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2014年3月25日 (火)

アメリカで録音された「砂漠のブルース」

Title:EMMAAR
Musician:TINARIWEN

「砂漠のブルース」と呼ばれるトゥアレグ族の民俗音楽を奏でるマリのミュージシャン、TINARIWENのニューアルバム。アフリカ音楽の中では、おそらくもっとも知名度が高く、世界中で人気のある彼ら。しかし今回のアルバムをリリースするにあたっては、政治的な理由からマリを離れ、アメリカはカリフォルニア、モハーヴェ砂漠につくられたセットにおいて録音されたそうです。

前作「Tassili」では多くのアメリカのミュージシャンが参加していましたが、今回もアメリカのミュージシャンが録音に参加。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーもゲストとして参加しています。

ただ、前作「Tassili」も、そんな中で悪い意味で垢抜けることなく、TINARIWENらしいサウンドを作り上げていましたが、今回のアルバム、アメリカという前作までとは異なる環境下でも制作にも関わらず、彼らのサウンドに、その環境ゆえの大きな影響は見受けられませんでした。

聴く者がトリップ感を味わうミニマルなサウンドにうねるようなメロディー。アフリカらしさを感じるコール・アンド・レスポンスという彼らの楽曲の雰囲気は今作も同一。かつ、本作では、特にアルバムの前半「TOUMAST TINCHA」「CHAGHAYBOU」では、バンドサウンドが、そのリズムを前面に押し出したグルーヴィーな演奏を聴かせてくれており、非常にダイナミックな雰囲気を感じました。

「TAHALAMOYT」では、メロディアスなギターサウンドを聴かせてくれていたりして、あえていえばここらへんはひょっとしてジョシュ・クリングホッファー参加の影響でしょうか?確かに、バンドサウンドの録音状況は良く、音はよりクリアに聴こえるのも事実。そういう面では、アメリカでの録音の影響もある、かもしれません。

また、マリから追われアメリカにやってきた彼らの新作では、いつも以上に強烈なメッセージも特徴的でした。例えば「TOUMAST TINCHA」では

「権力で支配された平和はいつしか失敗する
そして憎しみを誘う」

というあまりにストレートなメッセージが歌われていますし、邦題が「サハラの若者達」となっている「TIMADRIT IN SAHARA」では

「先祖が伝えてきてくれた武器より
違うものを今使えるようになったのだ」

というメッセージを、タイトル通りサハラの若者たちに伝えています。音楽的にはいつもの彼らでも、より強いメッセージ性を感じさせる作品になっていました。

もちろん「砂漠のブルース」というだけあり、哀愁ある雰囲気も漂う作品は、ワールドミュージックを普段聴かない方でも比較的聴きやすいかも?本作も「砂漠のブルース」の魅力を存分に感じられる傑作でした。

評価:★★★★★

TINARIWEN 過去の作品
IMIDIWAN:COMPANIONS
TASSILI

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アルバムレビュー(洋楽)2014年」カテゴリの記事

コメント

ゆういち様
こんばんは

初めて聴きましたが、
ブルースというよりは
ブルース・ロックという感じで、
英米のロック/ポップスの影響も
多分に受けて洗練されているので
聴きやすかったです。

仰るとおりグルーヴ感が素晴らしい演奏で、
スケール感が出ていたのはアメリカ録音ゆえなのかな、と思いました。

投稿: GAOHEWGII | 2014年3月26日 (水) 20時05分

>GAOHEWGIIさん
そうですね、彼らの音楽は、アフリカ音楽の中でも垢抜けていて、いい意味でも聴きやすさを持ったバンドだと思います。確かにグルーヴ感やスケール感はアメリカという環境が影響しているのかもしれませんね。過去の作品も名盤が多いので、是非是非!

投稿: ゆういち | 2014年3月27日 (木) 00時00分

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