注目の新人バンドのデビュー作
Title:森は生きている
Musician:森は生きている
今年、インディーズシーンでもっとも話題になったバンドのひとつ、森は生きている。個人的に彼らのことが気になったのは音楽それ自体よりもそのバンド名。ちょっと奇妙な彼らの名前はドラえもんの話のタイトルから取られたということ。「てんとうむしコミックス26巻」に収録されているこの話は、のび太が学校の裏山を心から愛している姿を見たドラえもんが、森と心を通わすためのひみつ道具「心の土」を出したことから話ははじまります。「本当の優しさとは」を問いかける、ドラえもんの傑作のひとつです。
・・・・というところから話をスタートさせて、上手くこのエピソードと彼らの曲をリンクさせればおもしろかったのですが、残念ながら上手くリンクさせられません(笑)。あえてリンクさせるとすれば、彼らの曲は、この「森は生きている」の舞台になった学校の裏山のよう、街の中の雑木林の中を流れる音楽のよう。奥深い森というよりも、爽やかな風が吹きぬけていくような雰囲気を感じる音楽になっています。
もうひとつ「雑木林」に例えるのならば、その雑多な音楽性も彼らの大きな要素のひとつ。フォーキーな楽曲が一本の主軸になっているのですが、「雨上がりの通り」はソフトロック、「回想電車」はブルース、「光の蠱惑」は最初はしんみり聴かせながら、後半にはファンタジックな雰囲気に、そして「断片」のエレピはソウル調と、楽曲によって様々な要素を聴かせてくれる彼らの音楽は、まさに様々な木々が重層になり空間を作り出す「雑木林」そのものと言えるでしょう。
様々な音楽からの要素をほどよく取り入れるスタンスは、ルーツ志向であり、かつ音楽的にクレバーなものを感じます。まだこれがデビュー作のインディーバンドながらも、いい意味で成熟したものを感じます。
他のミュージシャンであえて例えるならば、雰囲気的にはキセルに近いかも。また楽曲によってはくるりあたりに通じるものも感じます。ただ、メロディーに関しては聴けば聴くほど染み入るようなメロを書いてくるものの、良くも悪くも地味。インパクトという面では、最後の「日々の泡沫」を除くと決して強いものではありません。もっとも、それが彼らの場合必ずしもマイナス要素とはなっておらず、アレンジともピッタリマッチしていて、ほどよいバランスとなってはいるのですが。
2度3度と聴けば聴くほど徐々にはまっていく、そういうタイプのバンド。決して派手なバンドではないので、大ブレイクは難しいかもしれませんが、変に「通受け」なバンドでは終わらないでほしいなぁ、とは思うのですが・・・とりあえず、これからの彼らの活動からは目が離せなさそうです!
評価:★★★★★
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