次は待望のソロアルバム?
ここ数年、徐々にソロとしての活動を再開し、昨年にはついに東京事変を解散した椎名林檎。このたび、ライブアルバムと、彼女が他のミュージシャンとコラボレートした楽曲を集めたコラボベストをリリースしました。
Title:蜜月抄
Musician:椎名林檎
まずこちらはライブ盤。どこかの公演を収録、という形ではなく、過去のライブ音源より選曲したライブベスト的な内容になっています。それも「歌舞伎町の女王」「丸の内サディスティック」のような代表曲だけではなく、様々なタイプの曲が収録されており、初心者に対するベスト盤代わりというよりもファン向けの内容になっています。
ただライブ音源といってもオリジナルから大きくアレンジが変わったような曲はなく。あえていえばよりバンドサウンドを押し出してヘヴィーさが増したような曲がチラホラ。まあ、あくまでもバンドのライブではなく椎名林檎のライブなので下手にバックが自己主張すべきではないのでしょう。そのため、このアルバムで一番魅力的だったのが椎名林檎のボーカル、それ自体。凛としていながら色っぽいボーカルが曲の中で実に映えていました。もともとのソロでの曲と彼女のボーカルの相性がよいという理由もあるのでしょうが・・・椎名林檎のボーカルの魅力がありありとわかるライブ盤でした。
一方、録音状況についてはライブであることを強調するためか、ライブ会場での反響音もそのまま収録したような音源に。そのため、曲によっては若干音が悪いんじゃないか、と思うような曲もありました。ただその反面、ライブ会場にいるような臨場感は強く感じられるような内容に。ライブの雰囲気がそのまま伝わってくるようなアルバムになっていました。
しかし、今回のライブ盤であらためて椎名林檎のソロの曲を聴いたのですが、正直、東京事変の曲も悪くなかったのですが、ソロの曲がより魅力的だったなぁ、と感じました。なによりも椎名林檎らしさが前に出ていますし、「茎」みたいに少々暴走気味の実験曲もユニークだし。確かに「加爾基 精液 栗ノ花」でちょっと暴走気味だった椎名林檎としての活動にブレーキをかける意味でもバンド活動は必要だったと思うのですが、東京事変の時に感じた物足りなさを、完全に解消するようなライブ音源でした。
評価:★★★★★
Title:浮き名
Musician:椎名林檎
こちらは他のミュージシャンとのコラボ曲を集めた企画盤。ただ、椎名林檎が主導となった曲だけではなく、MO'SOME TONEBENDERの「ロッキンルーラ」などコーラスやピアノでちょこっと参加しただけの曲も多く、椎名林檎は好きだけど椎名林檎以外のロックやポップスには興味ない、みたいな方には不満の残る内容だと思います。
もっとも彼女がコラボに参加しているミュージシャンは基本的に椎名林檎と音楽性に相通じるような部分があったり、彼女が尊敬しているミュージシャンばかりなので「椎名林檎以外は興味ないや」とほっぽり出すのも残念にも思います。これを機に、いままで知らなかったようなミュージシャンの曲にも興味を持ってほしいのですが・・・。
また、「蜜月抄」同様、やはり椎名林檎のボーカリストとしての魅力はこのアルバムでも存分に感じます。実際、メインでボーカルを取っている曲はもちろんですがバックコーラスにでも彼女の声が入ればすぐに「あ、林檎だ」とわかって、曲によっては楽曲の空気感すら変わるのが見事。椎名林檎の実力は、このアルバムでも遺憾なく発揮されています。
ただ、このアルバムの目玉であり新曲である、中田ヤスタカとのコラボ「熱愛発覚中」についてはちょっと期待はずれだったかなぁ。いまひとつ中田ヤスタカが椎名林檎に躊躇しているような印象もあり、中田ヤスタカの個性も椎名林檎の個性も十分に発揮されていない不十分な内容だったように思います。
椎名林檎がメインじゃない曲もあるために賛否はありそうですが、ただ、そんな曲でも基本的に椎名林檎に通じる部分がある曲だけに、是非ともこのアルバムはチェックしてほしいです。それで、より椎名林檎というミュージシャンの理解が深まると思うんだけどなぁ。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
BEAUTIFUL DEFORMITY/the GazettE
前作「DIVISION」は平凡なメロで、耽美なボーカルが鼻につくおもしろみのない作品でしたが、今回のアルバムはバンドのへヴィネスさが前面に押し出され、グッと面白みの増した作品。ハードコアに通じるバンドサウンドとポップなメロは、ONE OK ROCKみたいな最近ヒットシーンを賑わしているヘヴィーロックバンドに通じるところも。曲によってはやはり耽美なボーカルが鼻につくような部分もありマイナス要素なのですが、ヘヴィーロックが好きならヴィジュアル系というイメージ抜きにチェックしてみては?
評価:★★★★
the GazettE 過去の作品
TRACES BEST OF 2005-2009
DIM
TOXIC
DIVISION
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