« 僅差の1位2位 | トップページ | とにかく勢いのある新人バンド »

2014年3月21日 (金)

ニコはミスチルに似ているのか?

Title:ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Musician:NICO touches the walls

以前から、何度かこのサイトで彼らを取り上げる時に、「ミスチルに似てる」という感想を書いたことがあります。ただこの「ミスチルに似てる」という感想は楽曲を聴いて全体から感じる印象論でした。

ただ、ちょうど先日、KANのライブに行った時、彼がミスチル風の新曲を披露した時に、ミスチルの曲の特徴について説明していました。彼曰く「低いキーから、サビに向かってどんどん盛り上がる」「サビ前には一音だけのファルセットボイス」「サビは複雑なメロをポップに聴かせる」「そして大サビ」、これがミスチルの音楽(特に90年代から2000年初頭の)大きな特徴だそうです。

で、そのポイントからあらためて今回のニコのベスト盤を聴いたのですが、あ、確かにこの特徴があるわ、と思いました。特に一番顕著だったのが新曲の「ローハイド」。まさに低いキーからサビに向かって高いキーに盛り上がり、サビでは1音だけのファルセットボイス。サビは比較的メロディーが複雑に展開し、そして大サビ・・・うーん、確かにこういう要素を切り取って考えると、彼らの曲を聴いてミスチルっぽいなぁ、と思った理由がはっきりしました。

実際、他の曲に関しても、特に低いキーからサビにむけて高いキーに展開していくパターンや、さらにボーカル光村龍哉のボーカル技法として、サビあるいはサビ近辺の1音だけファルセット寸前の高音に持っていく歌い方をよく行っていて、この歌い方もまた、彼らの曲をミスチルっぽく感じてしまう大きな要素になっているように感じます。

ただ一点、彼らの曲の特徴としてミスチルと大きく異なるのがサビのメロディー。「夏の大三角形」あたりで特徴的なのですが長い音符を多用したサビが多くみられます。ここらへんは「複雑なサビのメロ」というミスチルの特徴とはちょっと異なるかもしれません。ただ、逆に、長い音符を並べただけのサビは若干単調気味というマイナス点もあるのですが。

さてここまでニコがなぜミスチルみたいに聴こえるのか、ということを延々と書いてきました。それだけに、このアルバムに関しては酷評みたいに感じる方も多いかもしれません。ところがどっこい、このベスト盤に関しては思いのほか、かなり楽しめる内容になっていました。

ミスチルに似た雰囲気ということを散々書いてきましたが、ここでいうミスチルっぽい音というは一昔前のミスチルの話。今ではストリングスを多用したスケール感を出した曲を多くリリースしていますが、その反面、シンプルなギターロックからは遠ざかってしまっているように感じます。

あえて言えば今のニコは、そんなミスチルが捨て去ってしまったシンプルでメロディアスなギターロックをきちんと歌っているバンド、と言えるのかもしれません。非常にメロディアスなメロや、昂揚感あるサビの盛り上がりなど、実に魅力的で聴かせる力を持ったバンドなのは間違いありません。

特に全17曲80分弱に及ぶベスト盤で、かつ正直楽曲のバリエーションもそんなに多いわけではないのに、最後までまったく飽きることなくアルバムを聴くことが出来ました。それも要所要所で、メロがキラリと光ってインパクトのある名曲が配置されているから。なんだかんだいっても、このベスト盤もベスト10ヒットを記録していますし、数多くのギターロックバンドの中で人気を確保している理由は、そのメロディーセンスの良さにあるのでしょう。ポップバンドとしての実力をこのベスト盤からは十分に感じることが出来ました。

「サビでの長音符の多用」という点のみではなく、もうちょっとニコだけの個性を出すのと、楽曲のバリエーションを増やすという点が今後の課題のようにも感じるのですが、それはさておき、このベスト盤に関しては間違いなく傑作と言える内容だったと思います。ポップなメロを存分に楽しむことが出来る作品でした。

評価:★★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!

|

« 僅差の1位2位 | トップページ | とにかく勢いのある新人バンド »

アルバムレビュー(邦楽)2014年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ニコはミスチルに似ているのか?:

« 僅差の1位2位 | トップページ | とにかく勢いのある新人バンド »