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2013年12月27日 (金)

音楽シーンへの憤りも感じる

Title:音楽はあるか
Musician:ウラニーノ

最近、どうもメロディーやアレンジにしろ、歌詞にしろ、複雑で少々奇抜なものが評価されることが多いように感じます。確かに、複雑で奇抜な楽曲はそれだけでインパクトがありますし、耳を惹くものがあります。ただ、本当に複雑で奇抜な楽曲が優れた曲と言えるのでしょうか?もちろん、凝ったアレンジや歌詞の曲にも優れた曲はたくさんあります。でもメロディーやアレンジ、歌詞がシンプルであるのに、人の心を惹く曲はもっと高い評価を受けていいのではないでしょうか。

これがフルアルバムとしては2枚目となる2人組バンド、ウラニーノ。彼らの楽曲はちょっとフォークの要素の入ったシンプルなギターロック。正直、決して目新しくはありません。また、歌詞も比較的身の回りの出来事を取り上げることが多く、そのテーマ性に奇抜さはありません。しかし、ボーカル山岸賢介の書く歌詞は、その物語性やその視点の位置が実に見事。彼の書く歌詞は、今の時代、もっともっと高く評価されてもいいように感じます。

いままでウラニーノの描く歌詞の世界は主に日常を基軸とするものでした。今回のアルバムもそんな日常性は健在。しかし、それ以上に今回のアルバムはテーマ性を持った歌詞が多く見受けられました。

まずひとつ大きなテーマとなっているのが、現在の音楽シーンに対する問題提起。タイトルナンバーでもある「音楽はあるか」は今の世の中、ヒット曲不在で日常の中、影が薄くなってしまったような音楽に対する強烈な問題提起を行っていますし、「ブランクミュージック」では

「ロックミュージックもダンスミュージックもJポップでもなく
ジェネレーションも タイアップも 握手券も越えて
響け ぼくらの ブランクミュージック Oh Yeah!」

(作詞 山岸賢介 「ブランクミュージック」より)

と、「タイアップ」や「握手券」など、音楽とは関係ない要素でヒットが決まるような音楽業界を皮肉り、その上での決意を歌っています。

さらに今回のアルバムで目立ったが社会派のナンバー。特にインパクトが大きかったのは「愛してる」

「テレビを見ながら愛してる云々と薄っぺらい曲を作っていました
テレビの中では死んだ目の兵隊さん 国境を越えて海を越えて遠い国へ」

(作詞 山岸賢介 「愛してる」より)

テレビを媒介にしながら、現実に起こっている両極端のシーンを描き、問題提起を投げかける社会派な曲に。また、「無題」では、現在のインターネット社会に対しての皮肉を投げかけた歌詞になっています。

アルバム全体としてテーマ性のある歌詞が多く、現在の音楽シーンへの彼らの強い憤りを感じるアルバムになっていました。ただ、かといって決して重いアルバムというわけではなく、ところどころにユーモアさも交えつつ、展開のおもしろさも楽しめる作品。「夏なんです」みたいな、露骨に湘南乃風をパロッた曲もあり(笑)、アルバムを通じて聴いて、テーマ性ばかりが前に出て、堅いアルバムという印象はおそらく起きないでしょう。

一方ではいままでの彼らのような日常を切り取った歌詞も健在。特に秀逸だったのが「500円のクリスマス」で、クリスマスのカップルの素朴な会話を切り取った歌詞は落ちも含めて見事。個人的に、これ、槇原敬之が歌っていても違和感ないような(笑)。

最初にも書いた通り、こういう歌詞を書くミュージシャンが、もっともっと評価されるべきだと思うんですけどね。ウラニーノがもっと売れて、高く評価されるようになれば、音楽シーンはおもしろくなると思うんだけどなぁ。今回のアルバムを聴いて、強く、そう感じました。

評価:★★★★★

ウラニーノ 過去の作品
ランドリーとワールド
World end Happy end

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アルバムレビュー(邦楽)2013年」カテゴリの記事

コメント

度々勧めさせて頂いている者です。
レビュー素敵です! 私も評価されればなぁ……と思います。

佐久間正英さんが亡くなりました。タイミングだったのかもしれませんが、プロデューサーとしての最後の大きな仕事がウラニーノのこのアルバムの作業だったそうです。
こんど出るコンピレーション・アルバムも、ウラニーノがラストナンバー(&新曲)になるようです。

投稿: ゆうろく | 2014年1月24日 (金) 14時43分

>ゆうろくさん
佐久間正英がガンを告白したブログの記事でもウラニーノのことに言及していましたね。佐久間正英のコンピ盤の最後もウラニーノなんですか。それだけ、佐久間正英にとっても思いいれの深いミュージシャンだったんですね・・・。
確かに、このアルバム、それもとてもわかる感じのする傑作でした。お薦めしてくださって、本当にありがとうございます。これからも期待したいミュージシャンです!

投稿: ゆういち | 2014年1月28日 (火) 00時11分

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