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2014年3月27日 (木)

日本ポップス史の「年表」

1966年から1989年までに、日本でリリースされたアルバムを、ジャンルとわず「名鑑」という形でまとめた「日本ロック&ポップスアルバム名鑑」を読みました。

音楽評論家の湯浅学氏監修による2冊組。ロック、ポップス、歌謡曲、演歌、アイドルポップスの枠組みが一切なく、日本の音楽史において意味のある作品を並べた「名鑑」で、取り上げたアルバムは必ずしも名盤という訳でもなく、また、大枠小枠という違いもあるものの、その違いは語るべき事項の多少の差であり、決して大枠だから聴くべきアルバム、という訳でもないそうです。

正直、日本の音楽史や、その中における各アルバムの位置づけ及びそのミュージシャンについての詳しい説明が必ずあるわけではないので、日本のポップスミュージックの歴史をまったく知らない、という方にとってはちょっと厳しい内容かもしれません。ただそこはさすがに執筆された方の腕前でしょうか、読み進めていけば、ポップス史の概略や、その中でのアルバムの位置づけなどがぼんやりと見えてくる構造になっていました。

読み進めていくと、なんとなく日本史における年表を眺めているような感覚に陥りました。簡単な説明の加わったいろいろなアルバムが次々と紹介され、自分のまったく知らないアルバムやミュージシャンたちがたくさんいたんだなぁ、と事実を知ること自体が楽しく感じられます。説明は最小限なので、詳しく知りたいミュージシャンやアルバムに出くわした時にはその都度ネットで情報を探索したりしながら、楽しく読み進むことが出来ました。

この名鑑を読み進めて、特に興味をひかれたのがノヴェルティー的なアルバム。正直、ここらへんのアルバムはいわゆる名盤集で紹介されることはありません。また、言葉と文化の壁に阻まれて、決して海外のこの手のアルバムが日本で紹介されることもありません。ただ一方でそれだからこそ、とても日本的で、その時代時代の空気を反映したもの。そういうノヴェルティー的なアルバムが、過去から現在まで日本でも数多くリリースされており、このアルバムでも何作か紹介されています。この名鑑を読み進めてとても興味がひかれたのが、そんな時代文化をストレートに反映したような、ノヴェルティーな作品たちでした。

また、当時はそれなりの人気を獲得したものの、今となっては、ほとんど知られなくなってしまったミュージシャンたち、あるいは当時もアングラでの活躍で、一部の熱烈な支持を得たものの、今となっては全貌がわからなくなってしまったミュージシャンたちなども紹介されており、こちらも興味をひかれます。売上やアルバムの良否を問わず、またジャンルも問わず、数多くのアルバムを紹介している「名鑑」だからこそ、こういう普通の名盤集では知ることのできないミュージシャンやアルバムも知ることが出来、それがこの本の大きな魅力のように感じました。

ただ一方で、それでも、これから日本のポップス史を探索する道しるべとして、「聴くべき名盤」みたいなのをどこかで紹介してほしかったなぁ、とも思います。例えば、そういうアルバムには、アルバム紹介の欄に、何らかのマークを付すとか・・・・。もっとも、そんなことをしては、著者の本来の意図に背いたことになるんでしょうけどね。

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