ちょっと暴走気味?
Title:×と○と罰と
Musician:RADWIMPS
おそらく今、ギターロックバンドとして最も人気と勢いがあるものと思われるRADWIMPSの新作。約2年9ヶ月ぶりの新譜で、途中、野田洋次郎のソロ、illionとしての活動があったこともあり、RADWIMPSとしてはちょっと久々の新譜となりました。
そんなちょっとインターバルが出来てしまった新譜ですが、その勢いはいまだに持続していました。彼ららしい飛び跳ねるようなリズムのポップスや、過激とすら感じられる視点のあるラヴソングなど、RADWIMPSらしさは本作も健在。まさにアルバムの冒頭からして
「言えない 言えないよ
今君が死んでしまっても 構わないと思っていることを
言えない 言えないよ
そうすれば永遠に君は 僕を捕まえていられることを
言えないよ」
(「いえない」より 作詞 野田洋次郎)
と、ミディアムテンポのナンバーながらも、その歌詞はいきなりギアをトップに入れてスタート(笑)。それに続く「実況中継」は、神様まで登場するヘヴィーでシニカルな歌詞に、ラッドらしいテンポよいリズムの曲で冒頭から飛ばしまくるアルバムになっています。
中盤以降も、「ブレス」のような「どうぞ お望みとあらば お好きに切り刻んでよ」なんて歌詞が登場する美しいピアノバラードがあったり、4つ打ちのリズムが特徴的な「ドリーマーズ・ハイ」(先行シングルですね)なんて曲もあったり、ストレートなパンクナンバー「会心の一撃」が続いたり、歌詞もサウンドもメロも、1曲1曲が実に個性的。全76分にも及ぶ長さのアルバムなのですが、この個性的な曲調や勢いの良さもあり、全く飽きることがなく聴くことが出来ました。
そんな訳で、2年9ヶ月というインターバルを経ても、まだまだ勢いが続いていたRADWIMPS。新作も文句なしの傑作!これからもまだまだその活躍が楽しみです。
・・・・・・・と終わりたかったのですが、このアルバム、ひとつどうしても気にかかってしまった部分がありました。それは今回のRADWIMPS、ちょっと暴走気味じゃないか、と思える部分をチラホラ感じたということです。
先行シングルにもなった「五月の蝿」も、そのあまりに過激な歌詞が賛否を巻き起こし話題になったのですが私がもっと気にかかったのが「Tummy」で、
「今から宣戦布告 二人の子供にきっと僕 嫉妬すんだよ
きっとそうだよ あぁ もう想像つく」
(「Tummy」より 作詞 野田洋次郎)
からはじまる歌詞は野田洋次郎に既に子供がいるのならともかく、そうではない彼の書く歌詞としては正直引きました。いかにも「2人の子供」を題材に、「こんなこと考え付く俺ってすごいだろう」みたいな、ネタのためだけのネタ、みたいな印象を受けてしまって。
もともとRADWIMPSの歌詞やメロは暴走気味一歩手前みたいな部分があり、その危うさもまた大きな魅了だったのですが、今回の作品はちょっと暴走をはじめちゃったかなぁ、という印象も受けてしまいました。意地悪な見方だと、こういう過激な歌詞や深読みが出来そうな歌詞を妙に絶賛するロッキンオン界隈にのせられちゃったような感じも・・・。
ま、暴走をはじめたならはじめたで逆に一気に突っ走るのもありなんでしょうが、今度の作品に向けて、ちょっと心配になるような方向性が垣間見れたアルバムでもありました。
とはいえ、アルバム全体として傑作であるには間違いないのですが・・・・。十分楽しめた反面、今度に不安も残した最新作でした。
評価:★★★★★
RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
ほかに聴いたアルバム
JEWEL/Chara
Charaのセルフカバーアルバム。「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」や「やさしい気持ち」のようなおなじみのヒット曲も収録されており、ベスト盤のような感覚でも楽しめます。新たな歌詞やメロディーを付け加えたりもしたそうですが、全体的な感触としては大きな変化はなく・・・というよりも、特にCharaのボーカルの完成度が高すぎるため、隙のなさも感じました。これ以上、どうにもいじれないような、そういう意味での「完成度」というのでしょうか。
評価:★★★★
CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
Cocoon
ロンググッドバイ/きのこ帝国
5曲入りのミニアルバム。アルバム全編を覆いつくすホワイトノイズが実に気持ちよい、シューゲイザー好きの壺をつきまくる作品。それにのるメロディーがポップだけどどこか切なく悲しいもの印象的で、ホワイトノイズとのバランスがまた絶妙。わずか5曲入りながらも、満足感のあるお腹一杯になるアルバムでした。
評価:★★★★★
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