素材の魅力を生かす
Title:One True Vine
Musician:Mavis Staples
「何も足さない 何も引かない」「素材の良さを生かす」・・・なんて表現するとまるでなにか料理の宣伝みたいですね。でも、このアルバムの特徴を表現するのにはピッタリではないでしょうか。それだけボーカリスト、Mavis Staplesの魅力を最大限に生かしたアルバムになっていました。
Mavis Staplesは、もともとゴスペル、ソウルグループのThe Staple Singersとして活躍していたシンガー。60年代から70年代にかけてスタックス・レコードで数多くのヒット曲をリリース。2000年に彼女の父親で中心メンバーのRoebuck "Pops" Staplesが亡くなるまで活動を続けていました。ちなみに彼女はローリング・ストーンズ誌が選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガーの56位にランクインするなど、その実力は高く評価されているシンガーです。
いかんせん日本ではゴスペル・シンガーというとパワフルな声量をこれでもかというほど響かせるイメージが強く、また、そういうシンガーがなぜか「上手い」と評価されたりしています。しかし、彼女の場合、アルバムを聴いてすぐ気がつくのですが、とても抑えた歌い方が特徴的。低い声で淡々と歌い上げています。
ところがとても抑えたボーカルながらもその歌声からは力強いパワーを感じさせます。また、そのボーカルはパッと聴き淡々としてそうな雰囲気ながらも、その向うには圧倒的な表現力と優しさも感じられます。聴けば聴くほどその味を感じられ、そしてその魅力にはまっていってしまうようなボーカリストでした。
今回のアルバムは前作に引き続きWILCOのJeff Tweedyがプロデュースを手がけているのですが、このプロデュースワークが見事。基本的にアコースティックなアレンジがメインながらも、装飾が少ないアレンジに仕上げています。そのため感じた特徴が冒頭の表現。まさに素材=彼女のボーカルの魅力を最大限生かしたアレンジに仕上げていました。
楽曲は基本的にソウルやゴスペルを主軸としながらも、ロック、ブルース、カントリー、フォークなどの要素を味付けとして入れています。ちなみにボーナストラックとしてThe Beatlesの「Revolution」のカバーも収録。ソウル、ゴスペルのシンガーながらも、ジャンルに拘らないスタイルを感じます。ただ、アルバム全体としては彼女のボーカルとアコースティックな味付けのため、一貫性を感じられます。ここらへんもJeff Tweedyのプロデュースワークの素晴らしさでしょう。
ソウル好きのみならず、ロックリスナーにも十分訴求力のある傑作アルバムだったと思います。最初は地味に感じるかもしれませんが、アルバムを聴き終わるころにはそのボーカルの魅力にしらずしらずはまってしまうようなアルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Amy Winehouse at the BBC/Amy Winehouse
2011年にわずか27歳で亡くなったイギリスの女性シンガー、Amy Winehouseが、イギリスBBCに残した音源をまとめたアルバム。新たな発見、みたいなものはありませんが、情感たっぷりに聴かせる彼女の歌声は何度聴いても実に魅力的。あらためて早すぎる彼女の死を残念に感じます。
評価:★★★★★
Amy Winehouse 過去の作品
Back To Black
LIONESS:HIDDEN TREASURES
What About Now/BON JOVI
アメリカンロックテイストのメロディアスな曲が並ぶBON JOVIのニューアルバム。うーん、要するに、良くも悪くもいつものBON JOVIらしい作品。ポップな作品が並び、まさにBON JOVIというイメージを体現化したようなアルバムに感じました。良くも悪くも特徴は薄いものの、BON JOVIファンなら無難に楽しめそう。
評価:★★★
BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
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コメント
ゆういち様
ステイプル・シンガーズのヴォーカルが
まだまだ健在で新作をリリースしていたとは
知りませんでした。
60年代とは異なる年輪を感じさせる歌声ですね。かつての作風とは異なり、確かに抑えた歌声と落ち着いた楽曲が多く、リラックスできるアルバムだと思いました。
ボン・ジョヴィは好きだったのですが、
このアルバムはやっぱり可もなく不可もないアルバムみたいですね。
投稿: GAOHEWGII | 2014年1月30日 (木) 20時19分
>GAOHEWGIIさん
そうですよ~ステイプル・シンガーズのボーカル、いまだに第一線で傑作をリリースし続けています。ご指摘の通り、リラックスした雰囲気の大人のアルバムといった感じで、お薦めの傑作です。
BON JOVIは・・・良くも悪くもといった感じでした・・・。
投稿: ゆういち | 2014年2月 5日 (水) 01時37分