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2014年1月21日 (火)

職人技

Title:Mariya's Songbook

自らもシンガーソングライターとして数多くのヒット曲を持ち、今でも絶大な支持を得ているシンガー、竹内まりや。昨年はデビュー35周年ということでしたが、その35年間、彼女は数多くのシンガーたちにも楽曲を提供してきました。今回リリースされたコンピレーションアルバムは、そんな彼女が他のシンガーたちに提供した楽曲を集めたアルバム。初回盤には自ら提供した楽曲のセルフカバーも収録されています。

提供した曲は河合奈保子の「けんかはやめて」や薬師丸ひろ子の「元気を出して」などのアイドルへの提供曲がほとんど。岡田有希子への提供曲も2曲収録されていて、もう、彼女の曲もリリースして大丈夫なんだ、とちょっとほっとしたり。牧瀬里穂「Mirace Love」とか、広末涼子「MajiでKoiする5秒前」なんかは懐かしくも、これって竹内まりやが提供した曲だったんだぁ、と驚いたりもしました。

他にも芦田愛菜へ提供した「みんなのハッピーバースディ」、鈴木雅之の「Guilty」などアイドルソング以外も。異色なところでは、おかまキャラのタレントKINYAへ提供した「涙のデイト」や森光子へ提供した「月夜のタンゴ」なども収録されていました。

さて、これら竹内まりやの提供曲をまとめて聴いていると、ひとつ感じることがありました。それは、どの曲もとても歌い手本人のイメージにあっている、ということでした。典型的なのが広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」で、モータウンビートの軽快で爽やかなビートに、いかにも清純な女子高校生の初心な恋愛という歌詞が広末涼子のイメージにピッタリ。

まあ、この「清純」なイメージはあくまでも男性にとっての理想の押し付けという批判はまぬがれない部分はありますが、少なくとも、あの当時の広末涼子の売り出し方にはピッタリきます。実際、竹内まりやのカバーは、ボーカリストとしての歌唱力、表現力はどちらが上か、なんて言うまでもありませんが、正直、セルフカバーの方が少々チグハグに感じてしまいました。

また、提供する曲によっても楽曲のタイプを多彩に使い分けています。基本的にアメリカンポップやブリティッシュビートの要素が強いのですが、「Guilty」ではソウルやブルース、「月夜のタンゴ」では文字通りタンゴ、またムーディーな歌謡曲や典型的なアイドルポップなどを使い分けていて、アルバムを通して聴いても、竹内まりやとしての色合いを強くは感じません。

でもそれって、それだけ彼女が職人としてプロの仕事に徹しているから、なのではないでしょうか。よく彼女の旦那様の山下達郎に対して「職人」という言葉を使われることが多いのですが、プロの仕事に徹するという意味においては、竹内まりやもまさしく「職人」と呼ぶのふさわしいプロのソングライターであることを実感させられるコンピでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

昨年5月に解散を発表し、9月に武道館でのラストライブを予定していたものの、ボーカル小山田壮平の怪我により解散ライブが延期となっているバンドandymori。現在、小山田のリハビリが続いているようですが、その「合間」を埋めるように、2枚のライブアルバムがリリースされました。

ANDYSHANTY/andymori

愛してやまない音楽を/andymori

各地のライブを集めたスタイルなのであまり臨場感は強くありません。また、両者の違いもあまりないように感じました。やっつけのようなジャケット写真も含めて、いかにも解散ライブまでの場つなぎ的なライブ盤といった感じです。

andymoriのライブは、その評判の良さを聞きます。確かにライブ音源を聴くと、元の曲よりもバンドサウンドが強くなっているような。ただ、正直大きな印象の違いはなく、元曲の良さからもちろん十分楽しめたライブ音源だったのですが、ライブならではの魅力というのは残念ながらそこまでは伝わってきませんでした。ひとつのライブ会場で通して聴いてみたかったかも。やはり彼らのライブの魅力は生じゃないとわからないのかなぁ・・・。

評価:
どちらも ★★★★

andymori 過去の作品
ファンファーレと熱狂
革命

宇宙の果てはこの目の前に

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コメント

ゆういち様
こんばんは

これは初回限定盤の特典がデカすぎる。
絶対初回じゃないとダメですね。

芦田愛菜にも提供していたとは・・・・・・
改めてすごい作曲家だと思いました。

「MajiでKoiする5秒前」のセルフカバーはチグハグですか。それはそれで聴いてみたい気がします。

投稿: GAOHEWGII | 2014年1月23日 (木) 20時52分

>GAOHEWGIIさん
「MajiでKoiする5秒前」のカバーとか、竹内まりやよりも提供した歌手に合っているような曲も多かったのですが、そういう点も含めて「職人」ですね。そういう点がわかる意味でも初回盤はお薦めだと思います。是非聴いてみてください。

投稿: ゆういち | 2014年1月28日 (火) 00時09分

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