15周年15曲入りの新作
Title:15
Musician:COIL
上のタイトル通り、昨年、デビュー15周年を迎えたCOILがリリースしたニューアルバムは、15曲入り。タイトルもそのまま「15」というところが、飾らなくもどこかユーモラスさのある彼ららしさを感じます。
そんな15周年を記念してリリースしたニューアルバムですが、基本的にだからといって新しいことをやっているわけではないのが彼ららしいところ。基本的にいつもの彼ら、というよりもいつも以上に原点に立ち返ったようなスタンスを感じます。
まず1曲目の「ボンテージ・スーパーカー」。グランジ風のギターロックに、女性をスーパーカーに見立てたユーモラスな歌詞はまさにCOILらしさがストレートに感じられる楽曲。もともとデビュー作候補として作成したもののボツにされたという作品だそうで、まさに「幻のデビュー曲」とも言える作品。ここでも紹介したことがあるベスト盤購入のおまけ「DEMO TRACKS」に収録されていましたが、事実上初披露となるこの「幻のデビュー曲」を1曲目にもってくるあたり、あらためて原点回帰のスタンスを感じます。
その後も、オルタナ系のギターロックを主軸としながらも、宅録らしい様々な音楽の要素を入れつつ、それがユーモラスを感じる楽曲が展開していきます。ディスコナンバーの「チョコレート・シティ」や、サイケな「コールド・ターキー」、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を楽曲に取り入れた「僕と彼女とモーツァルト」などなど、バリエーションの多さは演奏形式にとらわれない宅録ユニットならでは、といった感じでしょうか。
歌詞の面でも特にユニークだったのが「君とオンザラン」で、タイトルからしてそのままなのですが、ポール・マッカートニーの楽曲のタイトルなどが、歌詞にちりばめられている楽曲。元ネタ探しも楽しそう。
基本的に岡本定義をメインにしながらも、佐藤洋介とボーカルや作詞作曲を割り振りながらも、それぞれの個性を生かした作風も大きな魅力。そんなCOILの魅力をきちんと詰め込んだアルバムになっていました。
しかしCOILって、これだけ魅力的な曲を書きながら、なんでブレイクしないんだろうなぁ、ということをあらためて思います。確かに楽曲は決して「派手」ではありません。でも、しっかりと心に残るようなメロディーを書いてきますし、ユーモラスある歌詞も魅力的。まあ、確かにこの地味さは、自らが歌うというよりも「作家」タイプのミュージシャンなのかもしれませんが・・・。
評価:★★★★★
COIL 過去の作品
ギャルソン
Vitamin C
ソナチネ
ボサノバ
カフェラテ
カセットミュージック
マスターピース~COIL傑作集~
セカンド・ベスト~COIL佳作集~
DEMO TRACKS
ほかに聴いたアルバム
TRAD/ACO
大ヒットした「悦びに咲く花」のセルフカバーや、Jeff Buckleyの「Lover, You Should’ve Come Over」のカバーなどを含むニューアルバム。新曲も収録されていますが基本的にセルフカバーやカバー主体なので企画盤といった要素が強そう。ミディアムテンポのオルタナ系ギターロック主体の作風でしんみりと聴かせてくれます。セルフカバーで強く感じるのは、昔と比べて歌い方がいい意味でかなり落ち着いたなぁ、ということ。大人を感じさせるボーカルは、優しさと安定感を兼ね備えていました。
評価:★★★★
ACO 過去の作品
devil's hands
LUCK
WORK/清竜人
アルバム毎にそのスタイルを大きく変化させ、良くも悪くも話題を振りまくシンガーソングライター清竜人の最新アルバム。前作「KIYOSHI RYUJIN」はシンプルなポップアルバムながらも、その歌詞が強烈で、ライブ会場限定リリースとなりました。最新作は、様々に賑やかなサウンドを詰め込んだミュージカル風。そうい意味では「WORLD」に近い雰囲気かもしれません。ただ、メロディーはよく、彼の才能を感じるのですが、あまりにこってりとしたアレンジに、わずか30分程度の短さながらも、正直胸焼け気味に。基本的に作詞も作曲も才能のあるミュージシャンなだけに、変に凝らずにシンプルな楽曲を聴きたいと思ってしまうのですが。
評価:★★★
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