バンドとしての危うさがどこかに
Title:THE FACES
Musician:Dragon Ash
Dragon Ashというバンドは本当に大変なバンドだと思います。ブレイクし、それまで日本に定着していなかったHIP HOPというジャンルを一気にメジャーなものに押し上げた結果、HIP HOP界からはバッシングを受けます。そんな中「Greatful Days」で共演したZEEBRAからも、ディスを受け、その結果、HIP HOPから手を引き、音楽性をラテンへと大きくシフトさせました。
その後も2012年にはメンバーのIKUZONEの急逝という悲劇がバンドを襲います。正直、Dragon Ashの降谷建志が典型的な「おぼっちゃん」タイプで、こういう逆境をバネにするタイプにはどうしても思えないだけに、ここ数年、バンドの危うさばかりが目についていました。
そんなバンドの悲劇を乗り越え、6人体制では初となる約3年ぶりのニューアルバムが本作。イントロをはさみ事実上の1曲目が「The Show Must Go On」というタイトルの楽曲からスタートしていく点、メンバーの死を乗り越え、新たな一歩を進んでいこうというバンドの決意を感じるのですが、同時にバンドとして進んでいかざるを得ない、という危うさも、同時に感じてしまいました。
そして今回のアルバムは、前作「MIXTURE」に引き続きミクスチャーロックに回帰している点でしょう。さらに「Still Goin' On」ではHIP HOPグループのYALLA FAMILYが参加しており、まさにミクスチャーロックからHIP HOP志向の強いアルバムになっています。
正直、ラテン志向のアルバムは、後ろ向きな感覚が否めず、現役のバンドにも関わらず、どこか半分引退している大ベテランバンドみたいな雰囲気を感じてしまっていたのですが、やはり前作「MIXTURE」といい本作といい、Dragon Ashというバンドにはミクスチャーロックが一番似合っているんだ、ということをあらためて感じました。
そんな中で本作では「Here I Am」や「Blow Your Mind」のような哀愁がたっぷり漂うような曲もチラホラ。ここらへんの曲に関しても、ラテンフレーバーといった感じではありませんが、ラテン音楽志向が強かった時期の残り香を感じます。そういう意味でも今回のアルバムは、ギターロック、HIP HOP、ラテンと彼らが通ってきた道の総括みたいな印象も受けました。
ただ・・・前作でも感じたのですが、今の彼らの音と、かつてブレイク直後の彼らの音とで最大に異なるのが攻撃性。時代を切り開いてやる、あるいは俺らの音を聴け、というブレイク直後の攻撃性はこのアルバムにはありません。もちろん、それは彼らがおとなしくなったといえるのかもしれませんが、ベテランである以上、余裕が出来た、と言えるのかもしれません。ただ、その余裕を持てるベテランとなり、代わりに入手した「何か」があまり感じられませんでした。
そういう意味では彼らも、バンドとしてもうひとつ新しい段階に踏み出すべき時なのかもしれないのですが、今回のアルバムではまだ無邪気にミクスチャーロックを楽しんでいるだけという感じもしました。もちろんそれもまたバンドとして素晴らしいことなのですが・・・。ファンとしては満足できるアルバムだと思いますし、Dragon Ashの良さも感じたのですが、今後への危うさも感じたアルバムでした。
評価:★★★★
Dragon Ash 過去の作品
The Best of Dragon Ash with Changes Vol.1
The Best of Dragon Ash with Changes Vol.2
FREEDOM
MIXTURE
LOUD&PEACE
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