どこか感じる批評的視点
Title:踊れないなら、ゲスになってしまえよ
Musician:ゲスの極み乙女。
最近デビューする新人ミュージシャンには2つのタイプにはっきりとわかれているような印象を受けます。ひとつは音楽に対して非常な「熱さ」を持っているミュージシャン、もうひとつは音楽に対して一歩下がった醒めた部分を感じさせるミュージシャンです。
違った表現を使うと、前者は、「どんな曲だろうと、俺らはこんな歌を歌いたいんだ!」というミュージシャン。THE BAWDIESやTHEラヴ人間あたりがそういうタイプのミュージシャンでしょうか。それに対して後者は、ちょっと嫌味な表現をすると「みんなこういう曲、好きでしょ?」という部分が垣間見れるミュージシャン。相対性理論やパスピエあたりにそんな雰囲気を感じます。
言うまでもなく、前者みたいなミュージシャンが大好物なのが「ロッキンオン・ジャパン」。ただ、こういう「ロケノン系」に対する反発もあるのでしょうか、後者のようなバンドが最近は増えてきているような印象を受けます。そして彼らゲスの極み乙女。も、このインパクトの強い名前からも想像できるように、後者のタイプのバンドに感じました。
個人的な好みを言ってしまえば、前者のタイプが好みであり、後者のタイプは正直あまり好みではありません。もっともミュージシャンの好き嫌いを決める要素はこの部分だけではないので、相対性理論は好きなバンドですし、他に魅力的な要素があればもちろん好んでそういうバンドの曲も聴いています。
ゲスの極み乙女。に関して、そういう醒めた要素を感じさせるのは全体的な音の使い方。「ヒップホッププログレバンド」を自称しているようですが、実に多彩な音楽的要素を感じます。「ヒップホップ」という単語を使っているようにラップを楽曲全体に配していますし、一方でサビの部分は比較的シンプルなオルタナ系のギターロック。かと思えばサウンドからはジャズやソウル、ファンクなどの要素も感じて、ブラックミュージックの影響も強く感じました。
ただ一方でここらへんの音楽的要素はあくまでも味付けに使う調味料的な感じで、決して深く入れ込んでいる感じはしません。「ヒップホップ」といってもヒップホップ的なのはラップを使っているという部分くらいですし、ジャズやソウル的な要素も決してそこの部分を深くつっこんで曲をつくっている感じではありません。
いい意味で言えば、そこらへんの音楽要素を実に上手く使って、新しい感触を残しつつ、ポップにまとめあげているという点では実に見事。そういう意味では実力を感じますし、一般的な高い評価も十分にわかる感じはします。
一方で悪い意味で言ってしまえば、全体的にどこか表面的でなめている感じが垣間見れる部分、一歩下がった「批評的視点」が個人的にはちょっとはまれないバンドでした。それがもちろんおもしろいと感じる方にはおもしろいのかもしれませんが、個人的にはあまり好きではない方向性ですし、それを上回るほどのおもしろみを他の部分から感じることは出来ませんでした。
ただポップで、確かに聴いていてそれなりに楽しくて、飽きることはないのは事実なんですよね。そういう意味で、上にもあげた相対性理論やらパスピエあたりが無条件で好き!という方にはかなりはまるかも。いろいろな意味で今年の音楽シーンの話題の中心になりそうなバンドだと思います。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
GOLDEN TIME/RIP SLYME
そのものズバリ「黄金期」と命名された2年9ヶ月ぶりとなるRIP SLYMEのニューアルバム。確かにロックやポップ、ラテンにファンク、トライバルな要素を混ぜた楽しいパーティーチューンは凝っていながらもとてもポップにまとめあげており、RIP SLYMEの実力を感じさせます。ただ、ここ最近、初期の作品のような一度聴けばすぐ耳に残るようなキラーチューンに恵まれていないような・・・。悪い意味で凝った音づくりを目指しすぎているのでは?
評価:★★★★
RIP SLYME 過去の作品
FUNFAIR
JOURNEY
GOOD TIMES
BAD TIMES 2000-2010 URA-BAN BEST
STAR
Road to The Independent King/AK-69
人気ラッパーAK-69のベスト盤。2枚組のアルバムですが、初回盤は彼の代表曲をノンストップでつなげた「DJ Mix盤」がついた3枚組となっています。
今、もっとも人気のあるラッパーの一人である彼。取り留めて個性的な音を出しているわけでもないので、なんでこれだけ人気があるんだろう、と若干不思議に思っているのですが、やはりギャングスターというスタイルをかもし出しながらも、至ってポップで聴きやすい楽曲という点が受けているのでしょうか。
初回盤を聴いたので全3枚組を聴きましたが、あまりにボリューム満点で、最後はさすがに飽きてきました・・・正直、似たような雰囲気の曲も多かったし。とはいえ、聴き終わった後、知らず知らずにAK-69の曲を口ずさんでいたりして、確かにそういう意味でのインパクトは強いよなぁ。そこが人気の秘密なんでしょうが。
評価:★★★
AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
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