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2014年2月15日 (土)

「フォークの神様」

Title:岡林四十五景~デビュー45周年記念ベスト盤
Musician:岡林信康

60年代から70年代にかけてのフォークブームの時に絶大な支持を集め、「フォークの神様」と言われる岡林信康。日本のポピュラーミュージック史を語る時にも必ずその名前が語られる、日本ポピュラーミュージック界のいわば「リヴィング・レジェンド」ですが、その彼がデビュー45周年を迎えオールタイムベストをリリースしました。

3枚組となるボリュームで、彼の楽曲が活動順にならんでいる、まさに岡林信康の歴史を知ることが出来るベスト盤。デビュー当初のフォークソングから、その後のロック寄りの作品、彼がその後傾倒する演歌や、さらに80年代後半からの彼のライフワークとなる、日本の民謡のリズムを取り入れた「エンヤトット」まで、その45年間のうちにめまぐるしく変化し続ける、彼の音楽遍歴を一望することが出来ます。

ただ、これら彼の代表曲を俯瞰して聴くと感じるのは、彼はやはりあくまでも「フォークの神様」だなぁ、という点でした。ぶっちゃけて言ってしまうと、彼の楽曲で文句なく名曲と感じたのはフォーク期の曲。演歌やエンヤトットの楽曲については、正直、フォークほど「名曲」とは感じられませんでした。

例えば演歌に傾倒した「月の夜汽車」「春を運ぶな雪の海」はまさにそのままど演歌。同じフォーク畑の吉田拓郎が作曲した「襟裳岬」や彼のバックバンドをつとめたはっぴいえんど出身の大滝詠一が書いた「冬のリヴィエラ」などは彼らの持ち味をいかしつつ、演歌のイメージと上手く融合させていますが、岡林信康の演歌は、その意味では演歌の様式にはまりすぎている感じがします。

「マンハッタン」「霧のHighway」などもタイトル含めていかにもニューミュージック風ですが、こちらもいまひとつ岡林信康としての個性が出ていない結果に。ここらへんに比べて、彼が行き着いたエンヤトットは「DANCE MUSIC」など、確かにおもしろいことはおもしろいのですが、ロックとの融合という観点では、後発のソウル・フラワー・ユニオンなどに比べると、民謡のイメージに縛られすぎにも感じます。また、「江州音頭物語」などもそうですが、おそらく当時反発を受けた「エンヤトット」の良さを普及しようとするのはわかるのですが、その結果、あまりにも理屈っぽい歌詞が、聴いていて一種のノイズになってしまっています。

これらの曲がなぜいまひとつに感じるかというと、結局のところ、理屈っぽい、ということになるような印象を受けます。フォークという一箇所に捕らわれず、新たな音楽を模索する彼のスタイルは、敬意に値しますが、狙いが露骨すぎて、型にはまりすぎてしまっているように感じました。

結局のところ彼の最大の魅力は、時には物語性を持ち、人間を的確に描写し、常識や権力に常に疑問を抱きつつ、ユーモアな視点を持ちながら描くその歌詞。そしてそんな歌詞を上手くひきたてる、シンプルながらもインパクトあるメロディー。これに尽きるのではないでしょうか。そしてそんな彼の魅力が最も生きるのがやはりフォークソングという形態であり、だからこそ彼はあくまでも「フォークの神様」だな、というのがこのベスト盤を聴いた感想でした。

これらの魅力がきちんと反映された曲は今聴いても実に魅力的。確かにメロディーなどに時代を感じる部分はあるのですが、今でも十分通用する普遍的なメッセージ性もちゃんと残っています。例えば「くそくらえ節」などは、今で言うところのブラック企業の上司をちくりと皮肉った歌詞なんかも登場。ただ、これを聴いて拍手している世代が、ブラック企業のトップの側に立って、若者をこき使っている事実が実に皮肉なのですが・・・。

またもっとも楽曲としていまひとつと感じても、音楽的に常に挑戦をし続ける彼のスタイルについてはやはり大きな魅力だと思いますし、そういうスタンスもまた、自分自身を一種の「権力化」しないという意味で、デビュー以来、一本筋が通っているものを感じます。そういう生き方も含めて、まさに「フォークの神様」と言えるのかもしれません。

ちなみにこのベスト盤でちょっと残念だったのは同和地区の差別問題に切り込んだ「手紙」が収録されなかった点。いろいろな事情があるかもしれませんが、やはり彼にとっては重要な曲だと思うんだけどなぁ。

そんな訳で、いろいろと感じることの多かったベスト盤。とはいえ、間違いなく日本のミュージック史を代表するミュージシャンのひとりなので、まずは聴いておくべきアルバムだと思います。考えさせられる部分も多く、心に響く曲も少なくない作品です。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

re(construction)/plenty

plentyの代表曲を ストリングスやピアノを入れて再構築されたアルバム。美しいサウンドが印象的だが、基本的にplentyのイメージに沿ったアレンジのため驚きみたいなものはない。また、再構成にストリングスとピアノを入れるという方法はちょっとベタな気が・・・。

評価:★★★★

plenty 過去の作品
拝啓。皆さま
理想的なボクの世界
plenty
this

nightporter/geek sleep sheep

L’Arc~en~Cielのyukihiro、MO’SOME TONEBENDERの百々和宏、凛として時雨の345からなる3ピースバンドのデビューアルバム。基本的にシューゲイザーからの影響の色濃いギターロックで、345のボーカルも効果的に使っていて、雰囲気としてはスーパーカーに近い雰囲気があります。音的には思いっきり好みの音で、そのため基本的には楽しめたのですが、正直、目新しさがほとんどなく、それを補うだけのメロディーやサウンドがあったかというと、そこまでは微妙・・・。シューゲイザー好きにはお薦めできると思いますが。

評価:★★★★

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