの星野源が所属しているバンド、ということで最近は注目を集めている感すらあります。

SAKEROCKとしての活動は2010年のアルバム「MUDA」以来ちょっとご無沙汰になっていますが、そんなSAKEROCKファンの心の隙間を埋めるように(?)リリースされたのが初となるベストアルバム。ただし、彼らにとっては初のベスト10ヒットとなり、むしろ星野源のファンが逆流してきたような(?)結果になっています。

以前からSAKEROCKのアルバムはもちろん聴いていたのですが、今回ベスト盤であらためて彼らの曲を聴くと、やはりいいなぁ、とほんわかした気分になります。基本的に楽曲のタイプは、星野源の作品にも通じるようなほんわかとした脱力ポップ。ほとんどがインストのナンバーなのですが、暖かいポップなメロが流れており、おそらく星野源から逆流してきたファンにも文句なしに楽しめそう。

ただやはりSAKEROCKの楽曲を聴いていて耳を惹くのがハマケンのトロンボーン。どこかユーモラスに歌っているようなホーンの音色がとても独特。時には笑っているような音を出しつつ、聴かせるところではちゃんとぬくもりのある音色になっている彼が生み出すトロンボーンの音色が、SAKEROCKの楽曲の、大きなひとつのキーポイントになっているように感じました。

また、彼らの曲も「Matakitene」みたいなノベルティー風ながらも、ちょっと毒の要素も含んだ曲がとてもユニーク。ユーモラスな要素を感じつつも、その中に一滴だけ、毒の要素を忍ばせているような楽曲が多く、その毒の要素が、単なるイージーリスニングとは異なるスパイスになっています。カバー曲も収録されていますが、「スーダラ節」のカバーは絶妙。原曲のような高度経済成長期の若者ではなく、今の時代の若者を感じるような作風に仕上げています。

SAKEROCKの魅力があらためて実感できたベスト盤でした。星野源によると、今年はアルバムをリリースしたい、と言っているので、その言葉を信じて楽しみにしていたいところなのですが・・・はたして?

評価:★★★★★

SAKEROCK 過去の作品
ホニャララ
MUDA


ほかに聴いたアルバム

THE SINGLE of mihimaru GT/mihimaru GT

2006年2007年と2年連続紅白出場経験も持ち、昨年、無期限の活動休止を発表した女性ボーカリスト+男性ラッパーによるポップデゥオ。いかにもavexっぽい売れ線ポップデゥオ(ただしレコード会社はavexではないみたいなのですが)という印象を持っていたのですが、2011年リリースの「エボ★レボリューション」が結構良かったので、「おや、聴かず嫌いで、実はおもしろい曲を書いているのか?」とシングルベストを聴いてみました。

で、結果としては、やはりいかにもavexっぽい売れ線のポップデゥオ。要するに当初のイメージはそのまんま(笑)。もちろん、売れるポテンシャルを持ったポップソングなだけに、インパクトのあるポップなメロを書いており、決して悪い訳ではありませんが。

ただ、その「エボ★レボリューション」や、「H.P.S.J.」みたいなノベルティー色が強いユーモラスな雰囲気の曲については結構おもしろい曲もあって、そういう意味ではこの方向性をもっとのばせばおもしろいユニットになっていたポテンシャルはあったのかも、という印象も。また、女性ボーカル+ラッパーという、着メロ系ヒットに良く見られた組み合わせながらも、そういう「着メロヒット」狙いのラブソングが皆無という点も、彼らなりのプライドなのかも、と感心しました。

評価:★★★

GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013/鬼束ちひろ

どうも迷走気味な状態が続いている鬼束ちひろのオールタイムベスト。2010年にベスト盤はリリースしたばかりなのですが・・・。前回のベスト盤は1枚にまとめられていたのですが、本作は2枚組。これだけボリュームが多いと、前回のベストでは感じられなかった「月光」や「私とワルツを」などの「似たタイプの曲が多いなぁ」という印象が、今回は強く感じてしまいました。このタイプの曲に行き詰まり、迷走しているというのも、さすがに彼女自身、もうちょっと違うタイプの曲が歌いたくなったんだろうな、ということがこのベストだと感じてしまいます。

もっとも、1曲1曲に関しては十分名曲ばかりですし、比較的最近の曲でも「帰り路をなくして」や「陽炎」のような、昔の彼女をちゃんと継承しているような曲もリリースしているだけに、全盛期の彼女しか知らない人や、最近の迷走状況のみネットや各種報道で知っている方にはあらためて聴いてほしいベストではあると思うのですが。ただ、最後を飾る「あなたとSciencE」はやはり珍曲だよなぁ・・・。

評価:★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE

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