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2014年3月 2日 (日)

黄金期のコンピ盤

Title:黄金の80'sベストヒッツ35曲!~Epic35~

80年代から90年代にかけて、佐野元春やTM NETWORK、渡辺美里、岡村靖幸といった層々たるミュージシャンたちを世に送り出し一世を風靡したエピックレコード(当時は「エピックソニー」と言われていましたが)。その会社設立35周年を記念してコンピレーションアルバムが配信でリリースされました。

エピックのコンピといってまず思い出したのが、25周年を記念してリリースされた「EPIC25」という一連のオムニバスアルバムでした。その時はエピックのミュージシャンが一堂に会した「LIVE EPIC」というライブイベントも行われ(私も行きました!)、かなり盛況なイベントとなったのを覚えています。

今回のコンピがリリースされた時、まず思ったのが「あれ?こないだこういう企画やったじゃん」ということ。そして思い起こすと、あれからもう10年という月日がたったことに驚かされました(厳密には、「LIVE EPIC」の開催が2003年の2月だったので11年です)。また、それと同時に、35周年のコンピはCDでのリリースではなく「配信」というスタイルを選択したことに、時代の流れを感じます。

今回のシリーズは、80年代、90年代、そして2000年代と年代を区切り、3回にわけてリリースされるそうです。エピックとしては90年代以降もジュディマリやいきものがかりといった一時代を築いたミュージシャンたちを世に送り出していますが、間違いなく黄金期と言えるのは80年代でしょう。私がリアルタイムでポピュラーミュージックを聴き始めたのは90年代からだったのですが、私が最初に「レーベル」というものを意識して音楽を聴き始めたのはエピックソニーでした。当時は「eZ」というエピックソニーが制作する音楽番組なんかも放送されていたりして、かなりレーベルカラーを押し出していたレコード会社というイメージがありました。

当時のエピックソニーというレコード会社は、どこか新しく、刺激的な、そして若い世代の気持ちに沿った音楽を奏でる「今時」のレコード会社というイメージがあり、そしてそんなエピックのイメージを作り出していたのは、まさに今回のコンピレーションに収録されているミュージシャンたちでしょう。佐野元春、THE MODS、大沢誉志幸、THE STREET SRIDERS、大江千里、渡辺美里、小比類巻かほる、TM NETWORK、遊佐未森、BO GUMBOS、松岡英明・・・ミュージシャンの名前を連ねるだけで、私くらいの世代の方にとってはワクワクしてきそうな並び。歌謡曲がまだまだ勢いがあった80年代にあって、当時10代、20代の若者たちが、自分たちの世代のための、自分たちのための音楽を作り出そう、そういう気概を今回のコンピの曲から感じます。

ただし一方でユニークなのが、このコンピ、1曲目はばんばひろふみの「SACHIKO」というバリバリのフォークソングではじまり、最後は時任三郎の「勇気のしるし~リゲインのテーマ~」というコミックソングで終わります。この並びには、エピックレコードがいわば「今時の若者たち」の曲ばかりではなく、様々なタイプの曲を手がけてきたんだ、という一種の主張も感じます。実際、渡辺徹の「約束」や、渡辺満里奈の「深呼吸して」といったアイドル系の楽曲やTERI DESARIOの「オーヴァーナイト・サクセス」といった洋楽も収録されていおり、そんなエピック側の主張も感じました。

今後、第2弾、第3弾のリリースも予定されているそうですが、おそらく内容としては80年代のコンピを超えることはないでしょう。それだけ一時代を築いた時代の楽曲ばかり。まあ正直この手のコンピは、最近、数多くリリースされているので、そういう意味での「目新しさ」的な要素が若干薄いのは残念なのですが・・・。ただ、配信というスタイルで、数多くのヒット曲が手軽に聴けるという意味でも、リアルタイム世代はもちろん、今の10代20代も、一度チェックしてみてほしい作品です。

25周年の時のように、また、このアルバムに参加したミュージシャンたちでのライブイベント、やってほしいなぁ。ただ、25周年の時は、Wikipediaの記述によると、創始者の丸山茂雄氏の送別という意味が主目的だったようですが。次は45周年?それとも50周年??ただ、そこまでエピックレコードが残っていられるのかが、正直かなり微妙な状況なのですが(苦笑)

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

AT THE SWEET BASIL/吉井和哉

吉井和哉10周年のプレミアムライブとして、昨年10月に六本木スイートベイジルで行われたライブイベントの模様を収録したライブアルバム。基本的にライブ会場のイメージ通り、ジャジーな雰囲気にまとめあげられています。「夢は夜ひらく」のカバーなどはなかなか絶品で、やはり彼と歌謡曲の相性の良さを感じました。ただ一方ではジャズアレンジに走るということが、もちろんやってみたかったという点もあるのかもしれませんが、良くも悪くも「大人のシンガー」への道を歩んでしまっているのかなぁ、という印象も。

評価:★★★★

吉井和哉 過去の作品
Hummingbird in Forest of Space
Dragon head Miracle
VOLT
The Apples
After The Apples
18

大貫妙子トリビュートアルバム - Tribute to Taeko Onuki-

大貫妙子の音楽活動40周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。ユーミンや竹内まりや、坂本龍一、奥田民生らのベテラン勢から、やくしまるひろこ、青葉市子といった若手まで豪華なミュージシャンがズラリ。その各々が、それぞれの個性を生かしつつ、きちんと大貫妙子の名曲をカバーしています。そういう意味では、ある種「文句のつけようのない」アルバム。ただ正直、それが逆に意外性がなく、聴いた後いまひとつ印象の薄いアルバムになってしまったような感じがしました。もちろん、1曲1曲の内容は名カバーばかりで、大貫妙子のファン、参加ミュージシャンのファン、両方にとって満足はいく内容とは思うのですが。

評価:★★★★

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