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2014年2月10日 (月)

あなたの知らない世界

私は基本的に毎月、「レコード・コレクターズ」誌を購読しているのですが、その中で一番楽しみにしているコーナーが、芸能史研究家で、SPレコード収集家の第一人者、岡田則夫氏のコラム「続・蒐集奇談」。今回、その過去の連載をまとめた本が1冊にまとまったため、読んでみました。

SPレコードというのは、「Standard Playingレコード」の略で、LPやEPレコードが出てくる前、1950年代あたりまで生産されていたレコードの形態。いまでは、普通に生活していれば、音楽ファンでもまずお見かけすることのない昔のレコードなのですが、全国各地の古道具屋を巡りSP盤を収集している著者が、その収集の過程を記した作品です。

基本的に、冒頭、「SP盤収集とは何か」という話が描かれ、SP盤収集にあたってのマニアの間での常識や収集の方法などが語られていますが、この著書全般で記されているのは、著者が全国の古道具屋を巡ってSP盤を収集するお話しで、そういう意味では「SPレコード」といっても音楽のお話、よりはむしろ「紀行文」に近いかもしれません。もっとも、紀行文といっても著者がそこでやるのはひたすらSP盤収集のため、古道具屋を巡ったり、骨董市を巡ったり、その現地の収集仲間と出会う物語で、現地の観光地などはほとんど登場しません。

ぶっちゃけ口を悪く言ってしまえば「マニアの生態を描いたお話し」なのですが、これがとても興味深く読めてしまうのは、もちろん、岡田氏の文章力もあるのでしょうが、やはり、たまにテレビでやるような「あなたの知らない世界」的な、自分たちとは全く関係なさそうな世界をのぞきこむようなあのドキドキ感。例えば著者は、全国各地の古道具屋を巡るのですが、そこはどこも店の中に古い雑貨が山積みにされ、さらに店主は積極的に愛想よく営業をするような人ではなく、一癖も二癖もある人たちばかり。そんな古道具屋が(ここで取り上げられているのは、古いと20年くらい前の話になってしまうのですが)全国各地(というよりも、ひとつの街に何件か)あるというのはちょっと驚き。確かにたまに「何の店なんだろう?」というような、古い品物が積みあがっているような店を見かけることがあるんですが、あれがここで登場するような古道具屋なんでしょうね・・・。また、骨董市は、朝6時くらいから店が開きだし、マニアはさらにそれよりも早く、会場でウロウロしているという事実など、全く知らない「SP盤収集マニア」の実態は、興味深いものがありました。

一方で、こういう世界をおもしろく読めるのって、たしかに自分たちとは直接関係ない世界なのかもしれないですが、でもどこか自分たちにも共感する部分があるんですよね。それは例えば、岡田氏のSP盤に対する愛情が伝わってくるという部分もありますし、また例えば音楽だとか、ライブだとか、それとも切手収集でも鉄道でもいいのですが、なにかひとつ、こだわりのある趣味を持っている人にとっては、それこそ一般人には理解されないような行動力で趣味の世界を広げていく岡田氏をはじめSP盤収集マニアの行動については、共感をおぼえる部分も強いのではないでしょうか。だからこそ、このコラムは、とても興味深く読むことが出来ました。

そんな訳で、一応「音楽の本」の括りで読んで紹介した本ですが、内容的には音楽と直接関係ありませんし(岡田氏の興味も、むしろ落語が本筋のようですし)、むしろ音楽関係なく、なんらかの趣味を持っている方ならば、楽しめる本だと思います。

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