ブルースへの愛情あふれるカバー第3弾
Title:1968 vol.3~NOVEMBER~
Musician:近藤房之助
日本を代表するブルース・ミュージシャン、近藤房之助のカバー企画第3弾。「1968年当時17歳だった近藤房之助が感じたBLUESをどこまで表現出来るかを挑戦した」だそうで、ブルースの名曲11曲をカバー。さらに本作ではインスト作品として自作の曲も2作収録されています。
2010年に第1弾、2012年に第2弾がリリースされ、そして本作。第3弾にして最終作だそうす。基本的な路線は第1弾、第2弾と同じ。ブルースの名曲の数々を歌い上げる彼のボーカルは実に力強く、そして丹念にカバーしていくスタイルはブルースへの愛情を深く感じます。
パワフルにかきならされるギターの音とブルース・ハープの音色が目立つため、楽曲としてパッと聴くととても無骨な雰囲気。とくに彼のボーカルは、第1弾から同様なのですが、きれいな英語の発音に拘らず歌いたいように歌うスタイルのため、彼の感情がストレートに表現されているため、この「無骨」というイメージが強調されています。
しかし実際にこのアルバムをよくよく聴くと、「無骨」というイメージよりも意外と計算された洗練さを感じました。特に後半、Otis Rushの「Take A Look Behind」から自作のインスト曲「November」はジャジーでメロウな雰囲気がとても都会的なイメージ。「無骨」なイメージとは異なるサウンドを聴かせてくれます。
また、ブルースの王道を行くようなカバーながらも、これは以前の「1968」シリーズとも共通しているのですが、現代風にアレンジしている部分が強いのも印象的。まず全体的に音圧が強いアレンジにしていますし、Leroy Carrの「Rocks In My Bed」で聴かせてくれるノイジーなギターサウンドやSonny Boy Williamson Ⅰの「Sloppy Drunk Blues」での重低音を響かせるアレンジなどまさに現代的な雰囲気を感じます。単純なブルースのカバーではなく、彼なりに咀嚼して、現代風にアップデートする部分はアップデートしている点も印象的でした。
この現代風のアップデートも、ここ最近の「ブルース」のアルバムを聴いていると、やけにギターのソロを強調したりするハードロック風なアレンジが目立ち大味になりがちな部分が多いのですが、彼の場合、ブルースのブルースらしい部分はきちんと残しているため、決して単調な大味なアレンジにならないのも魅力的でした。
以前も書いたのですが、現代風の聴きやすいアレンジなので、ブルース初心者にもお薦めしたいアルバム。このアルバムでカバーされている曲の原曲を聴いてみる、みたいに遡って聴いていけば、ブルースの世界も一気に広がるかも。これで最後、というのはちょっと残念なのですが・・・次は彼の自作曲でのアルバムを期待したいです!
評価:★★★★★
近藤房之助 過去の作品
1968
1968 vol.2~DOWN HOME~
ほかに聴いたアルバム
BAAN/原田郁子&ウィスット・ポンニミット
クラムボンの原田郁子とタムくんの愛称で知られる、タイの人気漫画家ウィスット・ポンニミットによるコラボアルバム。全編アコースティックな作品で、タイのタムくんの自宅で収録された作品なだけに虫の声や鳥の声が入ったフィールド・レコーディングのような雰囲気に。基本的に自由な雰囲気で暖かく聴かせるポップですが、タムくんの日本語がいまひとつ聴きにくいのと、自由度が高すぎてまとまりがない雰囲気に。原田郁子のファンとタムくんのファン以外はちょっと辛い部分も。
評価:★★★
A WILL/LUNA SEA
2010年の活動再開以来、シングルやセルフカバーアルバムのリリースはあったのですが、ついにリリースされました、13年ぶりとなるオリジナルアルバムです。そんな久しぶりのアルバムは、活動休止直前の時期のような攻撃的な雰囲気は薄まり、かなりポップな内容に。河村隆一の耽美的なボーカルも前に出て、良くも悪くも「一般的にイメージされるようなLUNA SEAらしい」曲のならぶアルバムになっています。久しぶりの新譜なので昔からのファンに向けて、という感じでしょうか。悪くはないけど・・・正直ちょっと物足りなさも感じてしまいました。
評価:★★★
LUNA SEA 過去の作品
COMPLETE BEST
LUNA SEA
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