早すぎた名盤
Title:Inspiration Information/Wings Of Love
Musician:Shuggie Otis
「ゴッドファーザー・オブ・リズム&ブルース」と呼ばれ、リズム&ブルースはもとより黒人音楽の歴史に大きな足跡を残したジョニー・オーティス。今回紹介するアルバムのミュージシャンはその息子、シュギー・オーティス。かつて「天才ギタリスト」と呼ばれ、15歳の時にはかのアル・クーパーのアルバムに参加。さらにはミック・テイラーの後釜としてローリング・ストーンズへの参加を誘われるものの、ソロとしての活動を優先したいために断ったという伝説も残るミュージシャンだったりします。
しかし70年代後半、自身の体調の悪化もありシーンから姿を消します。その後も知る人ぞ知る的なミュージシャンとして絶大な支持を得て、プリンスやレニー・クラビッツなど彼をリスペクトするミュージシャンは未だに多いとか。そんな彼らがなんと昨年、活動を再開。今年には来日公演も実施するなど大きな話題となりました。
そんな彼が1974年にリリースしたのがアルバム「Inspiration Information」。今回、そのアルバムに、未発表曲集である「Wings Of Love」とつけて2枚組アルバムとして再発となりました。
まず「Inspiration Information」。彼を取り巻く評判に違わない、隠れた名盤ともいうべき作品でした。
楽曲の雰囲気としてはかなりシンプルで静か。メロウな雰囲気のサウンドに、ゆっくりと奏でられるギターのリズム。しかし、そのギターはしっかりとファンキーなリズムを刻んでいて、独特なグルーヴィーサウンドを楽曲に与えています。
楽曲に流れるのは一見、サラリとした雰囲気の空気感。しかし、しっかりと聴き出すと徐々に耳にねっとりと絡みつくようなギターの音に気がつきます。そのギターが実に魅力的。70年代前半の作品としては全く古さを感じず、むしろそのサウンドのシンプルさから、今風にすら感じられるかも。そういう意味でも、早すぎたアルバムと言えるかもしれません。
ただ、楽曲は全体的にインパクトが薄く、ある意味かなり地味。特に中盤から後半にかけて並んでいるインストの楽曲が並んでいて、その地味さに拍車がかかっています(笑)。まあ、そういう意味でも名盤は名盤だけど一方では隠れていた理由もわかっちゃうアルバム(笑)。レア・グルーヴ、そんな表現がまさにピッタリ来ます。
しかし、未発表音源集の「Wings Of Love」は「Inspiration Information」と大きく異なりちょっとビックリするのではないでしょうか。絶妙なサウンドとリズムで、聴けば聴くほどはまりそうな「Inspiration Information」と比べて、70年代後半以降の未発表曲を集めた「Wings Of Love」は一言で言うと大味。例えれば、「Inspiration Information」は味を極めた深い出汁の味が楽しめる料理だとすると、「Wings Of Love」はベチャっとしたマヨネーズで味付けしたような料理といった感じでしょうか。個人的にマヨネーズは好きですが(^^;;
楽曲のタイプもロックやフュージョンなどの要素がグッと増え、ソウルやファンクの要素は薄め。80年代テイストのサウンドも感じられ、良くも悪くも時代い寄り添いすぎで、ベタな雰囲気。この2枚のアルバムを聴かせて、どちらがより最近のアルバムか、と聴かれれば「Inspiration Information」を選びそう・・・そんな印象すら受けたアルバムでした。
そういうこともあり、正直、未発表音源集はちょっと蛇足だったかも、とも思ったアルバム。もっとも「Inspiration Information」は名盤なだけに、これを聴くだけでも十分お薦めできるアルバムなのですが・・・。ここ最近、活動を再開したシュギー。2013年の現在、久々のニューアルバム発売なるか?また発売されたらどんな音になるのか??
評価:★★★★
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